ロシア3大ネットの一つ民放・独立テレビ(NTV)は9日、人気討論番組「言論の自由」などの
放送を打ち切ると発表した。同番組は、クレムリン(露大統領府)に批判的なリベラル派の
政治家らが出演する唯一の討論番組だった。この措置により、主要テレビ局は完全にプーチン
政権の管理下に置かれたといえる。
打ち切りは今月発足した新経営陣が決めた。うち8日に第1副社長に就任したガブリロワ氏は、
90年代にサンクトペテルブルクで当時、第1副市長だったプーチン大統領の下で渉外担当を
しており、大統領の影響下にあるとされる。
経済・政治情勢の報道番組で、石油大手ユコスの社会慈善活動について評価していた
「個人出資」の放送も打ち切りとなった。元NTVの人気司会者で、週間誌モスクワ・ニュースの
キセリョフ編集長は「番組打ち切りにより、シロビキ(露政府の軍・治安出身者)がいかにユコスを
攻撃しているかなどについて報道する者はいなくなった」と語った。
一方、プーチン大統領を支持する若者団体「一緒に歩む人々」は、7、8の両日、同紙など
同政権やチェチェン攻撃に批判的な新聞に対し、「ウソの報道をしている」として、各社前で
抗議ビラを配った。ロシアの新聞はテレビより影響力が劣るが、大統領府が新聞統制に向けて
動き出したとの見方も出ている。
NTVは、6月始め、別の人気報道番組「ナメードニ(ついこのあいだ)」の司会者パルフョーノフ氏を
解雇し、同番組を打ち切った。同氏が、カタールで殺害されたチェチェン独立派指導者、
ヤンダルビエフ氏の未亡人のインタビューの放送を予定し、直前に局の上層部からストップがかかった
ことを公表したためで、同氏は「(政府の)情報当局からの圧力で放送中止となった」と語っていた。
NTVは、ソ連崩壊後にできたロシアで初めての民放テレビで、メディア王と呼ばれたグシンスキー
氏が経営した。00年にプーチン大統領がとった新興財閥追放政策で、同氏は国外に逃亡、NTVは
01年4月、事実上国営の天然ガス大手「ガスプロム」が買収した。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20040711k0000m030047000c.html