◆フェーン現象、要因?
名古屋からの「熱移流」ではない―。日本一暑い街として知られる多治見市の「猛暑の理由」を調べている
筑波大の研究チームが29日、これまで有力視されていた熱移流説を否定、「フェーン現象ではないか」と
する新説を、市内で開いた報告会で発表した。しかし、十分には解明しておらず、「観測と研究に3年間は必要」という。
研究チームは日下博幸准教授(気象気候学)をリーダーとする学生ら。同市と協定を結び、昨年7月末に市内(
19カ所)と隣の愛知県春日井市(1カ所)に高精度気温計を設置。1カ月間の定点観測と、よく晴れた数日間の湿度、
風向風速、体感温度を加味した集中観測を行った。
その結果、有力視されていた名古屋市方面からの南西風はあまり観測されず、むしろ真西から北寄りの風の流入が
優勢だった。従来の熱移流説は、海風に押されて名古屋市の熱塊(ヒートアイランド)が多治見に移り滞留―というもの
だったが、海風は途中で止まり、伊吹山を越えた西風が濃尾平野を横断して入り込んでいることが分かった。この風は
、伊吹山を越える際にフェーン現象で気温が上がり、さらに岐阜市などの都市部で温められて移動しているのでは、という。
もう一つ有力視されたのが「盆地効果」。多治見市は濃尾平野の山側に位置する盆地。ここに商業施設や住宅が密集
し、渋滞しがちな国道も2本が交差、「気温を押し上げている」という見方だ。ただ極端な盆地形ではなく、「盆地効果は
薄めでは」とも。同市光ケ丘のアメダス(気象観測)地点が高速道路ののり面と国道に近く、市内平均よりも高く観測
されている、との見方に対しては「日中が他地点よりも1〜4度高く(集中観測日)、その可能性はある」としている。また、
午後1時前後の体感温度が春日井市より高いことも明らかにした。
フェーン現象については「盆地効果と合わせ、メカニズムをさらに研究する必要がある」としている。チームは、今夏は
30日に可児市や犬山市にも範囲を広げて温度計を設置、観測に入る。最終的には地形や緑の有無、建物分布などと
絡ませて熱環境を解析。市は緑化の場所や方法など、街の気温を下げる手立てを得る方針。
岐阜新聞
http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20110630/201106300858_14286.shtml