【万博】愛・地球博、「弁当持ち込み禁止」に苦情殺到★3

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8オレオレ!オレだよ、名無しだよ!!
幼い頃に父が亡くなり、母は再婚もせずに俺を育ててくれた。学もなく、技術もなかった
母は、個人商店の手伝いみたいな仕事で生計を立てていた。それでも当時住んでいた
土地は、まだ人情が残っていたので、何とか母子二人で質素に暮らしていけた。

娯楽をする余裕なんてなく、日曜日は母の手作りの弁当を持って、近所の河原とかに
遊びに行っていた。給料をもらった次の日曜日には、クリームパンとコーラを買ってくれた。

ある日、母が勤め先から愛知万博のチケットを2枚もらってきた。俺は生まれて初めての
万博に興奮し、母はいつもより少しだけ豪華な弁当を作ってくれた。

愛知県館に着き、チケットを見せて入ろうとすると、係員に止められた。
弁当の持ち込みは禁止されていた。
「うまいもんやにっぽん」で一人900円ずつ払ってみそかつどんを買わ
なければいけないと言われ、帰りの電車賃くらいしか持っていなかった俺たちは、外の
ベンチで弁当を食べて帰った。電車の中で無言の母に「楽しかったよ」と言ったら、
母は「母ちゃん、バカでごめんね」と言って涙を少しこぼした。

俺は母につらい思いをさせた貧乏と無学がとことん嫌になって、一生懸命に勉強した。
新聞奨学生として大学まで進み、いっぱしの社会人になった。結婚もして、母に孫を見せて
やることもできた。

そんな母が去年の暮れに亡くなった。死ぬ前に一度だけ目を覚まし、思い出したように
「万博、ごめんね」と言った。俺は「楽しかったよ」と言おうとしたが、最後まで声にならなかった。