カンボジア北西部の都市バタンバン(Battambang)の空を厚い雲が覆い始めると、建物の
屋上や居酒屋に集まった人たちがソワソワとし始める。「天候」に運命を賭けた人たちの
正念場なのだ。
雨の降らない季節は静かなバタンバンの市場周辺も、いったんモンスーンが到来し
「Phnal Tuek Phleang(雨降りの賭け)」の季節に入ると興奮した雰囲気に包まれる。
市場周辺の高い建物の屋上には、ビニール防水シートのテントが設営され、無線アンテナが
林立する。臨時の天候観測所の出現だ。屋根の上の観測係と地上の胴元や賭けの
参加者が興奮した様子で情報を交換し、掛け金をやりとりする。「一雨降れば大もうけ」の
夢がいやがうえにも膨らみ、緊張は最高潮に達する。
「この賭けに参加する人はとても多い。雲が出て空が暗くなると、賭ける人は、1万人以上に
なるかもしれない」と話すのは、賭けに参加する74歳の市民だ。トランシーバーを片手に
ゲストハウスを忙しく歩き回り、仲間の4人とともに屋上の観測情報に耳を澄ます。
賭けのルールは「特定の日に雨が降るかどうか」、「特定の時間内に、コップにどのくらいの
雨水がたまるか」など何通りもあり、最も一般的なのは、「屋上に置いた紙が、決められた
時間までに濡れるかどうか」を賭ける方法だ。
賭け金は、この地域で主に流通する隣国タイの通貨バーツで、100バーツ(約380円)から
スタートするが、天候次第では大金が飛び交うこともある。配当金は離れた街に配置された
観測者から無線で送られてくる天候状況に基づき算出されている。
この「雨降りの賭け」は他のギャンブル同様に違法行為だ。しかし、賭けはほとんどが
電話や双方向無線で行われ、警察も効果的に取り締まる方法がないという。
最初にこの賭を始めたのはバタンバンの中国商人で、暇つぶしでやっていたという。しかし、
過去10年間に新しい富裕層の趣味として人気が高まり、金銭だけでなく、土地建物や会社の
経営権までが賭けられるようになった。地元の新聞には賭けに絡んだ犯罪のニュースが
掲載されない日はなく、この賭で財産を失い、家庭内の紛争になるケースも多いという。
ソース:AFP BB News
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2267481/2022038