いやー。議論に花が咲いているようですね。これからご紹介する
コラムは、小泉が首相になってすぐ教授が書いたコラムです。約2年ほど
前ですね。読み返したら面白かったのでアップしておきます。
腐敗の一掃
〜「日本経済復活は痛みを伴う」という議論は経済学的には何の意味も無い〜
「世界第二位の経済大国に新しい首相が誕生し、日本中が期待で盛り上
がっているようだ。小泉氏はこれまでの日本の政治家のイメージとは
かけ離れている。彼は日本のFDルーズベルトになれるかもしれない。
しかし、悲しいかな、彼の政策を聞いていると、どちらかといえば日
本のフーバー大統領になるほうが近いような気がする。
小泉氏は政策の詳細はまだ明らかにしていないが、彼のこれまでの発
言を聞いていると、血と汗と涙(またはそれの経済バージョン)のよ
うな言葉ばかり出てくる。首相は、「会社は倒産し、失業率も上がる」
ことを認めた、「失業を恐れていれば、日本経済の復活は二度と無い」
と宣言した。」
「大変勇気のある発言だが、これを聞いているとフーバー政権の財務
長官だったアンドリュー・メロンの壊滅的な発言、「労働者を解雇せ
よ、株は売り払え、農民は破産させ、土地も売り払え。そうやってシ
ステムに介在する腐敗物を取り除けば、物価は然るべきところに落ち
着き、企業家は残骸の後始末をするだろう...」、を思い出す。
彼の無神経さは横に置いておいて、彼の発言のどこに問題があったの
だろう?彼は需要と供給を理解していなかったのである。
一国の生産性が限界に達したときは、資本のような、限りある資源を
効率的に使い、最も高いリターンが期待できるところに資本を注ぎ込
む事が重要となってくる。リターンがほとんど期待できない公共事業
に資金が注ぎ込まれる日本の郵貯はとんでもなく非効率的である。将
来の収益がほとんど期待できない企業の債務返済を先延ばしにして、
誰も欲しがらない物の生産に資金を注ぎ込むのも同様である。という
わけで、もし日本の生産性が限界に達しているのであれば、郵貯を民
営化して、銀行の不良債権を強制的に処理させるという小泉氏の政策
はドンピシャである。」
「しかし、日本が抱える問題は生産性の限界ではなく、慢性的な需要
不足なのだ。日本経済の生産性をすべて吸い込むほどの消費意欲が消
費者にも企業にも無いのだ。そのような状態において、効率を上げよ
うとする試みには良い影響よりも悪影響のほうが強い。財政赤字を減
らして資本を開放し、収益力の無い企業を倒産させるというと響きは
良いが、資本を開放してもお金に行くところが無ければ、待っている
のは高成長どころか更なる経済不振である。
専門家の中には、不振こそ日本が必要としているものだと言う者もい
る。現行のシステムを一掃すれば、将来的な需要を創出する新しい環
境が生まれると。なぜこういう結論に達するのだろう?不況が続いて
いる最中、消費者や企業がお金を使い出すと彼等が考える理由は何な
のだろう?銀行には現金があふれていて、優良な貸出し先が無い時、
不良債権の処理を強制して、どんな違いがあるというのだろう?」
「しかし、小泉氏が正しいことが一つある。このままでは日本はだめ
になるという点である。増える一方の政府債務は問題だし、銀行問題
解決に国が手を貸せば、政府債務は更に増加するだろう。何かやらな
ければならないのだが、小泉氏のやろうとしていることは、日本を
大恐慌に追いやる可能性がある。
実は、日本が抱える問題に対する解決策はあり、この解決策は、日本
の行く末を真剣に心配する経済学者の間では常識となりつつある。
この政策は通常では考えられない金融拡大を必要とする。日銀がド
ル、ユーロ、長期国債を買い、円安と軽度のインフレを受け入れるの
だ。この政策の説明を私がしてもよいのだが、どうせ聞いてもらえな
いからやってもいっしょだろう。」
「現時点の悲劇は、小泉氏がいかに革新的でオープン・マインドで
あっても、他の当事者(主に日銀と米国財務省)アンドリュー・メロ
ンの失敗から学ぶ意欲が無ければ、すべては失敗することであるが、
彼らにその姿勢は見られない。日銀の総裁は、日本が経済不振から抜
け出せないでいるのは改革が適切でないからだ、と言い張る。つま
り、腐敗の一掃が不充分ということだ。また、詳しいことは知らない
が、オニール長官は円を弱くしすぎるなと警告したそうである。
かわいそうな日本。日本は過去から何も学ぼうとせず、失敗を繰り
返させる連中の犠牲者である。」