■日本政府は借金で財政破綻する?■国債1019兆円
…クー氏は、かつて私が勤務していた大学の客員教授もやっており、私はクー氏の講義を何回も聴いたことがあります。
その中で、とくに印象が深かったエピソードを紹介いたします。2002年1月17日に行われたクー氏の講義で、
彼はいつものように切れ味鋭く、マネタリストやサプライサイダーの俗論を攻撃いたしました。
しかし、財政政策の必要性を訴える一方で、「財政をこの分野に出せ」という具体策は遂に語られませんでした。
そこで、質疑応答の時間、ある学生が次のような趣旨の質問をしました。
「いまの状況において財政政策がいかに重要であるかという点に関してはたいへん良く分かりました。
しかし、財政を出す場合、どの分野に重点的に出せば良いのでしょうか? やはり、財政支援によって
伸ばすべき産業分野と、逆に淘汰されても仕方ない分野とあると思うのです…」
これに対するクー氏の回答は概ね次のようなものでした。
「平時の議論ならそれでよいのですが、総需要不足の現状下ではそうじゃないんです。
例えば、瀬戸大橋を建設したことにより、港湾労働者が8000人も失業いたしました。役に立つものを造ると
逆に失業者を増やし、かえって総需要を減衰させてしまうということも起こるのです。需要不足の状況においては、
総供給を増やすことなく、需要だけ増やすことが必要となります。そのためには、穴を掘ってそれをまた埋め戻すような、
できるだけ役に立たない事業を行う必要が出てくるのです。具体的に何を造れば良いのかということなのですが、
例えば戦艦大和を造ってみるのは如何でしょう…」。
私はこの発言を聞いたとき、「あー、こりゃ駄目だ。こんなことを言っているから、
ケインジアンの評判がガタ落ちになるのだ」と絶望的な気分になりました。
ちなみにクー氏が「戦艦大和を造れ」といったのは、軍事主義的観点からではありません。
あくまで「役に立たないものを造るべき」ことの象徴として「大和」を挙げているのです。
(大艦巨砲が実戦で威力を発揮したのはせいぜい日露戦争までで、空母の登場によって
まったく意味を失ったのは周知のことです。彼が本当に軍事ケインズ主義者であったなら、
「戦艦大和」ではなく「イージス艦を造れ」と主張したことでしょう)。
さて、実際に戦艦大和を造ったとすれば、第一に潤うのは、慢性的に設備過剰の状態にある(過剰供給力を抱えすぎている)
鉄鋼業界と造船業界でしょう。鉄鋼業界と造船業界にとっては非常に大きな需要が発生することになり、設備稼働率は上昇します。
一方で、戦艦大和という「インフラ」を整備しても、それが新たな財の供給力を生むことはほとんどなさそうです。
497 :
金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2010/01/26(火) 11:04:00
素人にほんとの情報が流れるのは、円相場や金利が動いたあと。
いつもこのパターン。
円相場動きない=何も変わってない。
本物の情報を知る機関投資家や大金持ちの動いた痕跡から予想すべき。
>>496 「総供給を増やさずに総需要だけ増加させ」、需給ギャップを埋めることができるというわけです。
現在の不況の原因は、総供給>総需要、ということなのですから、
クー氏の戦略では、供給をなるべく増やさずに、需要だけを喚起する必要があります。
…クー氏の考えでは、民間企業のバランスシートが改善され、再び設備投資意欲が活発化するまで、
ひたすら政府は公共事業を通して民間の余剰生産物を吸収し、民間の借金を減らす努力をせねばなりません。
一方で、新しい供給物を増やすような分野には投資すべきではないということなのですから、
結局「政府支出によって衰退産業を救え」ということになります。
クー氏の主張の落とし穴は、「借金企業のバランスシートがきれいになった暁には、
再び設備投資意欲が湧いてくる」という命題を暗黙のうちに前提としていることにあります。
そのよう保証はどこにもないでしょう。財政政策によって民間設備投資を活発させるという波及効果を意図するのであれば、
借金企業のバランスシートを改善するためにお金を使うよりも、全くバランスシートがきれいな新しい産業を育成することに
お金を使った方が、はるかに効果的でしょう。
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