EUでは議席も獲得 “ゆるい”組織と活動
インターネット上のファイル交換や海賊版CDの合法化などを主張する政党「海賊党」が、
欧州や南北アメリカ各国で次々と設立されている。主な支持層は30代以下のネット世代で、
欧州連合(EU)の議会では議席も獲得した。しかし、そうした国際的な広がりにもかかわらず、
「司令塔」は不在。従来の政党に比べ、組織・活動面での“ゆるさ”が際立っている。(大内清)
「おれたちは海賊だ!うおお…」。ドイツ海賊党の広報担当、シモン・ランゲ氏は産経新聞の
取材に対し、メールでこう“ほえた”。「既存政党はわれわれを恐れる必要がある」。昨年9月の
総選挙で国の助成対象となる得票率2%を達成しているだけに、その言葉には力がある。
◆「P」が旗印38カ国以上
海賊党は2006年、スウェーデンで設立された。主張の柱は、私的目的でのコンテンツの
コピーやファイルシェア自由化▽著作権保護の期間短縮▽ネット空間のプライバシー保護
▽製薬関連の特許制度廃止−など。これらを通じ、自由な社会を実現するという。
この年の同国総選挙では得票率1%未満だったものの、昨年6月の欧州議会選で
スウェーデンに割り当てられている18議席のうち1議席を獲得(同12月のEU新基本条約
「リスボン条約」発効に伴う定数増で2議席目獲得)。これに触発されて世界的に動きが広がり、
現在では政党として非公認のものを含め、38カ国以上で活動している。
ただ、各国海賊党を束ねる上部組織は存在しない。
スウェーデン海賊党が幹事役を務める「海賊党インターナショナル」は、あくまでも情報交換の場で、
「(各海賊党間での)資金面や人材派遣などの協力関係はない」
(オーストラリア海賊党のデビッド・クラフティ氏)。
普段の活動もボランティアによる「口コミ」がほとんどで、広範な分野で政策を訴え、
集票につなげる従来政党の組織とは一線を画す。
◆30代以下が支持母体に
にもかかわらず、海賊党が勢力を拡大しているのはなぜなのか。
「若者が大政党を信頼していないから」とランゲ氏はみている。
だが、スウェーデンでは昨年4月、著作権侵害を助長したとして
大手ファイル交換サイト「パイレート・ベイ」創業者らが有罪となった直後に
30代以下の支持者が急増。ドイツでも、ネット上の児童ポルノ取り締まり法案の
審議をきっかけに支持が伸びている。ネットの恩恵を享受してきた世代が
規制に反発した結果、同党への投票につながった格好。国防や教育といった
重要課題では目立った政策は打ち出せていない。
ネット問題に特化した単一争点政党であるとの批判に対しては、ランゲ氏も
「今後は多くの問題で政策を提示していく」と歯切れが悪い。一時のブームで終わるのか、
それとも社会運動として定着できるのか、海賊党の“羅針盤”はまだ定まっていないようだ。
http://sankei.jp.msn.com/economy/it/100114/its1001140746001-n1.htm http://sankei.jp.msn.com/economy/it/100114/its1001140746001-n1.htm