高い労働コストがデフレリスクを排除
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-de2b.html なぜヨーロッパはデフレに落ち込まないのか。その理由は・・・
>その最大の理由は、賃金上昇率の高さにある。スペインでは賃金上昇率が生産性
の伸びを上回っており、労働コストが高止まりしている。スペインのみならず、
相対的に硬直的な労働市場にある欧州では、労働コストが高くデフレリスクを極めて
低いものにしている。ちょっとしたサービスでも、人の手がかかると「付加価値」
として、価格が吊り上げられる。一方、物価下落、賃金抑制が長年続く日本の状況は、
あたかも消耗戦を演じているかのように見えてしまう。
米国は日本のようなデフレにはならない
http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/201008/2010-8-3.html 本当の原因は賃金の下落デフレが日本特有の現象である以上、原因も日本特有のものがあるはずだ。
それはグラフで示しているように、日本でのみ賃金が傾向的に下がり続けていることだ。賃金が下がれば、
勤労者は購買力を失う。そのため企業は価格を下げて販売量を維持しようとする。価格が下がれば
生産性の向上がない限りコストを下げるため賃金のカットが避けられない。こうしてデフレと賃金下落
のスパイラルが続いているのが日本の現状だ。米国でも欧州でも賃金の下落は観察されておらず、
特に米国の賃金上昇率はわが国と比較するとかなり高い。なぜ賃金の動きが重要かと言えば、
CPIに占めるサービスの割合は日本で5割、米国や欧州は6割にもなるからだ。言い換えれば先進国の
CPIはモノよりもサービス価格の方に大きく影響を受けるのだ。
708 :
707:2012/04/27(金) 21:54:51.70
では、なぜ日本においてだけ賃金は下がり続けたのか。これは多くの理由が考えられるが、第一には、
日本では賃金よりも雇用機会の確保を重要視し、雇用を維持するためなら賃金は多少下がってもやむをえない、
という考え方が支配的だからである。その裏には中途採用による再就職が難しく、あっても賃金面で不利になる、
という問題があるからであろう。米国ではキャリア中途での転職が比較的簡単で、賃金を下げると優秀な従業員
を失うなどのリスクがある。またヨーロッパでは組合が企業単位ではなく職能別で組織率も高く、全国一律の
賃金体系が維持されており、個別企業の事情で賃金をカットすることは難しい。
第二に、賃金の安い非正規労働者の採用が大幅に増えたことが挙げられる。既にその割合は全体の3分の1
にまで達している。非正規労働は外国にもあるが、日本に特徴的なことは、彼らの賃金が正規の半分程度と、
大きな格差があることである。他の先進国では同一労働・同一賃金が日本より守られており、このような格差
がないから、正規労働者を非正規に置き換えることでコスト削減するというインセンテイブはない。
このようなわが国特有の要因により賃金が下がりデフレになっているのだから、米国が日本と同様のデフレ
になるという可能性は無い。
このように考えてくると、わが国が長期のデフレを克服するためには、他の先進国と同様に賃金の緩やかな
上昇を安定的に維持していくことが肝要であることがわかってくる。わが国の場合、2002年から2007年の
戦後最長の景気回復の期間中も賃金は上昇せず、生産性向上の効果は主として企業利潤として溜め込まれた。
特に中小企業の多い流通、サービス業では、非効率な企業が低賃金に支えられて市場に残り、
わが国産業全体の生産性向上と産業構造の革新を遅らせる元凶になっている。目下、日本経済は急激な
円高で企業経営に余裕は無いが、景気回復が本格化した時点では賃金の上昇と勤労者の購買力の拡充
にもより配慮することが、デフレ対策としても必要になってこよう。そのためにも非正規労働者の賃金格差の縮小、
最低賃金の引き上げなどに真剣に取り組むべきだ。
「賃金デフレ」にどう対処すべきか
http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=15008 4.新興工業国の台頭に伴う成長力低下・デフレ圧力に対し、先進各国がいかに対応してきたかを分析すると、
「理念型」として以下の三つの適応パターンがみられてきた。
a.「ドイツ型」(価格維持・数量調整型)---賃金決定における制度要因を頑なに守り、世界的なデフレ圧力が
国内物価や賃金に波及するのを水際で遮断。ただし、その副作用として産業構造の転換が遅れ、高失業という
高い代償を甘受しなければならなくなった。賃金・物価といった「価格」体系を維持する一方、失業・空洞化
という「数量」で調整する「価格維持・数量調整型」の対応方式であり、主にEU 諸国に多くみられるパターンである。
b.「日本型」(価格調整・数量維持型)---経済学上の常識とされてきた「名目賃金の下方硬直性」を打破することで
あくまでコスト削減で対応し、その一方で産業構造転換を先送り。低成長が長期化している割には失業率が
低めにとどまる一方、「賃金デフレ」という戦後先進諸国の間ではみられなかった形での皺寄せが生じている。
ドイツ型とは対照的に、雇用・生産量という「数量」を維持する一方、賃金・物価といった「価格」面で調整する
「価格調整・数量維持型」の対応方式である。
c.「アメリカ型」(価格・数量転換型)---賃金決定を市場原理に任せる一方、サービス産業化を進めるというやり方。
ドイツの「価格維持・数量調整型」、日本の「価格調整・数量維持型」は、ともに産業構造転換のスピードが遅い
ことで共通しているが、「アメリカ型」は産業構造のダイナミックな転換を特徴としており、「価格・数量転換型」
ともいうべきパターンである。ただし、産業転換スピードが速くなるため、一時的に失業率の急激な高まりを
受け入れる必要があった点を認識しておく必要がある。なお、こうしたパターンはイギリスやオランダにもみられた。
710 :
709:2012/04/27(金) 21:56:02.92
5.以上のように、日本の対応の特徴は他に比類のない名目賃金のフレキシビリティーにある。アジア諸国の
キャッチ・アップの進展に伴う製造基盤の縮小傾向がみられるなかで賃金下落圧力が強い状況下、バブル崩壊後
の膨大な産業調整圧力を緩和・吸収するに十分なだけ名目賃金が柔軟であったからこそ、わが国のみで
「賃金デフレ」が「現実化」していると説明することが出来よう。しかし、そうした他に比類のない名目賃金の
フレキシビリティーは、失業率の上昇テンポをマイルドにしたとしても、事業再構築よりもコスト削減を優先する
企業行動を招きやすく、今後もそのパターンが継続されることになれば、長期間にわたって経済活動の停滞と
失業率の上昇傾向が続く恐れがある。
「すぐそこにあるデフレ脱却」 (六光星) 大磯小磯 日経2012.4.27
100年ほど前、日の没することのない植民地帝国を築いた英国が23年に及ぶ長期デフレに直面した。
海運の発達によるグローバル化、輸入物価の下落、産業空洞化。状況は今の日本に酷似していた。
英国はなぜデフレに陥り、どう脱出したのか。植民地生産が物価を押し下げたのは言うまでもないが、
そうした要因はデフレの前後にもあった。なぜその23年だったのか。
実は通貨供給量が深く関係していたと内閣府の研究論文が指摘する。デフレが始まった1873年、
英国にならい北欧諸国が金本位制を採用、英国の金が流出した。金本位制下では通貨供給量は政府の
金保有量で決まる。金流出に伴う通貨供給減で意図せざる金融引き締めが起き、デフレの引き金を引いた。
23年後、新技術が英国を救った。新しい金抽出法が開発され、南アフリカの金産出量が急増。
英政府の金保有・通貨供給量が増えたことで、英国はデフレから脱却した。
(中略)
「失われた20年」の最大原因は円高だ。この間、日本人のドル建て賃金は2倍になった。
国際競争上、日本企業は円建て賃金を下げざるを得なかった。賃金デフレである。
国内総生産(GDP)もドル換算で2倍に膨らんだ。もし円建てでも先進国並みに成長していれば、
ドル建てGDPが米国に迫る不自然なことになっていた。円高が円建ての成長を阻んだともいえる。
裏返せば、円高が止まれば他の先進国並の成長と賃金上昇の余地が出てくる。そして今、
日本は円安転換のとば口にいる。あと一押しなのだ。
・・・緩和の副作用は当然あろうが、今の状況下で将来のインフレやバブルを過度に案じるのは、
アクセルを踏む前にスピード違反を怖がるようなものだ。
日本は折しもバブル崩壊から23年。歴史に学ぶならデフレから抜け出してもおかしくない頃合いだ。