>>169 月刊WiLL:2010年12月号
総力大特集140ページ 恫喝中国に屈するな!
■中西輝政
日本は「大義の旗」を掲げよ
ttp://web-wac.co.jp/magazine/will/201012w 戦火を交えない戦争
いま能天気に中国に進出している日本企業の経営者に大切な警鐘を鳴らす意味で、あのピーター・
ドラッカーの遺した警告の言葉を紹介しておこう。
97年、ドラッカーが『フォーリンアフェアーズ』に寄稿した「グローバル経済と主権国家」という論文は、
今の日本の経済界にとってとりわけ大切なことを教えている。そこには、「グローバルエコノミーは行き
過ぎると必ず終わる。国家というものは、経済よりも崇高な存在であることを必ず経済に思い知らせよう
とする時が来る」と書かれていた。そして、次のような彼自身のエピソードを振り返っている。
ドラッカーの父は、オーストリア・ウィーンにあるイタリアの自動車会社フィアットの工場長を務めていた。
第一次世界大戦の勃発でイタリアが連合国軍、オーストリアはドイツ側で参戦することになると、ある
日、突然、イタリアから部品などを取り寄せて運営していたオーストラリアのフィアット工場は製造物資が
入ってこなくなり、たちまちシャットダウンしてしまった。
しかし数日後、オーストリア政府から「フィアット工場は今後、オーストリア軍の乗用車、戦車の生産に
取り組め」という政府命令がきた。やがて、ものすごい勢いで毎月何百台という軍用車を生産し、何十台
もの戦車が工場から戦場へ向かった。
だがその戦車は、イタリア戦線で「ホカレットの戦い」という大激戦に投入され、イタリア兵を何万人も
戦死させたのである。 (続く)
>>199 (続き)
このエピソードを踏まえ、ドラッカーは「グローバルエコノミーに身を任すと、やがて必ず引き裂かれる
ような目に遭う事態を招く」とし、あれだけグローバル経済を唱えてきた当のドラッカー自身が、最後に
「グローバル経済はいつか終わる」と語ったのである。日本の経済人は、まさに熟読すべきであろう。
これからも中国は、中国に進出し、あるいは中国と取引のある日本企業に対して、日中間に政治的
問題が発生するたびに、あの手この手で「嫌がらせ」を加えてくるに違いない。
なぜなら、尖閣事件のような直接的な行動だけでなく、経済取引も、不動産も、留学生ですら、中国
共産党にとっては全てが国家戦略に基づいた、「戦火を交えない戦争」の武器と見なされているから
である。