トヨタ自動車は商品展開や販売・生産計画の指針となっている世界基本計画
「グローバルマスタープラン」を実質的に破棄する方針を明らかにした。拡大偏重主義に走り、
現在の苦境を招いた元凶と判断した。社長に内定した豊田章男副社長が中心となって、
6月までに地域ごとの販売動向や顧客の要望を踏まえた商品計画をつくり、改める。
グローバルマスタープランは、5年先までの商品ごとの販売・生産台数を記した計画。
02年に登場した。
海外展開を積極的に進めるにあたり、社員や部品メーカーに大まかな拡大計画を示した方が
よいとの判断で作成した。だが、そこで示された数値を必達目標と受け止める社員が増加。
全社的に「プランを重視するあまり、仕事の進め方が計画達成のために向かい、販売や生産の
現場の声を聞く姿勢が薄れる」(トヨタ幹部)状況が生まれた。
工場建設や人材配置の方針も、同計画の数値を出発点に決められるようになり、
拡大偏重主義に走った。米国の信用バブルに崩壊の兆しが見え始めた07年4月に、
米・ミシシッピ工場を着工してしまったのはその典型例だ。同工場は現在、販売回復が
見込めなくなり操業のめどが立たない状況に追い込まれている。
金融危機をきっかけに深刻な販売不振が起きると、必達主義は生産にブレーキをかけるのを
遅らせる原因になり、09年3月期決算が戦後初の営業赤字に転落する見通しになるなど、
現在の危機的状況をつくってしまった、とトヨタは分析している。
新計画は「マーケットビジョン」と名付け、15年を目標に北米や欧州、中国、日本など地域の
特性に合わせて、顧客や地域に求められる車種構成を十分考えて定める。
例えば、車の急増に伴い環境問題が深刻化している新興国では、製造コストがかさみ
利幅が小さくても、環境対応のタクシーの導入を進める考え。高齢化が進む先進国では
高齢者や障害者が使いやすい福祉車両を充実させる。目標が独り歩きした従来計画の問題点を
改めるため、顧客の声が届きやすい商品企画部門を中心につくる。(寺西和男)
▽News Source asahi.com 2009年1月22日3時2分
http://www.asahi.com/business/update/0121/NGY200901210006.html http://www.asahi.com/business/update/0121/NGY200901210006_01.html