乗車率100%超の新幹線で「立ちっぱなし」 体調を崩したら鉄道会社のせい?
弁護士ドットコム2013年8月16日(金)18:01
「新幹線の自由席乗車率が100%を超えました」。お盆の帰省シーズンには
恒例のニュースだ。
年によっては200%近くに迫ることもある新幹線の乗車率だが、100%を超えた
状態とはどういうものか。新幹線における乗車率とは、座席数に対する乗客の
割合のことをいう。したがって、100%を越えるということは、席に座らず、通路や
デッキに立っている人がいるという状態を表している。
一方で、席に座れないということは、それだけ乗客の安全性は低下するように
思える。また、短時間の移動ならともかく、何時間もかかる新幹線で立ち続ける
ことは身体的負担も大きいだろう。混雑が過ぎれば、トイレへの移動も難しいかも
しれない。
しかし、鉄道にも「定員」はあるはず。乗車率が100%を超えても許されるものなの
だろうか? また、もし新幹線に立ちっぱなしで乗って体調を崩した場合、鉄道会社
の責任を問うことはできるのだろうか。鉄道にくわしい岡田一毅弁護士に聞いた。
●鉄道の「定員」は快適さの基準で、オーバーしても法律違反ではない
「同じ『定員』といっても、車や飛行機の定員と、鉄道の定員では性質が違います。
自動車や飛行機、船などの定員は『それ以上乗ったら危険』という意味の『保安定員』
で、超過することは法律で禁止されています。
一方、鉄道車両の定員は、あくまで快適に乗車できる基準の『サービス定員』と呼ば
れるもので、100%を超えて運行をしても法律違反にはなりません」
??それでは、鉄道の場合、ぎゅうぎゅうに、何人でも詰め込める?
「いいえ、限度はあります。鉄道会社と乗客の間には旅客運送契約があり、鉄道会社
には乗客を安全に輸送する注意義務があると考えられます」
??「注意義務違反」となるのは、どんな場合?
「あくまで理論上の話ですが、考えられるのは次のようなケースでしょうか。すし詰め
の車内で異常に温度が上がり、乗客が熱中症になるような状況だった。鉄道会社が
そんな状況を知りながら、それでもあえて客を乗車させた。
こんな場合には『注意義務違反』にあたる可能性があり、たとえば、それで乗客が体調
を崩したら、損害賠償責任を負う可能性が、理論的にはあり得ます」
??その言い方だと、混雑で体調を崩した程度で鉄道会社を訴えるのは、現実的ではない?
「簡単ではありません。そもそも、体調を崩したといっても、その原因は様々です。体調を崩
した原因が他に考えられる場合、車内状況と相当因果関係があるとはいえないので、損害
賠償は認められません。色々な手間も考えると、実際に請求することはなかなか難しいと
いえるでしょう」
確かに、乗車したせいで体調が悪化したと裁判で証明するのは、相当な手間だろう。この
時期は移動も「混雑との戦い」だと考えて、あらかじめ準備したうえで望むべきと言えそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
http://news.goo.ne.jp/article/bengoshi/life/bengoshi-topics-674.html