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金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:
奥田さんが高速道路を走るとき、行く手を阻むものは空気の壁だけだ。
ノロノロ走るクルマが前にいると、
車間距離をぐっと詰め、パッシングの連続で押しのける。
走るのは当然、右端の追い越し車線。アクセルは全開が基本だ。
愛車はトヨタ自動車のアリスト。排気量4000ccのV型8気筒エンジンは260馬力。
世界でも有数の超高速走行が可能なセダンが休日の足だ。
「羊の皮をかぶった狼」が奥田さんの野生を呼び覚ますという。
「スピードは麻薬。高速で走っていると、
脳の中で気持ちを高ぶらせ、快感に導く物質が分泌されるようだ」。
自社のテストコースを時速200km以上で走る機会がよくある奥田さんにとって、
普通の路上での走行は苦痛に感じることすらあるという。
高速で常に右端の車線を走るのはこのためだ。
普段の通勤の足は役員専用の黒塗りの車。
スピードに魅せられた奥田さんは
「トロトロ走る役員車に乗っているとイライラする」と言う。
思わず運転者を怒鳴ってしまうこともある。
イライラは今回の日米自動車交渉でも同じだったようだ。
交渉は政府間の話し合いなので、メーカーの思惑通りいかなかった面もある。
憂さを晴らしに、愛車のアクセルを踏み込む機会が増えたようだ
「愛車のアクセル全開で憂さ晴らし」
日経ビジネス1995年7月17日号より