大手企業などが障害者団体向けの「低料第3種郵便物」制度を悪用してダイレクトメール
(DM)広告を格安で郵送していた問題で、大手広告会社「博報堂」(東京)が大手家電量販店
(東証1部)にこの手法を使うよう持ちかけ、約1100万通のDM広告を量販店から受注していた
ことが朝日新聞の取材で分かった。博報堂は、実際の業務は大手印刷・通販会社「ウイルコ」
(石川県白山市、東証2部)に再委託し、「管理進行料」などとしてマージンを得ていた。
正規の郵送料との差額として少なくとも約4億4千万円を浮かせたことになる。大手家電量販店は
「博報堂から『安くDMが郵送できます』『制度を使うことには何の問題もありません』と説明されたので
信じた」としており、結果的に、博報堂の関与が他社のコンプライアンス(法令順守)を甘くし、制度の
悪用を広めた形だ。家電量販店は「意図せざることとはいえ、制度本来の趣旨をゆがめることになり
認識の甘さを痛感する」としている。
これに対し、博報堂は「ウイルコから『制度を使うことに問題はない』と提案されて採用した。
福祉制度を意図的に利用しようとしたものではないが、結果として制度の趣旨を逸脱することとなり
認識が甘かった」と釈明。しかし、マージンの額については「答えられない」としている。
家電量販店と博報堂の説明によると、家電量販店は05年8月から今年2月にかけて、半年ごとに、
過去に購入実績のある顧客あてに計1100万通のDM広告を「低料第3種郵便物」の制度を使って
送った。低料第3種の制度は、障害者団体が発行する刊行物を郵送するためのもので、郵便法などに
より、刊行物の8割以上が購読されていることが適用の条件。しかし、家電量販店によると、今回は
すべてが事実上のDM広告で、郵送先は量販店の顧客だった。
低料第3種をめぐっては、これまでの朝日新聞の調べで、05年以降に全国で少なくとも約1500万通の
DM広告の発送に用いられ、不正に免れた郵便料金が少なくとも6億円を超えることが判明したが、
今回判明した分を加えると計2600万通にのぼり、正規の郵便料金との差額は少なく見積もっても
10億円を超えることになる。一方、実態調査を始めた郵便事業会社(JP日本郵便)は、すでに制度利用の
承認条件を満たしていないことが明らかになったとして1団体の承認を取り消すなどして、さらに調査を
進めている。
http://www.asahi.com/national/update/1108/TKY200811070406.html