――20代がゴールデンタイムの番組を見なくなっている、という話もあります。
枠があることが逆に、テレビの弱みにもなっているんです。放送局の側では、限られた放送枠ですべての視聴
者のニーズを満たそうという気持ちがあるけど、それはネットがない時代の発想でしょう。限られた枠で、バラ
エティからドラマまで全部押さえようとする。視聴者からすれば、昔のように放送時間に合わせて視聴しづらく
なってきた。
いまや働いている人たちの職業はサービス業が70%近くで(GDP比)、土日に働いている人の割合も多い。と
ころが相変わらず、放送局の編成部門は「コの字」とか「ロの字」なんて言ってる。週末は家にいて、平日は19
時?23時まで家にいる人を想定している。でも、夜遅くまで仕事をして、帰宅時間が遅い人たちも増えているか
ら、ゴールデンタイムの番組は昔ほど見られなくなっている。
それは放送局のせいではなく、視聴者のライフスタイルが多様化したから。
視聴者の趣味も生活スタイルも多種多様。決められた枠の中で、その変化に対応しようとするとその弱みが先
に立ってしまうわけです。弱味を克服するには、ある一定の趣味を持つ人たちを対象にすることが必要でしょう。
全員をターゲットにするのは不可能と割り切ること。F1とかF2とか、まるで20台の女性は全員が同じ趣味を持っ
ている、といった考えから外れなきゃいけない。同じF1の中でもマジョリティの人が見そうなコンテンツとか、
対象範囲を絞っていく。
もう一つは、オンデマンド配信に力を入れること。それをやらないと、せっかくいい番組を作っても視聴者に
見てもらえる機会が少なくなってしまう。リアルタイム放送でしか流れないと、そのときに視聴している人の興
味がなければそれっきり。番組をストックしておいて、見たいと思ったときにオンデマンドで視聴できるように
しておけば、結果として様々な趣味を持つ視聴者をカバーできます。減った視聴率はネットで補完できるんです。
――番組そのものは良いのに、配信の方法が時代に合っていない。
そう。だいたい、ネットが出てくる前からずっと「昔のテレビは面白かった」と言っているおじさんたちはい
る訳ですよ。
最近でもNHKの「あまちゃん」とか面白いじゃないですか。でも、見るチャンスがない。朝8時からなんて通勤
通学の時間帯に被って見られないでしょう。あの番組は若者に合うはずなんだけど、わざわざ15分と細切れの番
組を(NHKオンデマンドに)お金を払ってまで見ようと思うかというと、そこまではいかない人も多い。BBCがやっ
てるように一週間は無料で見られる、というのがあっていいと思います。CMも一緒に流せばいいと思う。
なぜこの時代に成長しようとするのか
――なぜ、放送局はそこまで踏み出さないんでしょうか。
例えば、DVDというパッケージであとから売りたいという気持ちもあるわけじゃないですか。DVDはDVDで、オ
ンデマンドは(マイナスに)影響しないんですよ。ドラマのDVDは一回、番組を見た人たちが買うから。でも、
思い切りがないんですね。
ドラマは放送後一週間はオンデマンドで無料で、CM付きで飛ばさずに視聴できる。それで6ヵ月後にDVDが出る。
見逃す人は一杯いますから、それでいいじゃないかと思います。でも、「オンデマンドで視聴されたら、DVDが
買われなくなってしまうんじゃないか」みたいにネガティブな影響を与えそうな要素を見つけて、腰が引けてし
まう人が多い。
http://ascii.jp/elem/000/000/808/808389/ みんな最近は週に一回番組表一通りチェックして見たいと思った番組は全部HDDレコーダで録画予約しておいて、帰宅後か週末にオンデマンドで本当に見たい番組だけ視聴するんじゃないの。
つまり、既にオンデマンド視聴が当たり前の世の中になってるわけだが。