J( '-`)し カーチャンスレ

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209名無しサンプリング@48kHz
俺は軽い発達障害と言うヤツで、小さい頃から病院や施設に通っていた。
発達検査、療育、カウンセリングと就学にも満たない俺をかーちゃんは
手を引っ張って連れて行ってくれた。ある日、スゲー怖い顔で「あんた、
ピアノやる?」と聞いてくる。俺は流石にビビってウン、と答えた。この辺り
の俺の記憶はないけど、この顔だけは覚えている。

かーちゃんは自分のピアノ教室をたたんで俺だけの先生になった。俺みたいな
ヤツを引き受けてくれる先生はいないからかーちゃんが先生だった。毎日二時間。
出来なきゃ張り飛ばされる。ピアノを弾く事には向いていたのか小学校に上がる頃
にはバイエルが終わっていた。一年から算数も国語もわからん。運動も出来ない。
けど俺は三年の時学芸会で全校合唱の伴奏を六年を押しのけてで勝ち取り、スターだった。
当日弾き終わって出来たぜ、と客席のかーちゃんを探した。かーちゃんは泣いていた。
なんで泣いているのかわからず、わからんだらけの俺はかーちゃんはどっか痛いのかと
心配になって終わってから教室に戻らず客席に駆け寄った。かーちゃんは
俺をむぎゅーだ、しかもみんなの前で。すると俺を連れに来ていた先生も泣いていた。
伴奏は俺のために学校が特別に用意してくれた舞台だったのだ。俺はバカだが
ピアノは弾ける、ということで友達が認めてくれた。とりあえず落ちこぼれながらも
まいっか、とのんびり学校に行って、今年の春、音大に入った。
かーちゃんは昔、有名国際コンクールに出場するほどの腕前だったというのを先日
後輩だった教授に聞いた。何人か見て欲しいという人がいたそうだが全部断って
俺だけに力を注いでくれたのも知っている。俺って無力だな。とりあえず今日実家に帰る。