暴力団排除条例の全国施行を契機に、暴力団の壊滅を目指す警察庁の頂上作戦は最終
局面に入った。それとともに警察が本格着手しているのが、暴走族OBらで構成する「愚連隊」の
取り締まりだ。時と場合で組織形態を変え、独自のコネクションを使っては芸能界などさまざまな
業界に進出。暴力団の「密接交際者」どころか、その“筋”の住人にもなりうる予備軍的存在だ。
事態を憂慮する警視庁は特別捜査班を設けて関係者の取り締まりを強化、全容解明を急いでいる。
今年に入り、警視庁は都内某所に特別捜査班「組織犯罪特別捜査隊(特捜隊)」を設けた。
「東京・六本木を拠点にする『関東連合』や、中国残留孤児の子弟らがつくった『怒羅権(ドラゴン)』
など暴走族OBらで連携する愚連隊組織を把握するのがねらい。全貌をつかみづらい厄介な存在で
都内各所に勢力を伸ばしている」(捜査関係者)
捜査関係者によると、特捜隊は、偽造カード犯罪の捜査に専従していた捜査員で結成。
都営アパートの一室を“特別捜査本部”に改造し、これら愚連隊の情報収集に当たっているという。
捜査班結成のきっかけは、昨年11月に起きた歌舞伎俳優、市川海老蔵(33)の殴打事件だ。
捜査関係者は「六本木の飲食店ビルを舞台にしたこの事件には、関東連合のOBが関与していた。
海老蔵を殴った男は、連合の元メンバーで、逮捕までに10日あまりも逃げ回り、世間を騒がせた。
警察の威信が大きく傷つけられたこともあり、今まで野放し状態だった彼らの本格解明に乗り出す
ことになった」と明かす。
警察の動きは速かった。5月には、海老蔵事件の際に現場にいた関東連合のOBだった男性(29)を、
4月に新宿歌舞伎町の路上で起こった暴行事件の容疑者として逮捕=起訴猶予で釈放。9月には、
やはり同連合OBで、元横綱朝青龍(31)の暴行事件で殴られた飲食店経営者の男性(40)を、
「5月に自身が経営に関与する店で知人男性を殴った」として傷害容疑で逮捕=同=した。
「いずれも身内同士のケンカが原因とみられ、しかも発生から随分経ってからの事案。関東連合の
実態を把握する側面があったようだ」(別の捜査関係者)
7月には「怒羅権」のメンバーの男(38)が、暴力団組員(45)の耳を刃渡り約23センチの包丁で
そぎ落とした傷害容疑で逮捕された。「どの事件も捜査の中心は特捜隊が担っていた。一連の集中
取締りの一環だった」(同)というのだ。
相次ぐ摘発に警察が抱く危機感の本気度がうかがえる。そのへんの事情を暴力団関係者がこう
説明する。
「『関東連合』は1980年代から存在する暴走族の集合体だが、何度も代替わりしており、現在、
活動実態はほとんどない。ただOBが飲食、アパレル、風俗、AVなどさまざまな業界に進出。仲間
同士が連帯意識で結ばれ、コネクションを生かす。その一方、振り込め詐欺などの犯罪に手を染める
者やヤクザと手を組む者も。『怒羅権』も似たような特徴があり、組織が巨大化する前にたたいて
おきたいのが警察の本音だろう」
さらに警察が注目するのは芸能界との関係だ。特に関東連合OBの人脈をたどると複数の芸能
プロダクション、芸能人の名前が挙がっている。
別の捜査関係者は「グラビア出身の女性タレントや女性ファッション誌で活躍するモデル、誰もが
知る有名モデルは、関東連合の関係者との交際が噂されている」と指摘し、続ける。
「六本木や西麻布は彼らの根城。顔見知りになり、知らず知らずに接点が生まれていく芸能人も
少なくない。同連合OBには大手レコード会社やプロダクションに深く食い込んでいる者もいて、
警察は“マル暴”との『密接交際者』同様、芸能界での交友関係を洗い出す構えでいる」
“マル暴”のみならず、あらゆる反社会的勢力との対決姿勢を鮮明にする警察。浄化の流れの中、
芸能人たちの意外な“素顔”も明かされていくことになる。
ソース:zakzak
http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20111013/enn1110131140007-n1.htm