このまま戻っても、勝てない……。
2つの恐怖と戦う斎藤佑樹の今。
斎藤佑樹は今、2つの恐怖と戦っている。
ひとつは、故障が再発するのではないかという怖れだ。
斎藤が右肩を痛めたのは昨年11月の日本シリーズ第5戦だった。
「ちょっと変な感じはあったんですけど、アドレナリンも出ていたので、ぶりぶり投げてしまった。そうしたら
翌朝、右肩が上がらなかったんです」
右肩の関節唇損傷と診断された。
痛み自体は4月中旬に消えた。だが、当初は「6月ぐらいには上で投げるつもり」と意気込んでいたが、時間が
経つにつれ「何かがブレーキになっている」とトーンダウンしてきた。
斎藤は2月のキャンプから大幅なフォーム改造に取り組んできた。痛みがなくなったとはいえ、これまでと同
じ投げ方をしたのでは故障が再発してしまうからだ。
ただ、その下半身主導の新フォームもまだ完全とは言えない。
「投げていても昔の悪い癖が出てしまうことがある。新しいフォームを100パーセントに近づけないと、体がも
う大丈夫なんだってわかってくれない。今はその怖さと戦っている状況」
明らかに右肩をかばうような投げ方をしていた斎藤。
それでも投球練習のときは、斎藤が言う「怖さ」はほとんど感じられなかった。しかし6月22日、フューチャー
ズ戦で233日振りに実戦復帰したときは、その「怖さ」の意味がはっきりとわかった。
明らかに右肩をかばうような投げ方をしていたのだ。
復帰2戦目となった6月30日のロッテ戦も、前回ほど顕著ではなかったが腕がスムーズに振れていなかった。
腰痛に悩まされていたプロゴルファーがこんな話をしていたことがある。
「腰痛の9割は精神的なものだと言う医者もいる。まったく異常がないのに歩けない人もいれば、明らかに椎間
板ヘルニアの状態なのに平気で運動している人もいる。怖い話を聞いた後って、普段、聞こえないような物音ま
で拾っちゃうものじゃないですか。腰痛もあれと同じで、腰痛だと思うと、いらん痛みまで探しちゃうんですよ。
そうなってくると、もう痛みなんだか何なんだかわからない。だから痛いと思っても意識的に無視するしかない
んです」
今の斎藤も似たような状況にあるのかもしれない。
もうひとつは一軍に復帰したとき、再び向き合わなければならないプロの打者に対する恐怖感だ。
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http://number.bunshun.jp/articles/-/507514