936 :
金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:
武田龍夫『福祉国家の闘い』中公新書
■高福祉社会の残酷な現実■
一世紀を生きてきた老人に大学生が尋ねた。「お爺さんの一生で何がもっとも重要な変化でした?」と。彼は二度の世界大戦か原子力発電か、あるいはテレビ、携帯電話、パソコンなどの情報革命か、それとも宇宙衛星かなどの回答を予測した。
しかし老人の回答は彼の予想もしないものだった。
「それはね──家族の崩壊だよ」。(同書、27頁)
この一言に高福祉社会の問題が集約されている。老人の介護はいかなる時代でも家族の中で行われてきた。
しかし今は女性たちが外で働くようになり、家の中の仕事はすべて「公的機関」が引き受けている。すなわち乳幼児の世話をする託児所、学校での無料給食、老人の面倒をみる老人ホーム。
この男女完全平等と女性の社会進出、高福祉による公正で平等な社会を目指した実験は、現実には何をもたらしたか。
まずたいへんなコストがかかることが判明した。最初から分かる人には分かっていたことだが、公的機関の建物を建て、維持する費用、そして人件費をまかなうためには、高額の税金を必要とする。
(中略)