インターネットの掲示板「2ちゃんねる」上の書き込みをめぐる名誉棄損訴訟で、被害者の代理人と
なった新潟市の弁護士が、2ちゃんねる側から「損害賠償金」を受け取ることに成功したと公表した。
2ちゃんねる側はこれまで、裁判所から支払い命令を受けても応じなかったとされる。出版物の印税
に目をつけたアイデアを「画期的」と評価する声もある。
新潟合同法律事務所(新潟市)のホームページで「取り立てに成功した」と公表したのは斎藤裕弁
護士。2ちゃんねる管理人だった西村博之氏を相手にした訴訟を東京地裁に起こし、損害賠償を被
害者に支払うよう命じる判決を勝ち取った。だが、西村氏は応じなかった。
そこで、2ちゃんねる上の書き込みをもとにした書籍「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺(おれ)
は限界かもしれない」を2008年6月に出版した新潮社側を相手に、西村氏側に支払う予定の印税を
被害者に支払うよう求めて東京地裁に提訴した。
印税の支払先は西村氏が指定した会社だったが、地裁は実際には西村氏が受け取っていると判断し、
新潮社に被害者への支払いを勧めた。新潮社は和解に応じ、被害者側は今年1月に印税の一部の
数十万円を受け取ったという。
新潮社は「著者からの振り込み指示には原則として無条件で従っている。和解の結果、支払先が
変わっただけで印税として支払う総額は変わらないが、裁判の手間ひまはかかる。賠償金の支払い
は当事者同士で解決してほしい」とコメントしている。
斎藤弁護士は「今後、他の被害者も同様に賠償金を回収することで、西村氏が名誉棄損の書き込み
をした人の情報を開示したり、書き込み自体を防ぐシステム作りをしたりするようにさせたい」と話して
いる。2ちゃんねるに絡む訴訟などを30件以上扱ってきた篠崎正巳弁護士は「関連会社と西村氏の
つながりが認められたのは画期的。手法を参考にさせてもらう」と話す。
朝日新聞は西村氏にメールで取材を申し込んでいるが、4日現在、回答は届いていない。
西村氏は、名誉棄損やプライバシー侵害の書き込みがあったとして損害賠償を命じる判決を繰り返し
受けてきたが、支払う意思がないことを表明していた。(大内奏)
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201004040223.html