削除依頼しました。このスレはageないで下さい
3 :
糞糞マンコ(口だけ厨房:2001/08/02(木) 22:13
うわ〜ん
4 :
ななしさん:2001/08/02(木) 22:14
でも、交換専用なら交換以外で落としちゃ駄目。
5 :
糞糞マンコ(口だけ厨房:2001/08/02(木) 22:14
, ――_____ __、
| 、ヽ|^^| ̄ ヽ
/) , ―_Y―-ヽ_/__
/ヽ/ /^ \___
ヽ / / ヽ\
/ / / | | | | | | | || ヽ |
/ /| /从ノナナヽ| |ナナ|| //
/ / // ヾ / , ┬、 ,-、ゞ/Y|V|/
|/| | | | | |-'│ |-i | //V| |
| |从 | || ||゛- ' _ '`"ノ| || |
|从|从 ト、 /从 |V
/|| ̄ ヾヽ| T ̄^ヾ^// \
/ ‖| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| \
/ | あのね | |
| \ |あれはねコピペなの| |
| ヽヽ|AA職人さんに感謝なの |〃 −
\ ミ(  ̄) ( ̄ ) =/
6 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:14
前スレはネタっ子が多かったでつ
7 :
########## 1000 ! ###########:2001/08/02(木) 22:15
########## 1000 ! ###########
8 :
1000!!:2001/08/02(木) 22:16
さっさと900までレス付けろや
MXユーザーさん達よぉ
9 :
糞糞マンコ(口だけ厨房 :2001/08/02(木) 22:17
IMって、みんな返事してるの?漏れなんてほとんど読まないけど。
交換交換って、ウルサいんだもの。まあ、多分この人種だけど↓
/ ̄ ̄ ̄ヽ、
| 」」」」」」」」)
|(6ーB-B| / ̄ ̄ ̄ ̄\
|:::|ヽ .」 | 彡彡ノ((((^^)))))
ミ (=)/ 彡ミ ー○---○ |
/ ̄ \;;;;;;;;/ ̄\ 彡(6 ( 。。) |)
| | || 彡( ( (曲) )
| | ガイナックス / ̄ ̄ ̄\)\_,,,,,,,,,,,,,,,ノ))/ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ / ̄ ̄ ̄\
/ ̄ ̄ ̄ ̄\ ( ((((((^))))))´ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ(# ノノノノノノノノノ |___A_|
( 人____).|ミ/ _=_| ノノノノメノ十ノノ( ノー◎-◎|ノ 川 ノ ー||
|ミ/ ー◎-◎-)(6ー[¬]-[¬] ノー□-□-|リ(彡ミ) つ`|ノ 川ー●-●-|
(6 (_ _) )| 、」 |\ゝ∴)`_´(∴)ゝ彡彡) ∀ノ彡(6 (・・) |
_|/ ∴ ノ 3 ノ \ (ー)/ .|ゝ、__ イゝノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)/| (ー) |
(__/\_____ノ \__/ |__| )| ノ三三三三|:::::::::\___/\
/ (__‖ ||)ノ| トレジャー命 | | ヒカ碁命 |||ミ(6-⊂⊃⊂⊃:::::::::::::葉鍵命:::|/
[]__ | | どれみ命ヽ | | | |||ミ| ・・ |::::::::::::::::::::::::::::::::/
|] | |______)|三|□|三三(__)_______|)彡ゝ (◇)..ノヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
\_.(__)三三三[国]) |::::::::::::::::::/ \::::::::::::::Y:::::| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|三三[■])
/(_)\::::::::::::::::::::| |:::::::|:::::| ̄ ̄ ̄ ̄|:::::::::::|(E) GGX全国1位 (ヨ)::::::\::::\
|Sofmap..|:::::::::/:::::/ .|:::::::|:::::| さくらや |:::::::::::|:::::|________|´):::::::/:::/
|____|::::::/:::::/ |:::::::|::::.| |:::::::::::|::::::/___.へへ__\/;;;;/;;;/
(___[)__[) (_(__|____|___)(___(_|_)__)_)__)
10 :
糞糞マンコ(口だけ厨房:2001/08/02(木) 22:19
/ ̄ ̄ ̄ヽ、
| 」」」」」」」」)
|(6ー●-●| / ̄ ̄ ̄ ̄\
|:::|ヽ .」 | 彡彡ノ((((^^)))))
ミ (=)/ 彡ミ ー●---● |
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( 人____).|ミ/ _=_| ノノノノメノ十ノノ( ノー▲-▲|ノ 川 ノ ー||
|ミ/ ー●-●-)(6ー[¬]-[¬] ノー■-■-|リ(彡ミ) つ`|ノ 川ー●-●-|
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11 :
:2001/08/02(木) 22:21
DLせいぜい3Kの子が 422Mもっていこうとしてるよ。
UPは2K制限かけてやがるし....
どうしたものか....
12 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:22
知るかボケ
13 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:22
14 :
糞糞マンコ(口だけ厨房:2001/08/02(木) 22:23
15 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:23
もうMXの話題は語り尽くされた
16 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:24
話題はなくても愚痴はつきないけどな……。
17 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:26
18 :
猫:2001/08/02(木) 22:26
落としたアプリにウィリスが入っていたんですが
どうでうくぁ?
19 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:27
偽者失せろ
20 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:28
偽者失せろ
21 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:28
22 :
:2001/08/02(木) 22:28
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
23 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:29
age
24 :
:2001/08/02(木) 22:29
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
25 :
:2001/08/02(木) 22:29
26 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:30
贋作失せろ
27 :
:2001/08/02(木) 22:30
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
28 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:30
ったく。俺の偽者が出るってことは俺様も人気ものだな(藁
29 :
:2001/08/02(木) 22:31
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
30 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:31
これは前からおれのもんだ
31 :
ナナシサン:2001/08/02(木) 22:31
32 :
:2001/08/02(木) 22:32
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
33 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:32
ライセンス取得しようと思ってちゃんと送金したのに
34 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:32
みんな〜俺もう氏ぬよ〜。
35 :
:2001/08/02(木) 22:33
>>18 nekoとかいう奴を見かけたことあるけど君か?
36 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:33
元タックソとは俺様のことだ。ぐわははは
37 :
:2001/08/02(木) 22:33
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
38 :
猫:2001/08/02(木) 22:33
ちがうよ、ちがうよ
つ
ま
ん
な
い
40 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:34
偽者失せろ
41 :
:2001/08/02(木) 22:34
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
42 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:35
偽者も糞も存在感の無いHNなんだからいいじゃねえか
43 :
:2001/08/02(木) 22:35
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
氏のう・・。
痔膿・・。
46 :
:2001/08/02(木) 22:36
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ
存在感ないから氏のう・・。
48 :
ナナシサソ:2001/08/02(木) 22:37
偽者うせろ
こ
ん
な
ひ
ど
い
ス
レ
見
た
こ
と
な
い
50 :
:2001/08/02(木) 22:38
この時の人々の想像は極めて非科学的なものであった。敵は空に重油を撒いて火を点けたのだろうという人もあった。かなり科学的な頭を持っている人でも、得体の知れぬこの爆弾を、特殊爆弾とは思っても、原子爆弾だと知っていた者は無かったと思う。
ひたぶるに黒き雨降り人ら言ふ敵は重油を撒きしならむと
私たちは黒い雨に濡れながら、爆風で吹き飛んだり、建物の下敷きになっている機密図面や書類の回収に全力を傾注した。そんな物が十日も経たないうちに、反古紙にもならぬ日が来ようとは、誰にも夢に思わなかった。
爆風に散乱したる工作図黒き雨のなかしき探(もと)めたり
広島で被爆した閑間重松(しずましげまつ)は、妻・シゲ子と姪・矢須子の3人で暮らしている。気がかりなのは姪の結婚のことである。縁談があっても、矢須子は被爆しているといううわさのため、話はまとまらない。そこで重松は、矢須子が爆心地から離れたところにいたことを証明するため、彼女の日記や自身の被爆日記をつづりだす。
しかし、矢須子の縁談も決まりかけたころ、彼女に原爆病の症状が出てしまうのであった。
初め「新潮」に『姪の結婚』という題で連載されたが、途中から『黒い雨』と改題された。その被爆における悲惨な状況は目をおおわせるものがある。
黒い雨は黒い雨、誤解は誤解、卑屈は卑屈」
重松は、まだぷりぷりしながら矢須子の日記を読みはじめた。八月九日に避難先の古市の仮宿所で、八月六日の空襲の日のことを思い出しながら書いた記録の続きである。
もう日が暮れかけていると思っていたが、家に帰って来てから漸く気がついた。空に立ちこめる黒煙のためにほの暗いことが分った。おじさんとおばさんは、私を探しに出かけようとしているところであった。おじさんは横川駅で被爆したとのことで左の頬に傷があった。家は傾いていたが、おばさんは怪我もしなかった。私はおじさんに云われて、自分が泥の跳ねのようなものを浴びているのを知った。白い半袖ブラウスも同じように汚れ、その汚れているところだけ布地が傷んでいた。鏡を見ると、防空頭巾で隠されていたところ以外は同じような色で斑点になっているのが分った。私は鏡の中の自分の顔を見ながら、能島さんの誘導で闇船に乗りこんで、もうそのときには黒い雨の夕立が来ていたことを思い出した。午前十時ごろではなかったかと思う。雷鳴を轟かせる黒雲が市街の方から押し寄せて、降って来るのは万年筆ぐらいな太さの棒のような雨であった。真夏だというのに、ぞくぞくするほど寒かった。雨はすぐ止んだ。私は放心状態になっていたらしい。夕立が降りだしたのはトラックに乗っていたときからではなかったと思ったりした。私の知覚はずいぶん性能が下落していたに違いなかった。黒い夕立は私の知覚をはぐらかすように、さっと来てさっと去
千九百四十五年八月六日。
人類が魂を売った日。
その日、広島は悪魔の遊び場になった。
家は燃え、人は溶け蒸発し白壁に残る影。
気化した人間は天に昇り雲となり
黒い雨となって降りそそいだ。
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
明治31(1898)年〜平成5(1993)年。
本名井伏満壽二。深安郡加茂村(現・福山市)生まれ。小説家。
『ジョン萬次郎漂流記』で直木賞を、
『本日休診』その他により読売文学賞を、
『黒い雨』で野間文芸賞を受賞。
昭和41(1966)年文化勲章受賞。
広島県名誉県民。書画、焼物の作品も多い。
写真は荻窪の自宅近くを妻の節代さんと散策する姿。
八月六日の午前八時十五分。
事実において、天は裂け、
地は燃え、人は死んだ