銃を構えてタイミングを計り、引き金を引く――。
7月に広島県で開かれた第48回全国高校ライフル射撃競技選手権大会ビームライフル立射40発の部で優勝した。
予選3位で臨んだ決勝。一発撃つごとに、パネルに順位が示される。
10メートル離れた的のど真ん中に照準を合わせ、狙いが定まった最初の瞬間が撃つタイミング。
その「ファーストチャンス」を逃してはならないという。
初めの2発は思うようにいかなかった。銃と「対話」する。「調子はどう?」「手がぶれているよ」。
自分の世界に集中して撃っていくなかで、パネルの順位が入れ替わり、1位になった。
最後の10発目。ドッ、ドッ、ドッ。構えると、自分の心臓の高ぶる音が伝わる。
好きなバンド「BUMP OF CHICKEN」の曲が頭の中を流れる。
「♪覚悟の価値を決める場所……」。フレーズを口ずさんだ。
撃ち終わってパネルを見る。2位とわずか0・1点差だった。
言いようのない幸福感に包まれ、肩の力が抜けて号泣した。見
守ってくれた仲間が喜んでいる姿が見えた。
大会前、不調が続いた。立ち位置や構え方を見直したが、なかなか思うような結果が出ない。
「恵先輩は一生懸命がんばっていますし、大丈夫ですよ」。一緒に泣き、一緒に笑ってくれる仲間がいる。射撃で得た大切な「きずな」だ。
初めて射撃をしたのは、石和高校ライフル射撃部の入部体験の時。構え方もわからず撃った得点が10点中9点。「射撃と触れ合った感じがしました」
ひとつひとつきちんと積み重ねていかないと、結果は出ないという。
放課後、学内の射撃場で納得できるまで撃ち続ける。銃を乗せ続けて真っ赤になった手は、「誇るべき勲章」とはにかむ。
将来の夢は警察官。「人の支えになりたい」。そう話す目に、強い正義感がにじむ。
「知識だけでなく、人情もある。周囲の人が安心できるような存在になりたい」。凜(りん)とした格好良さと向上心がある。
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