頭蓋穿孔 - 「トレパネーション」は第三の眼を開くか

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2変態仮面φ ★
まるで夢のような話である。
しかし、そう語るハルヴォーソン氏は決してこれまで多幸な人生を送ってきたわけではない。
氏はそれまで20年来の鬱病 - "目の前にドアが固く閉ざされていた" 氏はそう表現している - に苦しみ、
精神科に通いつめ、様々な薬物療法を繰り返してきたが、いずれも氏の症状を和らげることはなかった。
そしてそんなある日、氏はバート氏に出会って「脳内血流量」理論を知ことになる。
そして1972年、アムステルダムにて、ハルヴォーソン氏は自らの手で電気ドリルを用い、頭蓋骨に
直径8mmの孔を開けたのである。

また同時期に頭蓋骨に孔を開けたジョセフ・メレン氏は、手動ドリルを使って自力でトレパネーションを行い、
その模様を彼の著書「Bore Hole」の中でこう綴っている。
「(手動ドリルでトレパネーションを終えて)頭の中にボコボコというような、泡みたいな不吉な音が聞こえた。
ドリルを引き抜いてもまだ泡の音は続いていた。まるで頭蓋骨の下を空気の泡が流れているような感覚だった。
引き抜いたドリルの先を見ると、そこには小さな頭蓋骨の欠片がこびりついていた。たったそれだけの
ことだった。」(写真は彼女の元恋人、アマンダが自力でトレパネーションしている姿。彼女は
トレパネーション普及の為に議員に2度立候補し、いずれも少数の票を得たが落選した。)

そして現在52歳になるハルヴォーソン氏は、アメリカのペンシルヴァニア州で農場を営んでいる。
氏は、今でも良い気分が持続し続け、それは、まさに至高の体験であると話している。
「トレパネーションを実際に行ったとき、こう言うと余りにも利己的なのは認めますが、この喜びを享受できる
人間は本当に限られている、と思ったんです。」


否定されるトレパネーション

しかしハルヴォーソン氏によれば、今後は専門の医師らがこうした手術を行うべきであり、もはやこうした
自力トレパネーションを行うべきではない、と話している。
しかし一方、専門家らはハルヴォーソン氏らの説を強く否定し、トレパネーションを行うことを現在でも
拒否し続けているという。
セントルイスの神経科医師ウィリアム・ランドー氏はトレパネーションをして"インチキ医療"であるとし、
「彼らの理論にはなんら科学的根拠はない」と否定している。

クリーブランド大学付属病院神経学者、神経学会論文の編集長も勤めるロバート・ダロフ氏の答えは更に
辛辣である。
「ただの嘘っぱちですね。明らかにデタラメです。まあ、気狂いですね。考える余地もありません。
それに、第一大事な頭蓋骨に孔を開けて、脳を晒すなんて危険すぎます。感染症や様々な危険が伴います。」

このように専門家らは彼らの理論、そしてトレパネーションを神聖なる不可侵領域への侵入と言ったように
強く否定し、またハルヴォーソン氏らのようなアマチュアがそうした手術を行うことを懸念しているのである。
しかし、彼らが一点だけ同意する点がある。
それは、確かにこうした頭蓋穿孔手術が、神経外科学の出発点であるという点である。
例えば事実、脳外科手術の際に、頭蓋骨に穴を開けて血圧を抑えるなどの処置を取ることは現代でも行われている。
しかし、それがトレパネーションと根本的に異なるのは、医師らはその後、骨を元に戻して穴を塞ぐのに対し、
トレパネーションにおいては穴は開け広げられたままにされるということである。
「(我々が穴を開けるのは)頭蓋骨内部にアクセスするための手段に過ぎません。」ダロフ医師はそう
説明している。(写真は中世のトレパネーション)

このように専門家らはトレパネーションについて一様に否定的である。
では本当に、頭蓋骨に穴を開けるメリットはどこにもないのだろうか。
ワシントン医科大学の神経科医のブルース・カウフマン医師は次のように語っている。
「きちんとした神経外科学者らが科学的見地からこの件について調べたところで、この手術が何らかのメリットを
示す報告はないでしょう。」

しかしまたカウフマン氏によれば、これまで数十年間に渡り、様々な医師らが実験的にトレパネーションと
類似した治療方法を行ってきたことは事実であると話している。
例えば、これまである脳疾患の治療のために、頭蓋骨の両側に穴を開けて頭蓋骨内の圧力を軽減する
方法なども行われていたという。
3変態仮面φ ★:04/12/10 22:20:48
「脳は丁度、小さな箱の中に押し込まれているような状態です。そこで医師らは両側に穴を開けて脳に
もっと大きな空間を提供しようとしたわけです。しかし結果的にはそうした方法は全て失敗に終わり、
今では完全に破棄された方法なんです。また、仮に彼らの理論が正しかったとしましょう。患者はまず
頭蓋骨に穴を開けます。しかしそこで脳を覆う筋肉にも傷がつきますね。この筋肉は硬膜と呼ばれていますが、
一枚のシャツのようなものです。そして穴を開けたまま、傷を閉じる。つまり、脳を守っているのは一枚のシャツに
過ぎません。これは余りにも危険すぎるわけです。」


トレパネーション宣教師

ハルヴォーソン氏はこうした専門家の反対もさることながら、一方では巨大な向精神薬産業がトレパネーション
普及を阻止していると指摘している。
「トレパネーションを行うことで、人は若返ったように幸福になります。従って、例えば鬱病に苦しむ人々はもう
プロザックやそのほかの向精神薬を口にしなくて済むようになるわけですね。従ってトレパネーションは、
彼ら向精神薬業界にとっては大痛手となるわけです。別にそうした業界に何ら恨みがあるわけではありません。
ただ、私が許せないのは、トレパネーションのような人々に利益をもたらすものが、無視され続けているということです。」

ハルヴォーソン氏の妻は去年三月に死亡した。
彼女は硬化症に苦しみ、その結果として様々な進行性の鬱病に苛まれていたのである。
「彼女は鬱病によって精神的に完全に破壊されていました。私と妻はその進行を食い止めるために、
医師らにトレパネーションの施術を嘆願したんです。彼女にもトレパネーションがもたらす幸福な世界を
感じさせてあげたかったんです。私と妻は繰り返し何度も何度もお願いしたんですが、結局医師はそうした
非正当的な手術を行うことを拒み続けたんです。」

こうした出来事から、ハルヴォーソン氏は更にトレパネーション普及への意志を強固なものとし、
現在はさながらトレパネーション宣教師のように精力的に活動している。
彼は上述したITAGのウェブサイトでその主張と効果を事細かに説明し、昨年はハワード・スターンショー
(米国の人気ラジオ番組)にも出演し、トレパネーションを紹介した。
(ハルヴォーソン氏はそのときの事を振り返り、「ハワードはとても協力的で、収録後は"今度来るときは、
頭に穴があいた人をもっとたくさん連れてきてくれ"と言ってくれた」と話している。)
そして現在では彼とITAGのメンバー、そして世界中の凡そ60人のトレパナーたちが協力し、医師らに
トレパネーションを行うよう、ロビー活動を行っているという。
またハルヴォーソン氏によれば、現在においてはトレパネーションを行うことは非常に簡単になりつつあると話している。

「西半球にトレパネーションを行ってくれる外科医を見つけたんです。彼ならば18歳以上で、正式な書類に
サインしさえすれば誰でもトレパネーションを施してくれます。既に現在、米国には何十人かの志望者がいるので、
今後半年のうちに更に数十人のトレパナーが誕生するでしょう。そしていつか、トレパネーションの効用を明らかにして、
アメリカの医学連合に公式発表をさせたいですね。彼らは自分たちの評判を守ることに必死ですから。
私が世間に何と言われようと、それは問題ではありません。ただ、我々は医師たちに科学者として振舞って欲しいだけです。
彼らにはトレパネーションに対して、きちんとした学術的見地からの見解を述べる義務があります。
実は彼らだってわかってるはずなんです。頭蓋骨に穴を開けることに、何らか良い効果があることをね。
結局最後には彼らは認めざるを得ないでしょう。」(写真は古代ペルーの頭蓋穿孔術を施された頭蓋骨)

このように、現在でもハルヴォーソン氏と医師らの戦いは続いている。
果たして、トレパネーションは実際に精神治療の画期的解決手段となり得るのだろうか?
あるいはそれはかつて中世の馬鹿げた絵空事を、現代のニューエイジ・アウトローが繰り返しているに過ぎないのだろうか?

あるいは、人をニルヴァーナへと誘う、唯一の抜け穴を開くのだろうか?