写研について(パート3)

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2じゃけん
まず、初めに前スレッドで写研についてボロクソに書き過ぎたことを
お詫びします(元はといえば、写研に関する情報がネット上に皆無に
等しかったことが最大の原因なのですが)。しかし、昨年秋に出た
WindowsDTP PRESS vol.8(技術評論社、噂によるとこの号で廃刊らしい)
に「DTPの組版を考える」という特集があって、これを読んで素人DTPの
私にも写研の全体像がようやくつかめました。同誌の「写研のSAPCOLに
ついて語ろう!」という座談会(Station-Sの岡田隆志氏・デジタル
コンテンツ制作の太等信行(ふとら・のぶゆき)氏・ラインラボの
前田年昭氏、司会はライターの山木大志氏)が特に役に立ちました。
要するに、写研システムで最も優れている点が以前のスレッドで若干
触れられていたSAPCOLという言語であり、しかし写研はそのことを全く
自覚していないという悲惨な現実がある、ということで、この座談会は
非常に示唆に富むものでした。SAPCOLのバッチ処理について、前スレで
シャケニストがもっと強調してくれれば、写研システムの重要性が
私にも理解しやすかったのですが。
●Station-S
http://www.station-s.co.jp/
●ライン・ラボ
http://www.linelabo.com/
上記座談会の後半に、写研の今後について非常に参考になる部分が
あったので、『WindowsDTP PRESS』vol.8を読んでいない方のために、
こちらに引用しておきます。これを読むと、なぜ写研が現在のような
状態に陥ってしまったのかがよく分かります。(同誌P.59〜61)
3『WindowsDTP PRESS』vol.8より:2001/02/23(金) 14:44
前田●そう。97、98年が一つの曲がり角というか、写研としても歴史の要求と
してのオープン化への選択があり得ました。それは、それほど高いハードルで
はなかったのです。ところが、写研はその道を選びませんでした。その結果、
98年は非常につらい年になりました。ぼくは飯田橋で商売をしていますが、98
年の前半は手動写植機が町中に捨てられていたんです。さすがに文字盤は外し
てありましたが。後半になると、SAZANNA-SP313とかが捨ててある。正規のル
ートで解体して引き取りをするとお金がかかるからです。自分でハンマーでぶ
ち壊して、小さい固まりにして、産業廃棄物として粗大ゴミにして、清掃局に
持っていってもらうわけです。それが近所の飯田橋ハイタウンで毎月出ました。
あれがつらくて。98年というのは、そういう年でした。
山木●そういう人たちが写研システムのユーザーだったのですね。
前田●以前から指摘されていたことですが、手動写植は個人業者が支えていた
わけです。個人業者は写研を支え、写研によって支えられていました。そうい
う人たちがSAIVERTを買うときに一大決心をしたのです。一千万円台ですから。
なかには、住宅金融公庫から借り入れをして、家を一軒建てる覚悟でSAIVERT
を買った人もいました。そういう人たちが、機械をハンマーで打ち壊して、清
掃局に電話をする。その身を切る思いを写研は知らなければなりません。少な
くとも、SAPCOLを後世に伝えて、DTPにちゃんと残して欲しいです。ところが、
写研はそうはしないから余計に嫌われるんです。
4つづき:2001/02/23(金) 14:45
太等●非常に残念です。写研がかたくなにオープンシステムヘの移行をしない
のは……。ゴナとかナールとか、優れた書体が使えないわけです。たとえば、
それをホームページで使おうと思ったら、いちいちスキャニングしなければな
りません。アウトラインが取れませんから。他のフォントメーカーは、アウト
ラインが取れますから簡単にホームベージで利用できます。それに、自社のホ
ームページを持っていないですよね、写研ともあろうものが。書体のことはさ
ておいても、一般のコンピュータと文字コードが違うので、写研オリジナルの
文書は使いようがないわけですよ。写研のクローズドシステムの弊害です。
山木●写研システムは、今後どのようになっていくべきなのでしょう?
前田●SAPCOLは基本的な日本語を組むということ、どのように文字が配置され
るべきかについて、非常によく考えられているし、最小の命令でできます。
CPUが今のようにリッチな環境でなくて、8ビットでありながらきわめて高速な、
効率のよい自動組版ができました。これは誇っていいことだったと思います。
組版結果がWYSIWYGで確認できない、出力するまで悲惨な結果であっても分か
らない、という点で負担が大きかったのも事実ですが。できたときはうれしい
けれど、誰もほめてはくれません。ダメだったら怒られます。出力結果をその
場で確認したい、とWYSIWYGが出てきたのも非常によくわかります。
5つづき:2001/02/23(金) 14:45
DTPで画面通りに出力できることが当たり前になると、今度は逆に、プログラ
ム的な考え方が必要になります。生産性や品質の均質化という意味で。人間の
作業には失敗もあるし、忘れることもある。数字を縦中横にするなんてことを
延々と半日以上するのは、人間がするべき作業ではありません。SAPCOLがあれ
ば、そんなバカなことはしなくてもよいわけです。
山木●SAPCOLはDTPに引き継がれるべきであると……。
前田●そうです。写研が特定の分野で生き残るというような消極的な見方では
なく、SAPCOLをDTPが引き継げばいいのです。どこのメーカーでも、ソフトで
もかまいません。そうすれば、バッチ処理とWYSIWYGのそれぞれ良いところが
出会うものができるのではないでしょうか。「数式とマンガで写研が生き残る」
と、いい意味で言っている人も反発を持っていっている人にも、ぼくはそうじ
ゃなくて、SAPCOLこそ誰かが引き継いでいかなければならない、巨大な漢字文
化圏の遺産であるといいたいです。
太等・岡田●遺産、ですか(笑)。
6つづき:2001/02/23(金) 14:45
前田●いや、ぼくはたたえて言っているんです。
岡田●写研システムでやっていくには、写研に全部投資しないといけないくら
いの規模が求められるようになっています。小さいところは写研システムでや
っていけなくなった、ということもあるんじゃないですか?
前田●個人でやっていて、SAZANNA-SPまでは写研に付いてきた業者さんのとこ
ろに、SAMPRASのカタログを持ってやってくる営業マンって、感覚がズレてし
まっていると思います。
岡田●今、写研システムをメインに運用している企業は、規模を大きくするし
かないので、セッターまで抱えてやらないと仕事が来ないんですよ。逆に、他
社が止めてしまうとその仕事が、システムが揃った企業にどんどん集まってく
る、営業しなくても。私のところなんかもそんな感じで仕事が来ます。
SAMPRASが5台に、セッターもあるから。そういう現状なので、小さい企業が生
き残っていくには、立ちはだかるものが多くて難しい状態です。
前田●でも、もういっぺん変わるかもしれませんよ。というのは、スキャナが
全部必要だといっても、Macintoshやスキャナを時間貸しする企業も登場して
いるからです。だから、設備を持つかどうかも時代によって変わります。今は
道が見えません。95年頃、写研の総売上中、出カセンター経由が7割、と日経
デザインに載っていました。そういう客をどうフォローしたのか、とぼくは写
研に言いたいんです。それだけ写研に乗っかっていた人たちがいました。写研
もそれに乗っかっていました。そういうふうにして、出力センターも儲けまし
た。ところが、去年だったか、東京リスマチックという出カセンターの最大手
が、SAPLS-Laura(サプルス・ローラ)のまだ十分使えるやつを廃棄処分しま
した。Macintosh DTP部門を拡大して、電算写植部門は縮小したわけです。人
員も出力機も。
7つづき:2001/02/23(金) 14:46
山本●写研にはもう期待できないのでしょうか?
太等●今思えば、どっちに転んでも、写研はどうしようもなかったですね。サ
ードパーティを育てて、写研のパイを大きくするという選択もあったわけです。
それを自分のところだけで…。今のSAMPRASは日立のワークステーションに積
んでいますが、次世代のSingisではWindows NTに移植される予定です。さらに、
フォントをPSか、来たるべきOpenTypeに合流させていけば続くんですがね。
前田●なぜオープン化できないのでしょうか? 「仕事の道具だから、高いか
らいかん」という感情論にぼくは与しませんが、クローズドなのはいけないと
思います。
岡田●業界標準の地位を取り戻すのは相当難しいでしょうが、みなさんが考え
ているほど先細りしないと思いますよ。ただ、個人レベルでは写研の文字を使
いたいと思っても、なかなか使えないのが現状ですね。(座談会終)
8じゃけん:2001/02/23(金) 14:46
そういえば、サーチエンジンでこんな文を見つけました。
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/joks/1999-1/anxious04.html

前のスレッドで、私が写研がホームページ(以下HP)を持たないことを
批判したら、
>写研が今やってる商売はホームページも必要ないし
>新市場の開拓も必要ない世界だよ。
>実際自分がネットしている環境にあるから感覚が
>麻痺するんだろうけど、 一般的には、そんなに
>広まっていないって。 どうして、ホームページが
>ないという点ばかりにこだわるわけ?
と書いてきた人がいましたが、上記リンク先の人も述べているように、
大学生が就職先を探すのにネットを利用するのは今や常識です。
(私の頃はそうでもなかったのですが)
つまり、HPを持たないということは、今大学生が仮に写研に就職しようと
思ってもアクセスする手段が存在しない、ということなのです。写研が
優秀な人材を確保する独自のルートを持っているとは考えにくいので、
これは新しい人材が写研に入る道を閉ざしていることを意味しているわけです。
上記の座談会で、太等氏も写研がHPを持たないことを批判していますが、
未だに写研がHPを持たないことを正当化する人がいるようでは、やっぱり
写研は「世間との磁場が逆転している」と言わざるを得ません。
9じゃけん:2001/02/23(金) 14:47
また、上記HPを見て気付いたのですが、写研の本社の住所を知らない
という人も今では結構いるようなので、ネット上で初の(笑)、
写研の本社所在地を書いておきます。googleだと2ちゃんねるの
ログもサーチに引っ掛かるので、何かの役には立つでしょう。

(株)写研
〒170-0005 東京都豊島区南大塚2-26-13
TEL (03)3942-2211
営業所:大阪・名古屋・福岡・札幌・仙台・金沢・静岡・広島・四国
(1999年4月現在)

写研の今後の方向性など、素人DTPの目から見て述べたいことは
他にも山ほどあるのですが、今日のところはとりあえずここまで。
10じゃけん:2001/02/23(金) 14:48
おっと、前スレへのリンクを忘れていました。
リンクを張っておきます。
http://mentai.2ch.net/test/read.cgi?bbs=dtp&key=962358198