減少する「過去からの補助金」
最初にも述べたように今日すでに日本は効率の良い社会ではなくなっている。
それでもまだそのことが目立たない理由の一つは、東京の企業と住民に膨大な
「過去からの補助金」が提供されているからである。
例えば今日、東京の水道料金は全国でも最も安い部類に入る。
近年、東京の水不足は深刻で、毎年のように「水ガメ」が心配されているが、
これを解消する為には福島県や恣意が他県まで水源を求めなければならず、
猛烈な費用がかかる。そんな東京が水源に近い市町村よりも水道料金が安いのは
明治、大正時代から造って来た簿価の安い施設や水利権があるからだ。
いわばインフレ利得か、施設整備の早かった東京に集中的に与えられているのである。
こうした現象を動態財政学では「過去からの補助金」と呼ぶ。
同じような現象は鉄道にも高速道路にも電話や電力にもある。
例えば現在価格で土地買収を行って新橋から虎ノ門まで高速道路を建設すれば
たった1.2キロで一台二千円の料金を取らなければ引き合わないと言う。
それなのに首都高速全線が六百円で利用できるのは
最も費用の掛かる都心部分が
昭和三十九年に(今から見れば)「タダ同然」の土地代で作られているからだ。
東京の地下鉄が京都や名古屋より割安なのも戦前の銀座線や終戦直後に出来た
丸の内線の資本費が極めて低いおかげである。
ある経済学者試算ではこうした「過去からの補助金」が東京では年間7兆円にもなるよいう。
東京のマスコミは「東京の鉄道や高速道路の収益で地方路線の赤字が埋められている」というが
東京の鉄道や高速道路を黒字にしているのは「過去からの補助金」なのだ。
それだけ東京人は都市費用を免れているわけで、東京に事業所が集まる原因にもなり、
土地価格の高騰を促す原因にもなっている。
この事の善悪はともかく東京の規模が拡大し活動が盛んになれば、
こうした「過去からの補助金」の比重が低下する事は避けられない。水道も地下鉄も高速道路も
新線ができるごとに料金があがる。施設を更新するだけでも
過去の安価なものにくらべて資本費は上昇する。
東京は膨張するたびにますます費用のかかる都市になってゆく。
そしてこのことからも東京一極集中の続く限り、
日本全体をますます非効率な国になってしまう。
すでに少子化などで問題になってきています。
優秀な頭脳(理系)も今の日本にあきれて海外に逃亡しました。
153 :
『救国12の提言』救国委員会12人委員会:2006/03/05(日) 17:16:29
過去からの補助金とその背景 救国委員会世話人 堺屋太一
土地価格や建設費が継続的に上昇した場合、早い時点で建設された施設は
建設費が安価であり後からできたものほど高価になる。
公営企業の場合、独立採算のコスト主義のため
早期に都市施設を整備した地域は低料金で運営出来るようになる。
いわゆる「過去からの補助金」である。
たとえば水道料金をみても地方には一立方メートル3000円以上のところが多いが、
東京23区内は920円である。(最低基本料金)
水源のもっとも遠い東京区部の料金が安いのは戦前からの水利権や施設が多いからだ。
同じ事は交通機関、電力、電話などにも見られる。
東京の場合、その総額は膨大なものであり、人口と産業の東京集中の一因と言われる。