ドイツは10月3日、再統一から20年を迎える。1989年のベルリンの壁崩壊から1年足らずで
「歴史上、極めて希有(けう)な機会をとらえて実現できた」(ドイツ政府関係者)再統一だが、
国内で20周年を祝う雰囲気は盛り上がりに欠けている。国外ではユーロ危機、
国内ではなかなか埋まらない東西の経済・社会格差が影を落としているからだ。(ベルリンで 長戸雅子)
消えない格差
ベルリンの壁崩壊直前の89年10月9日に行われたデモには7万人が参加。「われわれは国民だ」の叫びで
知られる抵抗運動は壁崩壊の導火線となり、ライプチヒは再統一後「英雄都市」と呼ばれた。
しかし、街には当時の熱気をしのばせる活気はなかった。年金生活者のマリース・ハームさん(67)は
「改革のスピードが遅くて何も変わらないことに失望している。経済は良くならないし失業率も高い。
私は引退したからいいけれど、希望を持てない若い人たちが気の毒だわ」と表情を曇らせた。
就労者1人あたりの実質国内総生産の東西格差はこの20年ほどの間に20%まで縮まったが、
旧東地域の失業率は12〜14%と今も西側地域の2倍近い。
「ドイツ人は統一20年を祝う気分ではない」。9月18日付の有力紙ヴェルトには、こんな見出しの記事が掲載された。
それによると、44%の人が生活水準を向上させる機会が統一前より失われたと回答し、
統一前より生活水準が良くなったと答えた人は3分の1にとどまった。
壁崩壊から12日後に生まれたというライプチヒの大学生、トーマス・リンケさん(21)も格差を感じているひとりだ。
リンケさんは「東への投資をもっとしてほしい。職を、文化を、活気を生み出すのは経済だから」と訴えた。
多大なコスト
ドイツの場合、統一後から94年までにドイツ統一基金から東側地域のインフラ整備などのために約820億ユーロが投じられた。
しかし、この後も東西の生活水準の格差縮小を目指すための「連帯協定」の枠組みで支援が続けられ、
2004年までには945億ユーロが投じられ、さらに19年までに1560億ユーロが東部復興に充てられる見通しだ。
このほか1991年からは「連帯税」なども徴収されており、年間ベースでは、
阪神大震災の被災者復興支援に充てられた約8兆円を上回る約800億ユーロが支出されていることになる。
旧西独の住民からは「統一後数年ならともかく、負担があまりに長い」との嘆きも出ている。
されど20年…
支援を受けても、労働力の流出などで復興が進まず、高齢化が進む…。
独誌シュピーゲル(電子版)によると、旧東独市民のうち自分たちは
正統なドイツ国民だと思っているのは25%。多くがアイデンティティーに悩んでいる。
ドイツが抱えるのは国内の東西問題だけではない。欧州域内ではユーロ危機での
ドイツの支援の動きが遅かったことにギリシャやイタリアなど南欧諸国が不信感を募らせ、
「統一は政治的傑作だったが(東独という負担を抱えた)経済的失策だった」(伊メディア)との批判も出ている。
ソース:MSN産経ニュース 2010.9.30 19:18 (一部略)
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100930/erp1009301927005-n1.htm http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100930/erp1009301927005-n2.htm http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100930/erp1009301927005-n3.htm 関連スレ
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