遅くなってしまったが12月の着工統計を分析してみる
まずは住宅着工戸数だが、初の人向けにまず予備知識
建築基準法6条で建物は1〜4号と類別される。特に4号建築とそれ以外で分けて考えられることが多い
4号建築:木造2階建て住宅等の簡易な建物
1〜3号建築:それを超える建物
ここで4号建築は確認申請手続きに構造計算書を付けなくて良いなど申請が非常に簡略になっている
このほかに3号建築で大手住宅メーカーが建てる型式認定のプレファブ住宅も4号建築並みに手続きが簡略化されている
また、今回の改正で新設された2重審査を行う適合判定(適判)は4号以外の一定規模以上の建物に適用される
分量的に4号建築≒木造なので木造とそれ以外の住宅戸数の推移を比較してみる
総戸数 木造 鉄骨 鉄筋コンクリート 鉄骨鉄筋コンクリート ()内は前年同月比%
7月 81,714 (-23.4) 37,609 (-23.0) 14,960 (-20.6) 28,012 (-22.2) 1,015 (-64.2)
8月 63,076 (-43.3) 32,901 (-34.4) 11,244 (-38.0) 18,052 (-54.6) 784 (-72.8)
9月 63,018 (-44.0) 37,917 (-23.2) 11,912 (-37.8) 12,301 (-69.9) 770 (-72.9)
10月 76,920 (-35.0) 45,930 (. -5.5) 15,030 (-29.1) 15,248 (-64.9) 600 (-88.0)
11月 84,252 (-27.0) 47,686 (. -4.5) 18,241 (-17.4) 17,538 (-55.2) 604 (-84.8)
12月 87,214 (-19.2) 47,863 ( 1.7) 18,818 (. -6.5) 19,659 (-49.3) 523 (-71.0)
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107,104 46,342 18,770 38,932 2,877 ←H18年度月平均
木造はが初めてマイナスから脱出したがほんの僅かに増えただけで反動増は無し。鉄骨は一応微減程度まで回復、
鉄筋コンクリートは相変わらず半減状態、鉄骨鉄筋コンクリートは未だ-71.0%で絶対戸数は先月より減少している
あぁ、トリップ忘れていた。 疲れているなorz
また、鉄骨のプレファブ分を差し引いた結果は
鉄骨全体 うちプレファブ 残
7月 14,960 (-20.6) 8,707 (-24.3) 6,253 (-14.7)
8月 11,244 (-38.0) 7,295 (-33.4) 3,949 (-44.9)
9月 11,912 (-37.8) 9,076 (-18.8) 2,836 (-64.5)
10月 15,030 (-29.1) 11,140 (. -7.5) 3,890 (-57.6)
11月 18,241 (-17.4) 12,439 (. -4.0) 5,802 (-36.4)
12月 18,818 (. -6.5) 11,695 (. -4.0) 7,123 (-10.3)
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プレファブ以外も含めて鉄骨は回復してきている。鉄骨住宅なら建設コスト上昇を忍んで適判に行かない設計が
可能なので、そちらにシフトしていると思われる。
ここで気になるのが1点。4号建築並みに申請が簡易で混乱から脱出しているはずのプレファブ住宅が前年同月比微減
のままである。国の弁では改正の混乱は一時的なもので需要は旺盛なので正常化すれば反動増があるとの事だが、
10月以降正常化したはずの木造、プレファブとも一定の戸数で足踏み状態のままである。
次に非住居を含めた着工床面積を見てみる
全体.. | 住居 非住居. | 木造 木造以外 単位:千u()内は前年同月比%
7月 12,426 (-22.7) | 7,325 (-23.7) 5,101 (-21.2) | 4,334 (-24.2) 8,093 (-21.9)
8月. 9,816 (-42.1) | 5,969 (-41.8) 3,847 (-42.5) | 3,924 (-33.0) 5,892 (-46.9)
9月. 9,162 (-44.7) | 6,192 (-39.0) 2,970 (-53.7) | 4,416 (-22.3) 4,746 (-56.4)
10月 11,035 (-31.5) | 7,198 (-29.6) 3,837 (-34.8) | 5,013 (. -7.8) 6,022 (-43.6)
11月 12,816 (-20.3) | 7,377 (-26.7) 5,439 (. -9.6) | 5,006 (. -7.6) 7,811 (-26.7)
12月 13,505 (-13.8) | 7,518 (-20.4) 5,987 (. -3.9) | 4,852 (. -4.0) 8,652 (-18.5)
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15,635 9,625 6,009 . 5,329 10,306 ←H18年度月平均
ここで工場と店舗の推移を見てみる
[ 工 場 ] [店舗]
棟数 面積(千u) 1棟あたりの面積(u) / 棟数 面積(千u) 1棟あたりの面積(u)
7月 1,033 901 (-34.5%) 881 948 881 (. -9.9) 930
8月 626 646 (-57.1%) 1,032 597 404 (-46.3) 676
9月 570 399 (-74.9%) 700 662 425 (-52.7) 642
10月 708 1,098 (. -5.6%) 1,551 777 381 (-47.7) 491
11月 839 906 (-26.9%) 1,080 920 1,986 (+82.1) 2,159
12月 863 997 (-24.6%) 1,155 820 2,132 (+73.8) 2,600
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1,237 1,311 1059 1,044 940 900 ←H18年度月平均
工場は10月以降のS社の大規模工場の着工分がまだ続いていると推測される
また、店舗は11月以上に一棟あたりの面積も極端に大きくなっている。これは平成19年11月30日に施工された都市計画法
の改正により郊外の大型ショッピングモールの建設が困難になることに伴う駆け込み着工でがまだ続いているためと推測される
http://www.kentsu.co.jp/kanagawa/news/p03113.html 都計法の改正は11月末だが11月末開発許可→12月着工の建物が結構あるようである。
それにしても駆け込みでショッピングモールをいったい何軒建てているんだよorz
建築着工についてはこうした特殊な状況から一時的に着工床面積が増えている状態なので、現状の着工統計をもって
順調に回復しているとは言い難い状態である。
前後の状況から非住居非木造の着工床面積は2,000千u程度差し引いたの下記の状態程度が実状であろう
全体.. | 住居 非住居. | 木造 木造以外 単位:千u()内は前年同月比%
12月 11,505 (-26.6) | 7,518 (-20.4) 3,987 (-36.0) | 4,852 (. -4.0) 6,652 (-37.4)
総合すると、木造及び鉄骨建物は何とか前年同月比微減程度まで回復はしたが、
一方で鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリートの建物はほとんど状況が改善されていないのがわかる。
また、改正直後の大幅減を取り戻す(?)ための反動増は未だ現れる気配が無い。
住宅以外はS社工場と都計法改正の駆け込み後がどうなるかが焦点といえる。
個人的な見解だが、住宅以外は3割減が実状では無いかと推測する。
参考資料
建築着工統計調査(平成19年12月分)
http://www.mlit.go.jp/toukeijouhou/chojou/kencha.htm
確認件数の統計について分析
国土交通省は報道発表資料で確認件数が増加していることを繰り返し強調しているが、
確認件数合計 1〜3号建築 うち適判 4号建築 ()内は昨年同月比、
7月 36,552 (-39.4%) 9,924 (-49.6%) 1 (-99.9%) 26,628 (-34.5%) 適判のみ月当たり需要(5,800件)比
8月 46,359 (-24.5%). 11,261 (-43.8%). 52 (-99.1%) 35,098 (-15.2%)
9月 42,414 (-27.5%). 10,576 (-45.2%) 208 (-96.4%) 31,838 (-18.9%)
10月 53,218 (-11.1%). 14,987 (-25.2%) 873 (-84.9%) 38,231 (. -4.0%)
11月 51,545 (-. 9.6%). 15,616 (-17.7%) 1,430 (-75.3%) 35,929 (. -5.5%)
12月 49,320 (-11.5%). 15,986 (-17.6%) 1,686 (-70.9%) 33,334 (. -8.2%)
先ず報道でもあったとおり、確認件数も前年同月比も再び減少に転じている。
特に正常化したはずの4号建築が減少に転じており、1〜3号についても絶対数は若干増えたものの、
ほとんどは適判物件の分が上乗せされただけの状況である。
改正の最大の問題点である適判(2重チェック)については、未だ本来の1/4よりましにはなったものの
早くも回復スピードが鈍ってきている
ここで申請件数と降り件数を比較すると以下の様になる。
適判件数 (単位:件)
申請 降り 申請中
6月 1 0 1
7月. 66 1 . 66
8月 390 . 52 404
9月 830 208 1,026
10月 1,728 873 1,881
11月 1,833 1,430 2,284
12月 1,853 1,686 2,451
降り件数は2ヶ月前の申請件数にも達しておらず、相変わらず審査中の案件は増えていく一方でである
また、申請件数が11月→12月と完全に足踏み状態になってしまっている。
また、現在確認申請は「事前相談」で実質的な審査を行い、審査が終わってから正式に「受理」という
運用がなされているため、実際の申請待ちの案件はこれより遙かに多いのは前回述べたとおりである。
国土交通省は順調に回復していることを強調しているが、確認申請・降り件数の推移を見る限り、
再び減少に転じる危険を孕んでおり、予断を許さない状況である。
1月の着工統計が12月より減少する事になれば、平成19年度住宅着工100万戸割れが不可避となるであろう。
参考資料
最近の建築確認件数等の状況について
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/07/070131_2_.html