■日本政府は借金で財政破綻する?■国債1004兆円

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高橋洋一(T:90年代以降の日本の経済停滞をどう解釈するか、というところが問題です。
マクロ経済政策が失敗したという解釈と、仕方がなかったという解釈。
仕方がなかったという人が多いので、なかなか政策が変わっていかない。
というのも、日銀も財務省も、失敗したとなれば責任問題になると思っているから。

勝間和代(K:でも責任問題ではないですよね? 間違ったのならば改めればいい。

T:私は過去に役所の評価制度を作る仕事をしてましたが、みんな反対してました。
なんであれ役所は評価されるのをいやがりますからね。

K:役所の終身雇用に問題があると思うのですが。

T:身内の論理になってしまいがち。外部からの評価をいやがります。
さらに、自分たちの政策を後になって評価することもしません。
よくある役所の弊害なんです(笑)。

K:……。でも被害を受けるのは役所の人も含めて国民ですよね。

T:役人はあまり困らないですね。終身雇用で年功序列ですから(笑)。

K:財政危機だから景気対策はできない、という話を良く聞きますが。

T:日本政府の負債はネットで300兆円。
財務省は1,000兆円とか言っているが、資産が700兆円ある。
さらに国には徴税権、つまり税金をあつめる権利があって、これは確実な収入だから、
債務超過といっても一般企業と違ってすぐに破産にはならない。
借金をいくら増やしてもいいとは言わないが、今すぐ増税という段階ではまるでないんですね。

K:プライマリーバランスが悪いから増税! みたいな議論が横行しています。

T:プライマリーバランスは指標としては財政収支より優れている。
プライマリーバランスは企業で言えば営業収支(営業利益)。
プライマリーバランスはちょっと景気が良くなれば簡単に改善するものです。
景気の話をしないで増税の話をするのがおかしい。

K:増税して景気の足を引っ張るよりも景気を良くしたほうがいい。
それも財政じゃなくて金融で、ということですね。

T:そうです。
金融というとすぐにゼロ金利だからもう無理っていうんですけど、
金融の世界では実質金利(物価の影響を差し引いた金利)でみます。
アメリカはもうマイナス金利です。
日本は他の国にくらべて引き締めぎみなので円高になってます。
円高は景気の足を引っ張ります。

T:上げ潮で一番重要なのは最下層の所得を上げること。
ですが、それがうまく行かなかったのは事実です。
平均的にはちょっと上がったんですが、最下層の所得は上がりませんでした。
政策としては成功しませんでした。

K:何がいけなかったんでしょう? 最低賃金が低すぎる?

T:名目成長率が上がらなかったことです。
名目成長率が上がると、最下層の賃金は結構上がります。

K:なるほど。
彼らには資産も資本もないので、額面通りの賃金が一番重要だから、
名目成長率の上昇が直接効くわけですね。

T:名目成長率はこの10年間くらい、0%から2%の間。
これはいくら何でも低すぎる。この状態では最低賃金は上げられない。
今、政府の目標として、名目成長率2%となっているが、3年間達成していない。これじゃ経済政策は落第です。
他の国は4%くらいです。それくらいだと最下層の賃金はけっこう上がります。
最下層が上がると、富裕層の所得が増えても、社会的な問題は起きにくいようです。
要するに、最下層の賃金が下がるとか上がらない、というのが一番悪い結果です。
なので、マイルドインフレーション、物価の上昇が1%か2%、
そういう状態にしておけば、名目成長率は4%前後になります。
そうなれば様々な貧困対策がやりやすくなりますよ。

K:そんな簡単な道があるのになぜ日銀はそうしないのでしょう?

T:引締めに生き甲斐を見出している人たちですからね。
白川総裁の発言を聞いていると、デフレでもよい、と考えているのがよくわかります。