「縁切り」に御利益があるとされる神社やお寺で、女性の参拝客が増えている。恋愛のもつれや病気からの
解放を願う人が多いが、最近はDV(配偶者からの暴力)といった深刻な悩みも目立つ。そのほか、そりの
合わない上司や部下、教師、たばこ、自分の弱い心……。このご時世、縁を切りたいものは尽きないようだ。
京都・祇園にほど近い安井金比羅宮(京都市東山区)は、縁切り神社で知られる。4年前に比べ、縁切りの
祈祷(きとう)の数は月約30件から約50件になり、絵馬の数も日に5〜10枚から15枚ほどに増えているという。
昨年の秋季火焚(ひたき)祭で燃やした願い事を記す護摩木は3万本。同神社が舞台の小説「縁切り神社」
(田口ランディ著、01年)が増加のきっかけになったらしいが、いまも増え続ける。
鳥居肇宮司によると、最近は若い女性からDVやストーカーの悩みの相談を持ちかけられる。警察や
行政機関に相談窓口があることを知りつつ、「表ざたにしたくない」というケースが多いという。
境内につるされた絵馬を見ると−−。男女関係、病気に続いて、借金や貧乏、浪費癖といった金銭に関する
願いが多い。「上司がほかへ異動して、もっとできる人が来てほしい」といった会社関係、息子と担任の教師
などの学校関係も。実名を出したり、状況を細かく説明したりする傾向が強まっているという。
縁切り寺の瑞光寺(同市伏見区)にも毎月10件ほどの祈祷のほか、メールで相談が寄せられる。若い男女が
目立つという。川口智康住職は「現代は男女が簡単に出会えるだけに、縁切りも簡単に考える人が増えてきた」と
指摘する。「悪縁と良縁は表裏一体。本来は相手にも良い縁が来るようにお願いしなければならないんです」
縁結びで知られる京都地主神社(同市東山区)でも、縁切り祈願が増えてきた。中川平宮司は「不満や不安の
多い世の中、もっとよい縁を結びたいという気持ちが、縁切りに向かわせるのでしょう」と話している。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200501280028.html