――以前、濱田くんが「中村監督と台詞に関する細かい話はしない」と話していましたが。
「しないですね。僕は普段の岳の考え方から好きなので、それで脚本を渡して考えてきてくれるもの。日常的
な会話の面白さもあるから信じてます。もっと面白くなるんじゃないのと思う時はあえて、いじったりもします
けど、後は何も言わないですね。」
――濱田くんは作りこんで来るタイプなんですか?
「作り込むってことでもないんです。具体的に言うと相手の役者さんの台詞をよく聞くってことなんですけど。
それに対してちゃんとリアクションが出来る。だから、芝居が嘘にならない。今回は岳だけでなく、他の俳優さ
んたちもそうでした。」
――では、濱田くん演じる悟に何かを求めたという感覚はないんですか?
「岳で行こうと決めた時に達成していましたね。」
――どんな風に演じてもらっても良かったということですか?
「そうそう。『アヒルと鴨…』の頃、あるシーンで岳が台詞を言いながら泣いてて「なんで泣いてるの?」と
言ったら「いや、普通に脚本読んだら泣いちゃったんですけど」と言ってて。脚本だけでは分からなかったんで
すが、原作を改めて読み返してみるとこれは泣くわなと思いました。それで「ごめんな」と誤りました(笑)。そ
れもあって、もう信用しようと思って(笑)。その感覚は多部未華子にもありますね。岳と多部ちゃんは、それ違
うんじゃないの? と思うことはないんです。」
――濱田くんと5作目のタッグとなりますが、改めて思うことはありましたか?
「やっぱりいいなと思いました。目突きの練習をするシーンは確か台本では勢いが強すぎてガムテープの粘着
では飛ばしちゃうからいちいち直すと書いていたんです。だけど、本番を撮ってみたら練習しようとするだけで
落ちちゃったんです。それがねらいだったらコメディの演技になると思いますが、岳は物事の今起きてる状況を
受けた対応が出来てるんですよね。それで、本当に絶妙のタイミングで落ちるからスタッフもみんな笑いをこら
えてて。カットした瞬間みんな爆笑でしたね。」
――監督が撮影で心がけていることはありますか?
「お客さんの目線になることですかね。現場のモニターでその芝居を見てて、それを初めて観る芝居として見
れるか。脚本も書いてるし次の台詞も知ってるし、テストで言い方を変えようかという話をしてたりするからそ
れが直ってるかどうかも気になるんだけど「よーいスタート!」と言った後はかなり努力して切り替えて観るよ
うにしています。」
――監督にとってのこの映画『みなさん、さようなら』とは?
「全作業終えてとりあえず1回通して観ましょうと言って観た時は、まだ修正も出来ますし、撮影の時心がけた
のと同じように努力して頭を切り替えて、お客さん目線で観るようにします。テンポが早すぎないかとか途中で
飽きないかとか。でも、そうやって観たらすごい感動してしまって泣いちゃったんですよ。1本指腕立て伏せの
シーンとかで。「おまえずっとやってたのかよ!」と普通に思えてウルッときました(笑)。この映画作っちゃっ
たら、この後もう映画撮らなくてもいいんじゃないのって思うくらいの傑作になってしまいました。ま、その後
に撮ってこの間完成した映画も結構いいですけどね(笑)!」
これだけ中村監督が自信を持ってお贈りする『みなさん、さようなら』は、数々のヒット作を飛ばしてきた
中村監督にとっても代表作になること間違いなし。カテゴリーとして成り立ってきている“団地映画”としても
必見の作品だ。濱田岳はもちろん、全キャストの好演や驚きの展開含め、見どころ満載。是非、劇場でこの傑作
に触れてほしい。
http://kansai.pia.co.jp/interview/cinema/2013-01/minasan-movie.html