124 :
金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:
169: 晩秋の名無しさん 2002/11/26(Tue) 02:02
>>161 経営に失敗した経営者には刑罰を与えなければならないのか?
それは違うだろう。刑罰を与えるのは刑法に違反したときだ。これは警察・検察の仕事だろう。
失敗した経営者は、社会的制裁を受けるし、場合によっては金銭的制裁を受けることになる。
で、デフレの場合は制裁を受けないでいい経営者まで制裁を受けてしまうってことが問題。
てぃなみに、緩やかなインフレの方が市場の調整原理が働きやすいというの竹森センセがうまく
説明しているところだから、うpしておく↓
竹森俊平著 『経済論戦は甦る』 p.185表3-3に要約されています
『創造的破壊シナリオの誤算』をうpしておきます。
『創造的破壊のシナリオの誤算』
1.「破壊」の誤算
(1)「無益な破壊」が不況によって起こる。
(2)不況時の「シュムペーター的破壊」は増加するが、その後は逆に減少する。
# 「シュムペーター的破壊」↓
設備の老朽化による既存企業の「退出」。社会的に有益でなくなった生産主体が退出
して、新規参
入企業に道をあけわたす経済にとって有益な現象。
# 「無益な破壊」↓
通常であればまだ退出の年限に達していない既存企業が、不況の影響で損失を
被り、しかもそれを
カバーするだけの外部資金が得られなくなって退出する場合。社会的にまだ有
用な企業が退出する
望ましくないケース。
2.「創造」の誤算
(1)不況により企業家の純資産が低下し、新規参入のハードルが高くなる。
(2)不況からの回復期には、破壊に急速なブレーキがかかるので、創造の増加に
も歯止めがかかる。
125 :
金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:04/01/21 22:25
170: 晩秋の名無しさん 2002/11/26(Tue) 02:03
>>169追加
ついでにp.181の文章もうpしておきます(
>>80の詳しい解説です)。
『不況は旧体制を温存させる』
99年に書かれた論文では、カバレロとハマーは、経済理論的な検討に先立って、
まず実証分析により事実の定型化を試みている。この実証分析では、72年から
93年までのアメリカ製造業における「雇用破壊」と「雇用創造」のデータが分析されている。
「雇用破壊」とは既存企業による解雇者数を指し、「雇用創造」とは新規参入企業により
創出された雇用者数を指している。このデータをもとにパラメーターを計測し、その定常
状態を想定し、その定常状態に対してショックが与えられたときに、経済がどのように反
応するかが分析できる。ショックが「需要のマイナス・シフト」という性格のものであれば、
それは経済に対する「不況」の影響をシュミレートすることになる。
このような分析は、インパルス反応分析とよばれているが、これによって次のような
結果が得られる。まず、「不況」が発生した時点で、「雇用破壊」は大幅に増加する。
不況を受けて、既存の企業による解雇が短期に集中して行われるためだ。
一方、「雇用創造」も減少するが、その減少の程度は「雇用破壊」ほどではない。
だが、ともかく新規参入も減少する。
126 :
金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:04/01/21 22:27
172: 晩秋の名無しさん 2002/11/26(Tue) 02:04
さらに追加
面白いのは、その次に起こることである。まず、「雇用創造」だが、これは「不況」が
終わってからしばらく経過してそれがなかった場合の定常状態の水準に戻る。
しかし、いつまで経っても、決して定常状態の水準を越えることはない。したがって、
新規参入によって創出された雇用が完全雇用に占める比率は、「不況」がなかった
場合と比べると低い値にとどまる。つまり「創造的破壊」の考え方による予想とは逆に、
「不況」によって新ビジネスの勃興には歯止めがかかるのである。
一方、「雇用破壊」にはされに興味深い変化が起こる。先程見たように「不況」が発生
した時点で、「雇用破壊」は集中して起こるがしかしその後、時間が経過すると今度は
「不況」が起こらなかった場合と比べて、「雇用破壊」は、はるかに低水準でしか起こらなくなる。
このため「不況」からの回復は、新規参入のラッシュによってではなくて、既存企業による
解雇が「不況」が起こらなかった場合にくらべて大幅に減少することによって起こる。
「雇用創造」の変化とあわせて考えればわかるように、「不況」によって、「既存企業による雇用」の
「新規参入企業による雇用」に対する比率が上昇する。ここでも「創造的破壊」の論者が描く
シナリオは裏切られている。「破壊」の結果起こるのは、「創造」ではなくて、「旧態依然」とした体制の継続なのである。
127 :
金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:04/01/21 22:32
316: 走る名無しさん 2003/04/06(Sun) 13:06
不況は新たな事業を開始するには不利な状況である。
「不況には、老朽化して採算の取れなくなった既存企業の退出をうながし、
新規参入企業に安価な生産資源を供給するという好ましい側面がある」という説は
現実には誤りである。不況には良いことが何一つ存在しない。
この点については竹森俊平著『経済論戦は甦る』のp.181の解説が良い。
(ただしこの本の段階での竹森氏の不良債権問題に関する認識は誤りである。
この本では竹森氏はまだ「ふんぎり」がつかなかったようだが、その後竹森氏は
リフレ派寄りに旗幟鮮明になっている。)
竹森氏曰く「不況は旧体制を温存させる」
現在の日本では旧体制の温存への反感が増大しているようだが、その根本的な原因は
不況にあるのかもしれない。「景気が回復すると改革する気がなくなる」という考え方は
旧体制を温存したい勢力にとって都合が良い。
竹森氏が紹介しているカバレロとハマーの論文のアブストラクトは
http://papers.nber.org/papers/w4768 http://papers.nber.org/papers/w7355 http://papers.nber.org/papers/w7849 で読める。
これはアメリカに関する研究だが、日本でも開業率が減少しているので、
不況は「創造的破壊」ではなく「創造なき破壊」を引き起こすだけであるという
カバレロとハマーの結論が成立していると考えられる。