>>1の続き
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ハリスムーア被告自身、メディアやネットでの過熱ぶりを意識していた形跡がある。
今年6月にはワシントン州内の動物病院に忍び込み、盗んだ現金100ドルと一緒に
こんなメモが残されていた。
「通りすがり、余分な現金有り。このお金を動物のケアのために使ってください
コルトン・ハリスムーア(通称・「裸足の泥棒」) ワシントン州カマーノ島」
侵入先で飛行機の操縦に関するサイトを閲覧していた痕跡などもあり、
インターネットを通じて自分がどのように報じられているかも知っていたとみられる。
2月には同州内の食料品店で、自らチョークでかたどった足形を残す
“パフォーマンス”までみせている。
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◆ののしり合い
「これより先に立ち入った者は撃ちます」
ハリスムーア被告の実家に続く林道には、こう手書きされた標識が
掲げられている。家ではしばしば、母親とハリスムーア被告が
ののしり合う声が響いていた。
実父が2歳のときに家出し、継父も7歳のときに死亡。ハリスムーア被告は
粗暴な言動が増え、学校でも次第に孤立していった。そして12歳のとき、
盗品を所持していたとして初めて逮捕された。
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かつて逃走中の息子について、「誇りに思う」「できるだけ遠くに逃げてほしい」
などと語っていた母親。最近は、エンターテインメント業界に詳しい弁護士と
契約を結んだと報じられている。
ハリスムーア被告をモデルとした映画製作の話が持ち上るなどしているためで、
肖像権の管理などが狙いとみられる。それは、息子を守るためなのか、
それとも単なるカネもうけの手段なのか。
ニューヨーク・タイムズによると、少年時代のハリスムーア被告は、
近所の人にピーナツバターとジャムのサンドイッチを作ってくれるよう
ねだることもあった。母親が作ってくれることのない「家庭の味」。
「『逃走』は彼の職業なんだ」。カマーノ島を管轄する郡保安官はこう述べ、
ハリスムーア被告にとっては逃げること自体が目的になっていたと分析した。
一方、ハリスムーア被告がチョークの足形を残した食料品店の関係者は、
足跡を見つけたときの印象を、「本当に逃げようとはしていない(と感じた)」と
語っている。薄幸な生い立ちを持つ19歳の少年はなぜ逃げ続けたのか。
その心を知るのは難しい。