迅速な検問 決め手に
強盗事件は、県内では幸い、年間10件もない。県警は2009年に起きた5件、10年の4件で、
いずれも発生後1か月たたないうちに容疑者を逮捕し、解決してきた。
約1か月前の4月初め、今年2件目となった徳島市の古物商強盗事件も、
発生から約1時間20分後にスピード逮捕した。「えらく荷物が大きいな、おかしい」。
迅速な検問、的確な職務質問が、決め手になったという。この事件を振り返った。(畑中俊)
4月8日午後6時40分過ぎ、徳島市南田宮2の古物商店に若い男が押し入り、
店員に包丁を突きつけ、5万円が入った手提げ金庫を奪って徒歩で逃げた。
同じ頃、徳島東署地域課の阿部昌仁巡査部長(36)と真鍋良人巡査(30)は、泊まり勤務のため署に入った。
弁当を食べようとした時、署内の無線が大音量で、「強盗事件発生」と告げた。
2人はパトカーで現場に急いだ。署内では上司の曽山増治警部補(55)がすぐ、現場周辺を思い浮かべた。
「東に逃げた可能性もある。県道の吉野橋の検問を強化すれば、限られた人数で被疑者を押さえられるはず……」。
無線で2人に、現場から東に約1キロ離れた吉野橋東詰で検問するよう指示した。
間もなく、近くの交番から枡富淳紀巡査(21)もバイクで応援に駆け付けた。阿部巡査部長は北側車線で、
ほかの署員5人と3車線を通る車を、真鍋、枡富両巡査は橋の南側の歩道で、自転車や歩行者の検問をそれぞれ始めた。
無線から犯人の情報が流れた。「身長160〜165センチ、中肉、フード付きの茶色のコートでジーパンにゴーグル姿。
包丁で店員を脅し、手提げ金庫を盗んだ――」。阿部巡査部長らは緊急配備の基本を思い出した。
「犯行後、着替えているかもしれない」。どんな姿でも見抜いてやろうと決意した。
真鍋、枡富巡査が検問を始めて約5分後、1人目の通行人が歩いてきた。小太りの男、赤のシャツ姿、大きなリュックサックに手提げ袋。
「徒歩なのに荷物が大きいな」。真鍋巡査が男を呼び止めた。
「近くで事件があったので、ご協力ください。ちょっと手荷物を確認させてもらってもいいですか」
男は素直に応じ、2人が手提げ袋をのぞき込むと、手配に似たフード付きのコートが入っていた。
リュックの中身も見せるよう求めた。中には手提げ金庫があった。「間違いない」。男はおとなしくしていた。
無線で阿部巡査部長を呼び、署に連絡。捜査車両に男を乗せ、持ち物検査を続けると、リュックの奥から包丁が出てきた。
男は素直に「やりました」と認めた。その後、連行先の徳島西署が、強盗容疑で緊急逮捕した。
4人は18日、本部長表彰を受けた。曽山警部補は「手本通りに職務質問をかけられた」と3人を褒め、
阿部巡査部長らも、「慌てず、基本に忠実にできた」と控えめに喜んだ。
捜査幹部の一人は「彼らの職務質問がなければ迷宮入りしかねなかった。本当によくやってくれた」とたたえた。
別の幹部は「強盗事件は、刑事が聞き込みや現場検証などで犯人を割り出して解決するケースが多い。
検問で捕まえることはまれで、快挙だ」と話す。
真鍋巡査は「重要事件の被疑者摘発は初めて。自分の手で見つけられたことは大きな達成感があり、自信にもなった」と話し、
いっそうの活躍を誓う。「安全安心のまち」は、「おまわりさん」たちの地道な努力の積み重ねで守られている。
(2011年5月4日 読売新聞)
迅速な検問 決め手に : 徳島 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokushima/news/20110503-OYT8T00564.htm 強盗犯人をスピード逮捕した(左から)枡富巡査、曽山警部補、阿部巡査部長、真鍋巡査(徳島東署で)
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20110503-752846-1-L.jpg