449 :
Again:
前狂言 女役者 笑川 美佳 1
二十九才の飛龍はどん底でした。離婚とそれに伴う辛苦に加えて、役者の生命の一つ、喉に致命的な
病が発生したのでした。手術は可能でしたが、もし失敗すれば終生声が出なくなるというものでした。
八尾グランドホテルの公演はセリフ無しでした、次の浪速クラブは劇団ごと急拠キャンセルになりました。
八尾の公演をみた客は「生気あらへん、傘もって立ってただけや。もうおわりや。」と嘆き悲しみました。
本人も多感なひとです。その落ち込みぶりは、役者といえども、もう隠せないほどになっていました。
その最大の危機をすくったのは、笑川 美佳でした。裏方で飛龍を支えていた彼女は急遽カムバックし、
浪花、近江の鈴成座合同公演にこぎつけたのでした。(初日の2日前に決定。と記憶してます。)
飛龍は殆どちょい役、セリフなしで、時には、芝居に出ませんでした。しかし、異変を知ったファンが
そこにかけつけました。それこそ超満員で、ファンは 踊るのみの飛龍に 手拍子、拍手、ハンチョウ、花を
もって激励の応援したのでした。いい病院の情報がもたされました。また米製で、喉の負担が殆どない、
骨電動マイクが届けられました。なによりファンの声援が、なによりの応援でした。
希望とはすごい力があるものですね。絶望の極にあった飛龍は期間中 除々に元気になり、
最終日の口上では、はっきり背をのばして、「喉を克服して、役者を続ける」と言明したのでした。
いかに克服したかは詳細には存じませんが、その後の飛龍の活躍はご存じの通りです。