20年以上にも渡って続けられてきた光学機器メーカー「オリンパス」の損失隠し。
その舞台に欧州のオフショアとして、当時としてはあまりに日本では馴染みの薄い
リヒテンシュタイン公国の銀行が顔を出す。
世界最高レベルの秘密守秘が徹底されている「LGT」を使用しており、
関係者は「よほど隠したい性質の資金だったのだろう」と話し、
オリンパスがいかに隠し通したかったうかがい知ることができる。
オリンパスの2000年の有価証券報告書に
「LGT Portfolio Management (Cayman) LTD. 」なるファンドの名前が出てくる。
これが、プライベートバンク「LGT(リヒテンシュタイン・グローバル・トラスト)」と
接点を持った記録として残っている。
リヒテンシュタインとは、スイスとオーストリアに挟まれた立地で、
人口よりも海外から設立された法人の方が多いという珍しい小国だ。
その中で最も有名なプライベートバンクがLGTなのだ。
同公国皇太子ハンス・アダム2世がオーナーで、そして守秘性の高さでは群を抜いていることから、
スイスのプライベートバンク経由で富裕層資金が大量に流れ込む先でもあった。
そうした、知る人ぞ知る存在だったのだ。
「銀行自体はリヒテンシュタインでは一番信頼性があり、業務としては問題ありませんし、
今は日本でもまっとうに業務をしていると聞きます」
と、海外在住のプライベートバンカーが説明する。
オリンパスの損失規模は約2000億円ともされているが、
LGTにはその1割弱にあたる約150億円を出資している。
だが
「昔なら、普通はスイス止まりです。
だから、客層はスイスに比べると良くないようで、
宗教関係とか、政治関連もあると聞いています」(同)
というように、とにかく表に出したくないお金だったことがよくわかる。
日本でLGTを使う人は当時としてはまれな存在。
では、誰がオリンパスとLGTとを結びつけたのか。
LGTは現在、日本では投資顧問業として金融庁の登録を受けて営業しているが、
当時は規制も緩いもので、東京・六本木の高層ビルにオフィスを構えて、数人のエージェントが活動していたという。
全国紙社会部記者によると、ここには当時、オリンパスと深い関係にある
「ITX」の男性の弟(元野村証券)が在籍していたという。
この野村OBが、今回の損失隠しスキームのカギを握るとされる人物の一人であるという。
現在は飲食産業を生業とし、銀座の高級バーなどのプロデュースなども行っているようだが、
海外投資スキームの“素人”であるオリンパス経営陣を指南するのはたやすいことだったろう。
当時の日本のLGTを知る人物は
「付き合いはありませんが、正直、どこから来たんだ、という怪しいエージェントもいたと聞きます。
また、顧客でも、昔からリヒテンシュタインを使う人は普通ではありません。
マネーロンダリング、もしくは脱税という目的の顧客も多かったでしょうから…」
という。
現在では、LGTがシステム開発の社員が銀行とトラブルを起こし、
顧客データを大量に盗んでドイツの税務当局に売却。
帝京大学の元総長の相続遺産があることも発覚するなど、手の内も明らかになってきている。
ただ、当時としては、ほとんどの日本人が知らない手法を駆使していたため、
20年以上も隠し続けることができたのだろうか。
同社は、第三者委員会がきょう6日にも調査結果を発表するとしている。
誰が何をどうやったのか、損失隠しのスキームが明らかにされる。
http://news.nifty.com/cs/economy/economyalldetail/yucasee-20111206-9730/1.htm