童話で経済を語ろう。

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1金持ち名無しさん、貧乏名無しさん
童話形式で経済についてお勉強するスレ。
2sage:2010/01/11(月) 11:22:35
「 アリとキリギリス」


ある世界にアリさん達の国とキリギリスさん達の国がありました。
 アリさん達は真面目で、朝から夜遅くまで農場や工場で働いています。。
 仕事が大好きでいつも良いものを安く作る努力をしています。
 キリギリスさん達は仕事は昼過ぎには切り上げて、後の時間はみんなで歌を唄い、酒を飲んで
 わいわい騒ぐのが大好きでした。

 あるとき、アリさん国に新しい大統領が就任しました。
 この新しい大統領はアリさん国とキリギリスさん国を比較して、「キリギリスは遊んでばかり
 いるから我がアリがもっと頑張ったら差を拡げることとができ、もっと儲かるのではないか」
 と思いました。そして大統領就任の時に「キリギリスのように遊んでいては駄目だ。
 将来の成功のためには今、頑張るんだ。競争して経済を強くするんだ。」と演説しました。

 それを聞いたアリさん国の国民は拍手かっさい。
 「そうだ。そうだ。遊んでいるキリギリスなど置いてけぼりにしてやれ。」
 アリさん達はこれまでにもまして仕事に励みました。休みも返上、勤務時間が終わっても
 タイムカードを押してからまた働く。残業代などいらないという徹底ぶりでした。
 いままでよりも安くモノをつくる!他の農場や工場との競争が進みました。
3金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2010/01/11(月) 11:25:09
 さて、キリギリスの国では困ったことが起きました。アリさんの国から安い農産物や製品が
 たくさん入ってきてキリギリスさん達が作っているモノが売れなくなってきたのです。
 また、アリさん達が休みをとって遊ぼうとしないのでキリギリスさん達の国でお金を使わなく
 なってしまったのです。

 これまでは週末になるとアリさん達が家族でキリギリスさんの国に遊びにきました。
 キリギリスの歌手のコンサートに行き、その帰りに食事をしてお買い物をしていたのでした。
 
 歌のうまいキリギリスは人気歌手がたくさんいました。また、脚が長くてスタイルのいい
 キリギリスのモデルやタレントはアリさんの若者にも人気があり、そのファッションを真似して
 アリさん達も服を買っていました。また、人気タレントはアリさん達の会社のCMにも出て
 イメージアップにつながり、商品もよく売れたのでした。
 
 さらに、芸術のセンスがあるキリギリスさん達には腕のよいコックさんもたくさんいました。
 コツコツ品質改善している上に値段が安いアリさん国の農産物はキリギリスさん国で喜ばれ
 そうした食材を使ってコックさん達は腕を振るい、遊びに来たアリさん達もおいしいと言って
 喜んで帰国していたのです。
4金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2010/01/11(月) 11:27:03
 見るに見かねたキリギリスの国の総理大臣はアリの国の大統領に会って、輸出を抑えて
 くれるように頼みました。しかし、アリの大統領は剣もほろろに断りました。

 「アリの国の製品が売れるのは安くて品質がいいから当たり前だ。キリギリスは遊んで
  ばかりいるじゃないか。努力が足りないから国際競争に負けるんだ。         」
 
 アリの大統領はこう言い放って、キリギリスの総理の申し出を突っぱねました。
 キリギリスの総理は抗議を続けたかったのですが、アリさん国は貿易で儲けた金で
 軍隊アリを増員していました。また、アリさん国は国益を重視する、との意見がマスコミ
 を占めており、アリさんの国民もそれを支持していました。特に若者を中心に国に対して
 忠誠を誓うことが当然の風潮となっていたのです。
 やむなくキリギリスの総理は国に戻りました。


 キリギリスの国の産業もそれなりに頑張ろうとしたのですが、もともとキリギリスは
 農作業や工場の仕事が得意ではありません。それにアリ達の働きぶりは尋常ではなく
 働きすぎで死んだりすることも珍しくなく、アリの家族が一緒の時間も少なかったのです。
 アリ達は自分たちが優位に立っているのを知り、さらにそれを加速しようとしました。
 同じアリ同士の農場や工場でも競争が激しくなっていたのです。
 また、大農場主や大工場主はアリの大統領にお金を渡して自分たちが有利なように
 法律を変えてもらうように仕向けていました。
 
 アリ達は競争激化のあまり給料も下がり余暇の時間もありません。また、競争に負けた
 アリ達は失業することになりました。その一方で収入の上がったアリ達もいました。
 アリの大統領はそうしたアリを成功者、とたたえて減税をしたりして優遇しました。
 社会的地位の高いアリ達から支持されているのでアリの大統領は向かうところ敵なしでした
5金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2010/01/11(月) 11:32:13
 さて、一方キリギリスさんの国ではアリさんの観光客も来なくなりました。
 今までと違い、キリギリスの歌手のCDやDVDも買ってもらえません。
 アリさん達がモノを買ってくれないのです。その一方でアリさんの国から輸入品がたくさん
 入ってきました。安くて大量に入ってくる製品の洪水に飲み込まれてキリギリスさんの国の 
 農場や工場は潰れてしまいました。

 キリギリスさん達は収入を得ることができなくなりました。段々と食べ物を買うお金も
 なくなってしまいました。そして冬がやってきました。
 お金もなくなり、食べるものも底をついてしまったキリギリスさん達は死んでいきました。
 こうしてキリギリスの国は滅んでしまいました。

 その知らせを聞いたアリさん達は喜びました。
「ざまあみろ。遊んでばかりいるからだ。これからは我々アリの天下だ。」
 アリさん達は完全に勝利したように見えました。
 しかし、段々とモノが売れなくなってきたのです。キリギリスさん達がモノを買えなくなって
 作っても在庫になってきていたのです。今までは余った食料はキリギリスさん達が買っていき
 その材料でお酒を造って販売していたので無駄はなかったのですがキリギリスの国が滅んで
 モノを輸出することができなくなっていたのです。かなりの食料が腐ってしまいました。
 また工業製品もだぶついて倉庫が一杯になっています。
 あとはアリの国内だけで売るしかありません。
 
 
6金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2010/01/11(月) 11:34:10
 アリ達は必死で売り込みを続けました。他の農場や工場より安くすれば売れる、と考えたアリは
 値段をドンドン下げて販売しました。その分利益が減りますが、従業員の給料を下げたり
 あるいは年寄りのアリをクビにしたりもしました。また、農具や機械をつくる会社には価格を
 下げることを要求し、できなければ取引を打ち切りました。
 一つの会社がそれをして、それが次々と連鎖していきました。

 大農場主や大工場主は失業者が増えているのを見て、安く従業員を使おうとしました。
 アリの大統領に働きかけて正社員をクビにしやすくしたり、派遣会社を別に作ってそこから
 派遣社員として採用し、給料から紹介料を天引きしました。また、社員ではなくアルバイト 
 として採用し、社会保険や退職金を出さないようにしました。
 
 また経済学者はシンクタンクにたんまり研究費をもらっていたので
 そうした富裕層の行動を「構造改革」といって提灯をつけるような論文ばかり
 書いていたのです。
7金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2010/01/11(月) 11:35:45
必死の努力にもかかわらず、売り上げは上がりません。皆が必死で働いています。
 もはや誰も遊ぼうとはしていません。しかし誰もが生活が苦しくなりモノを買わなくなって
 いたのです。アリさん達の国に移住したキリギリスさんもいました。しかし仕事はありません。
 すでにアリさん達でも失業率が跳ね上がっていました。失業者は「負け組」と呼ばれて
 「自己責任だぞ」と罵声を浴びせられる状況でした。そして言われる側の不満の矛先は
 さらに立場の弱い移住してきたキリギリスさん達に向けられて排斥運動の対象となっていたのです。
 とてもキリギリスさん達が生活できる環境ではなかったのです。
 まもなく移住してきたキリギリスさん達も自殺したり飢え死にしてしまいました。

 働きづめでストレスの溜まっているアリ達の中には犯罪に走ったりするものもいました。
 また、職場ではセクハラやパワハラ、いじめなどがはびこっています。
 給与がすべて成果主義で決められていて、成績が悪いと簡単に首になります。
 ノルマが達成できず自腹を切って商品を購入していたアリもいましたが焼け石に水でした。
8金持ち名無しさん、貧乏名無しさん
 困ったアリ達は大統領に相談しようとしました。
 いつも自信に満ちたあの大統領なら何かいい知恵があるに違いない。
 みんな期待して大統領のお屋敷にいきました。

 ところがお屋敷はもぬけの殻でした。屋敷の倉の中もからっぽです。国の財産も備蓄してあった
 食料もごっそり消えて、大統領は行方をくらませていたのです。

 アリ達はパニックになりました。食料が手に入らないのでお札をバケツに一杯にしても
 誰も売ってくれません。そして来年のための種もみまで食べつくしてしまいました。
 冬の間に多くのアリが死んでいきました。食料を増産しようにも消費が落ち込んでいて
 長期間に渡って農場や工場は設備投資を抑えていたのです。
 古くなった設備はほとんど使い物になりませんでした。又、経験豊富なアリ達がリストラ
 に遭ってしまったので技術力も失われてしまったのでした。

 そして春になりました。例年なら種を植えるのですが、もう種もみも食べつくしています。
 あとは他のアリとの奪い合いしかありません。こうして暴動がおき、内戦となりました。
 そして夏が過ぎ秋が来る頃、アリたちは全滅しました。
 アリさん達の国も滅んでしまいました。

                                    終わり

 この話は全くのフィクションです。あくまでネタです。