12月24日3時4分配信 毎日新聞
生まれて2年たつのに戸籍に登録されていない女の子がいる。
女児は母親(23)の離婚成立から226日後に誕生、離婚から
300日以内に誕生した子は「前夫の子」とする民法の規定が
あるからだ。「前夫の戸籍に」とする役所に対し、父親(24)は
「わが子は自分の戸籍に」と主張する。女児はこのままでは
保育園や学校にも通えない。健康保険が適用されないため、
父親は医療費の全額負担を強いられている。【工藤哲】
父親と母親は03年10月末に知り合い、翌月から同居を始めた。
父親はその後、母親に夫がいて離婚が成立していないと知った。
04年5月17日に離婚が成立し、同12月24日に新たに婚姻届を
提出。5日後に女児が生まれた。当時住んでいた埼玉県蕨市役所に
出生届を出したが、民法の規定を理由に受理されなかったという。
母親は今年3月に家を出たまま行方が分からなくなったため、
女児は今さいたま市内にある父親の実家で育てられている。
岩槻区役所は、女児を前夫の戸籍に入れた後で養子縁組することや、
前夫に親子関係不存在を確認する裁判を起こしてもらうことなどを
提案。しかし、父親は「自分の娘を一時的にでも他人の戸籍に
入れることは納得がいかないし、前夫とはかかわりを持ちたくない」と
話している。
区役所は「女児の将来を考えると気がかりだが、法の原則は
曲げられない」と頭を抱える。支援に当たる市民団体事務局長の
山中幸男さんは「母親は、父親と同居を始めた時点で前夫とは
接点がなく、女児が父親の子供であることは明らかだ。行政は
父親の希望通りにすべきだ」と話す。
法務省民事局は「法に基づいた一律的な運用をせざるを得ない。
要望を認めるには、国民の意識が高まり、法律を見直すなどして
対応するしかない」と話している。
◇法を見直す時期だ
▽二宮周平・立命館大法科大学院教授(家族法)の話
今の法律は、男女関係がこれほど多様化することを想定しておらず、
見直す時期に来ている。最高裁判例をもとにすれば、前夫と母親が
離婚前は同居していなかったとする上申書を父親が出せば、役所が
配慮して認めるなど、柔軟な対応ができるはずだ。子供が戸籍に
登録される権利を尊重すべきで、早急に保育園などに行けるように
しなければならない。
▽離婚を伴った親子関係 民法772条は、離婚から300日以内に
生まれた子供は、離婚前の夫の子と推定すると規定している。
1898(明治31)年に施行された民法は度々改正されてきたが、
772条は実質的に変わっていない。最高裁は69年に、離婚から
300日以内に生まれた子供でも、離婚前から夫婦としての実態が
失われていた場合、前夫の子との推定を受けないとの判断を示している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061224-00000010-mai-soci&kz=soci