中国でマルチ商法が広がっている。CNNが入手した映像では、若い男性指導者が黒板に方程式を
書きながら新会員らに仕組みを説明し、毎月3万6000ドル(約310万円)相当の高収入が
確約されているなどと述べている。
マルチ商法としては極めて普通だが、中国独自の傾向がここに加わる。新会員らは兵舎に似た寮に
閉じ込められ、外の世界から隔離されて、高収入が確約されていると信じ込まされる。
かつて約2年間マルチ商法に関与し、現在は対策に取り組んでいるボランティアグループの関係者は、
自身の経験を基に「マルチ商法は洗脳が得意だ」と指摘した。自身を「被害者」と語る関係者は、
仕事を紹介すると親族に騙されて連れて行かれ、やはり洗脳を受けた。「最初は信じなかったが、
7日間の研修で信じるようになった」という。
中国では10年余り前にマルチ商法が非合法化されたものの、経済情勢が厳しいなか、マルチ商法は
依然衰える気配はない。今年2月には対策強化を図るため、刑法に禁止規定が追加された。
警察は時折取り締まりを実施しており、今年河北省保安市では、新会員の隔離先になっていた家屋の
強制捜査が行われた。警察は軍隊式のベッドや歯ブラシなど「経済カルト」で新会員らが生活して
いた証拠を発見し、会員らを外に連れ出した。当時の映像によると、警官が会員らの説得を試みる
一幕もあった。
マルチ商法に関する公式統計は存在しないものの、ボランティアグループの関係者は、中国全体で
1000万人以上が関与し、国内の収入格差を一層拡大させているとの見方を示した。実際に何が
行われているか理解し、マルチ商法から離脱した関係者は「就職し良い生活を送ることは非常に難し
く、人々は一夜で金を稼ぎたいという心理的要求を持っている。これが簡単に騙される理由だ」と
コメントした。
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200911300024.html