目標をもつことの意味
やっとわかりました
俳優としてデビューしてから11年が経ちました。最初の頃は、人に知ってもらいたいという気持ちが強く、シ
ゴトを取ることに一生懸命でした。最近は、ある程度安定してきて、台本をもらい、撮影・本番・取材、そして
次の作品がくるという決まったリズムができ上がってきています。ありがたいことだけど、安心感がチラついた
ときが、実は落とし穴。安定に甘んじていると穴にまんまと落ちてしまう可能性があると思う。それを回避する
ため常に目標をもつようにしています。「目標をもつ」ことの意味が最近になってやっと
わかったんですよ。目標は、ステップアップの過程に勢いをつけてくれる。目指すものがあると自分にプレッシャ
ーがかかり、シゴトへのモチベーションにも繋がります。さらに目標は人に話すようにしています。「有言実行」
という言葉がありますが、万が一実行されなかったとしても口にするほうがいい。他人に見られているという圧
力にもなるし、困ったときには、助けてもらえるというメリットもあります。僕の場合はやりたい役があったら、
マネージャーに伝えるようにしています。今は種まきの最中で経験値を積んでいるところ。僕の目標? 近いう
ちに形にしてお見せします。
いつも新しい発見
いつも分岐点(ターニングポイント)
俳優のシゴトは特殊だと思います。作品ごとに、人がギュッと集まって、終わったらバイバイ! 一匹狼みた
いな部分もあり、ときには協調性を求められる。楽しくやらせていただいています。新しい人、作品に対しては、
いつもドキドキワクワクしています。俳優をしていると新しい発見だらけですよ。第一線で活躍している人に出
会えるチャンスが多いことも魅力のひとつ。テレビで見ていると「この人ってなぜこんなに人気があるのだろう」
と疑問に思う人、いませんか? 僕は『品川庄司』の品川祐さんが印象的でした。実際にお会いするまでは「昔
はやんちゃな人だったんだろうな」「おもしろい顔だな」くらいのイメージしかありませんでした。でも一緒に
シゴトをして話してみると、活躍されている理由がとてもよくわかりました。繊細で優しいのに、目の奥はオオ
カミのように鋭いんですよ。本番前はリラックスした雰囲気を出しているけど、いざ本番になると張りつめた空
気に一瞬にして変わる。品川さんのように、どこかピリピリしていて、動物的な鋭い感性の人と一緒にシゴトが
できるととても心地いい。出会った人の素敵な魅力を自分にも取り入れたいという気持ちもあります。新しい役
への挑戦も、人との出会いと同じことが言えます。2月から公開の映画『逆転裁判』で、新米弁護士の成歩堂龍
一という役を演じました。情熱的で、清く正しく誠実な男です。台本をいただいたとき、僕の中ではトライアル
な役どころという感想をもちました。でも、演じているとスタッフさんから「雰囲気があっている」と言われ、
意外だったことを覚えています。成歩堂のように、自分の意志を曲げずに生きていくのは難しい。だけど、彼の
素直で一途な部分を演じるうちに、ファンになり、見ているだけでも救われる人もいるのではないかと感じまし
た。ただ…彼のビジュアルがゲームのままなので、慣れるのにとても時間がかかりましたね(苦笑)。最後のほ
うは、それが役に入るためのスイッチになりましたが。
30歳で見えた新たな思い
僕は今年30歳になります。ちょっと偉そうに聞こえるかもしれないけど、30代で、今シゴトに迷っている人、
そろそろ人生を決めたほうがいいかもしれません。実は僕自身、最近まで「俳優には向いていないかもしれない」
とか「俳優じゃないほうが幸せかもしれない」と気持ちがグラついていました。でも、振り返れば11年も続けて
きたこのシゴト。30歳という節目を目前にして「ずっと俳優でいこう」と初めて思いました。30代になってから、
ライフ
スタイルを変えるのはすごくリスキーじゃないかな。ひとつのことにフォーカスしたほうがシゴトに深みも出る
と思います。僕も、逃げ場をなくしたら、よりシゴトに真剣に立ち向かえるようになった気がしています。自信
がなかったせいか、今までは飛行機に乗ったとき、職業を「オフィスワーカー」と書いていたんですよ(笑)。
これからは「アクター」と胸を張って書くようにします。腹をくくりました。僕は、俳優として生きていきます。
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