アニメ「ゼロの使い魔」「魔法少女リリカルなのは StrikerS」、ゲーム「Fate」などの人気作が
カードゲームになった「ヴァイスシュヴァルツ」。3月の発売からわずか8カ月で3000万枚を販売、
11月に秋葉原で開かれたイベントでは1500人を集める人気ぶりだ。
制作は、ブロッコリーの創業者の木谷高明さんが、1年半前に設立したばかりのブシロード。
いきなりのブレークの秘密は……。【河村成浩】
◇安心して遊べる
「ヴァイスシュヴァルツ」は、アニメやゲームなどを元に、全1200種類にも及ぶイラストが描かれた
対戦カードゲームだ。アニメやゲームの多彩な作品を、ジャンルの枠を超えて遊べるのが最大の特徴だ。
さまざまな作品のカードを集めたり、一つの作品にこだわってカードをそろえるのも
プレーヤー次第という自由度が魅力といえる。
さらに、カードゲーム初心者にも分かりやすいようシンプルなルールで、「カードに慣れていない人、
自信がない人でも安心して遊べるゲームを」というブシロード社長の木谷さんの願いが込められている。
◇故・吉田直さんとの夢
木谷さんは、キャラクターグッズ販売店「ゲーマーズ」を全国展開したブロッコリーの創業者で、
「デ・ジ・キャラット」などオリジナルキャラのヒット作を生んだ名物プロデューサー兼社長だ。
木谷さんは33歳で勤めていた「山一證券」を退職し、大学時代からの念願だったエンタメ業界での
起業に踏み切った。「海外で展開できるビジネスをやりたかった」という木谷さんは、同人誌に目を付けて
事業をスタート。続いてキャラクターグッズ、そしてカードゲームへと事業を拡大してヒット商品を生み出し、
「時代の寵児」として注目された。
だが、02年ごろからカードゲームブームが一段落してしまい、苦戦を強いられるようになり、
いったんは立て直して、07年にブロッコリーを退任。
木谷さんは「楽隠居も考えたが、もう一度カードゲームで起業を」と考え、同年5月に新会社ブシロードを設立した。
社名はライトノベル「トリニティ・ブラッド」の作者で、34歳で世を去った作家・吉田直さんと共に作ろうとして
未完に終わった作品「熱風海陸ブシロード」から付けられた。
木谷さんは「忙しさを理由にして、吉田さんに報いることができなかったという悔いがある。
ビジネスが軌道に乗れば、『ブシロード』をアニメ化したいのです」と明かした。
◇「信頼感」でアピール
木谷さんは、初心者ユーザーを視野に入れた新機軸のカードゲームを開発するため、数多くのカードゲームを
生み出した実績のある企画会社の遊宝洞(東京都新宿区)の副社長で、世界的大ヒットカードゲーム
「マジック・ザ・ギャザリング」の元アジア王者、中村聡さんに、「初心者でも分かりやすく、奥が深い」という
新たなカードゲームの開発を依頼した。中村さんは起用する作品群にすべて目を通し、「ヴァイスシュヴァルツ」を制作した。
07年12月7日、都内で記念ライブを開き、500人のファンの前で、「D.C.(ダ・カーポ) D.C.2」
「リトルバスターズ!」「魔界戦記ディスガイア」「ペルソナ3」といった複数のヒット・コンテンツを内包した
カードゲーム「ヴァイスシュヴァルツ」を発表した。
年末に大阪や名古屋などで全国8カ所で開いた説明会にも多くのファンが参加、さらに体験会や講習会と
題してイベントを開いて、カードゲームファンの心をつかんでいった。3月の発売後も毎月のように新商品を発売してイベントを開催。
月を追うごとに売り上げを伸ばしていった。木谷さんは「カードゲームは、立ち上げのプロモーションが大事。
そして何より必要なのが信頼感で、ファンは『ずっと続く』と感じてこそ付いて来てくれる」と話す。
http://mainichi.jp/enta/mantan/news/20081227mog00m200004000c.html?inb=rs