シリア国内で当局の民主化弾圧をブログで批判してきた自称「同性愛のシリア女性」の正体が、
英国留学中の40歳の米国人男性だったことが明らかになった。ブログを終わりにしようと女性が
当局に拉致されたことにしたところ、「彼女を救え」の大合唱になった。
ソーシャルメディアの危うい一面が浮かび上がった格好だ。
きょうのテーマは「ゲイガールの正体」とした。(SANKEI EXPRESS)
北朝鮮やミャンマー、イランなどの強権国家は外国メディアに、住民の貧しい暮らしぶりや
反政府活動を取材させない。取材を強行して見つかると拘束され、スパイとして裁かれることもある。
このため、ブログやツイッターなどソーシャルメディアを通じて、住民自らが発信する情報が貴重なのだ。
民主化運動に容赦のない弾圧を続けるシリアのバッシャール・アサド政権は、
当局の引率付きでなければ、外国メディアの取材を認めない。問題のブログ
「ゲイガール・イン・ダマスカス」(ダマスカスの同性愛女性=ダマスカスはシリアの首都)では、
「アミナ・アラフ」という女性名の筆者が、デモに参加し、当局に追いかけられるダマスカスでの日々を記していた。
米国生まれの同性愛者
米メディアによると、「アミナ」は5年くらい前から、オンラインのフォーラムに登場して、中東問題に関する
意見を述べていた。米国人とシリア人の混血で35歳。生まれたのは米バージニア州ということだった。
今年2月、米国のレズビアンのサイトのブログサービスで、「ゲイガール〜」を始めた。
同性愛者というふれこみが話題を呼んだ。同性愛はシリアでは違法。「アミナ」はそれだけで反体制的だったのだ。
ダマスカスのカフェに入ると、雰囲気から周囲の客が同じ同性愛の女性であることが分かり、ほっとする。
エロチックな魅力があった。当局に目をつけられ、4月ごろから住まいを転々としていた。
「ゲイガール〜」のブログは欧米で評判となり、「シリアの抵抗のヒロイン」(英ガーディアン)などと称された。
今月7日、「いとこ」の書き込みで「アミナ」は拉致されたことになった。欧米主要メディアはこの書き込みに基づき、
「ゲイガール拘束」を伝え、フェイスブックには「アミナを救え」のページができ、支持する声が相次いだ。
似た過去を持つ中年男性
ところが、米国務省が調べてみると、当局に拘束されたものの中に「アミナ」に該当する女性はいなかった。
ガーディアンが「アミナ」自身から提供されたという本人の写真を掲載したところ、ロンドン在住のクロアチア人の女性が
「それは私」と名乗り出た。どうも様子がおかしかった。
ワシントン・ポストや米公共ラジオ(NPR)などは、過去5年間に「アミナ」と頻繁にメールのやりとりをしていた人たちと
接触し、正体を探った。その結果、「アミナ」とオンラインのフォーラムで議論したことがあり、バージニア州出身で
「アミナ」と同じような子供のころの思い出を持ち、「アミナ」が友人に送った「シリアの写真」に夫婦で映っている男性が浮上した。
トム・マクマスターさん(40)だった。
小説にしていたら…
マクマスターさんは英スコットランドのエディンバラ大大学院に留学中。現在の専門は国際関係全般だが、中東問題に
興味を持ち、もちろんシリアには行ったことがある。妻はシリア経済の専門家。自身は小説を書きたいという気持ちも
あるという。米メディアの取材に最初は自分が「アミナ」であることを否定していたが、12日、「ゲイガール〜」のブログで、
すべて自分が書いたと告白して謝罪した。
マクマスターさんは「これほど注目されるとは思わなかった。ここで語られたことはフィクションだが、中身は真実だ」と書いた。
「だれも傷つけていない」というが、中東・北アフリカの体制側が、「ブログやツイッターはみなでっち上げ」と言い張る恐れがある。
ソース(MSN産経ニュース):
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110620/mds11062012510006-n1.htm