東京都港区の「六本木ヒルズ」で男児(6)が自動回転ドアに挟まれて死亡した事故で、
回転ドア製造販売元の「三和タジマ」(本社・東京都豊島区)が、事故防止用の
センサーが作動してからドアが停止するまでの「制動距離」を正確に把握していなかった
ことが、警視庁の調べで分かった。制動距離が分からないままセンサーなどの
安全装置を設定していたことになり、同社のずさんな安全管理が問われそうだ。
三和タジマは事故当日に開いた会見で、制動距離について「5センチ」と発表した。
しかし、翌日には「社内基準では30センチという設計だが、毎分3.2回転では
実動25センチ」と訂正した。社内基準は、事故機の原型になったオランダ製の
回転ドアをもとに決めたとしていた。
ところが、捜査1課が事故機を使って事故当時と同じ回転数で実験したところ、
制動距離は「約35センチ」になることが確認された。同社の設計部門の担当者は
任意の事情聴取に対し、「実際に測ったことはなく、ドアがどれだけ動くのか知らなかった」
と話しているという。
同社によると、回転ドアの納品前、埼玉県内の工場で実施した試運転には、
森ビルの設計担当社員を立ち会わせ、ドアの急停止などを実演した。しかし、制動距離に
ついては伝えなかったという。森ビルに渡した取り扱い説明書にも「人が飛び込もうと
したりした場合、センサーが働き、直ちにドアを停止させます」といった記載があるだけだ。
ヒルズ内の防犯カメラの画像から、亡くなった男児が駆け込んだ際、ドアと外枠との間は
約50センチだったと推定される。制動距離が約35センチだったとすると、センサーが
働いても、すき間は約15センチしか残らなかったことになる。
ある大手ドアメーカーの幹部は「森ビルの担当者にはドアが『すぐに止まった』ように
見えたのではないか。だが、制動距離を伝えないというのは理解できない」と指摘している。
http://www.asahi.com/national/update/0718/002.html