携帯電話のコミュニティーサイトを利用した子供が性的犯罪の被害に遭うケースが多発している問題で、
警察庁は、サイトの健全性を審査する第三者機関「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)」に対し、
同庁がまとめる被害情報を定期的に提供することを決めた。EMAのサイト審査に活用してもらうのが目的。
EMAも合意し、7日、双方が覚書に調印した。【鮎川耕史】
覚書に基づき、警察庁は、コミュニティーサイトの利用をきっかけとする子供の性的被害に関する情報のうち、
サイト別に集計した件数などを半年ごとにEMAに提供する。EMAはサイトの健全性を認定する審査などで
参考資料とする。調印は7日、東京都内で四方光警察庁情報技術犯罪対策課長と堀部政男EMA代表理事が行った。
コミュニティーサイトを巡っては、「ミニメール」と呼ばれるサイト内メールを通じて子供が誘い出され、性的被害に遭う
ケースが多発。警察庁の統計では、昨年上半期(1〜6月)の検挙件数は730件で、このうちEMAの認定サイトに
絡むケースは5割超の367件を占めた。また、被害に遭った子供(18歳未満)は601人で、これをサイト別に分けると、
多い順で5番目までのサイトは現在すべてEMAの認定を受けている。
一般的に、コミュニティーサイトはフィルタリングによる閲覧制限の対象となるため、フィルタリングに加入した
携帯電話からは接続することができない。ただし携帯電話各社はEMAの認定サイトに限り接続が可能となる
仕組みを採用している。警察庁は、こうしたサイトで被害が多発していることを重視。対応をEMAと協議してきた。
覚書への調印後の記者会見で堀部代表理事は、警察庁の情報をもとにした個別のサイトの認定取り消しについて、
「(EMA内部の)審査・運用監視委員会が決めることだが、取り消しも考えられる」と述べた。
◇実質的な「成果に」期待
今回の合意は、警察庁の提案をEMAが受け入れる形で実現した。今後は、どのサイトで子供の被害が何件発生しているかを
EMAが把握することになる。データを保有することで、EMAは被害抑止への重い役割を担う。被害の増加に歯止めのかからない
サイトは、認定の取り消しも求められるだろう。それが、サイト運営会社の安全対策を促すことにもつながる。
「ミニメール」を通じて見知らぬ相手とメッセージ交換ができるコミュニティーサイト。未成年を装う成人のメッセージに、子供が
誘い出され、性的被害に遭うケースの続発が深刻化した。警察庁は昨年秋に実態を分析。会員の年齢詐称や、誘い出しを
目的とするミニメールの氾濫が、被害の背景として浮かんだ。
最近は、これらの対策として形が見えてきているものもある。年齢詐称に対しては、契約時に年齢を確認する携帯電話会社が、
サイト運営会社に情報を提供することで防止することが検討されている。フィルタリングの普及に向けては、全国の警察が昨年末に
携帯ショップへの一斉調査を実施した。不適切なミニメールを排除する監視体制を強化しているサイトもある。
7日の覚書も、こうした動きの一環だ。被害件数の減少という実質的な「成果」が期待されている。【鮎川耕史】
◇モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)
「携帯電話サイトの健全な発展」を目的に、08年に設立された一般社団法人。コミュニティーサイト運営会社など約100社の
会員からの会費や審査の料金などで運営されている。サイト側の申請を受け、有識者でつくる「審査・運用監視委員会」が
認定基準に沿って健全性を審査。認定されたサイトは、携帯電話会社によるブラックリスト方式のフィルタリングサービスで
閲覧制限の対象から外される。現在、32のサイトが認定されている。
ソース(毎日jp):
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110208k0000m040014000c.html