欧州が発展途上の中国に救済を求めていることほど、世界経済の悲惨なありさまを如実に表すものはない。
フランスのサルコジ大統領は27日、中国の胡錦濤国家主席と電話で会談した。
金融のアルマゲドンを回避するため欧州が資金を必要とし、
それを中国が持ち合わせているという事実は、どうやっても隠せない。
サルコジ大統領らユーロ圏首脳は今後数カ月、頻繁に中国に資金をねだることになろう。
ただ、欧州は中国にパトロン役を演じてもらうことに慣れてしまってはいけない。
3兆2000億ドル(約240兆円)という豊富な外貨準備を有する中国が流動性不足に陥ることはない。
ただ今後、ユーロ建て債購入を通じた欧州救済をためらうことになりかねない理由が二つある。
一つは13億人の中国国民の多くから怒りを買うこと。
二つ目は2012年が近づく中で、国内資金が必要になると政府が判断する可能性があることだ。
中国で民主化の波は荒れ狂っていないが、中国共産党の決定や行動に世論が及ぼす影響力は大きくなっている。
膨大な国家資金を欧州支援に回すことを納得してもらうのは難しい。
不安定なドルの推移を踏まえた資産の分散化にすぎないと言って巧みに説き伏せることもできるだろうが、
その言い訳が通じるのも、インフレ急上昇にあえぐ工場労働者階級までだろう。
世界の見通しには中国を悩ませる陰りが見えている。
中国は08年の危機を巧みに回避した。
しかし日米欧の成長が急停止すれば、12年はもっと厳しい状況になるだろう。
中国にとって極めて重要な輸出エンジンが作動しなくなり、状況安定のための資金の必要性が増すことになる。
それに、欧州の危機がさらに悪化することはないと信じる者がいるだろうか。
欧州首脳がギリシャ債の損失負担50%受け入れを民間投資家に説得したのは素晴らしい。
救済基金の実質的な融資能力を1兆ユーロに拡大したことも評価できる。
だが、ユーロ圏の構造問題の変革まで踏み込んだわけではない。
中国は世界の市場安定を支える役割を実際に果たすべきだ。
その一方で、欧州は自らのために中国がさらに寛大になってくれるなどと期待してはならない。
(ウィリアム・ペセック)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=aHCUrgB10sI0