「ベトナム民間人虐殺の報道が、戦友たちの名誉を失墜させた」と主張し、
同新聞社を糾弾するデモと集会を開いたのだ。
だが、集会後も怒りの収まらない一部の軍人たちが暴挙に出た。
角材などを振り回しながら新聞社の社屋に突撃。窓ガラスを割り、
デスクやパソコンなど編集部内の物を次々に破壊していったのだ。
韓国人ジャーナリストがいう。
「彼らの狙いは新聞社の制作機能停止でした。パソコンなどだけでなく、
輪転機を破壊し電力供給線も切断。新聞や雑誌の印刷を停止させた。
さらに新聞を運ぶ貨物車を炎上させたり、新聞代金の領収書の束を
数千枚も積み上げ火をつけたりと暴徒と化していた。
彼らは“ベトコン(南ベトナム解放民族戦線の兵士のこと)を民間人だという
ハンギョレ新聞社は赤(共産主義者)だ!”という垂れ幕を掲げていた。
殺した相手は民間人ではなく、ベトコンだったと主張し虐殺を正当化したかったのでしょう。
そこで、新聞社を自由主義の敵と見なし、暴挙に出たのです」
その場にいた新聞社の記者や従業員たちも暴行を受け、10人以上が負傷。
社屋は彼らによって半日間占拠され、同社の幹部らは監禁された。
6000人余りの警察が投入されたことで、ようやく事態は沈静化。
その後、暴力行為で4人が逮捕された。
この暴動の主体となった団体は、主にベトナム戦争の退役軍人で作られる
『大韓民国枯葉剤後遺症戦友会』(以下、枯葉剤戦友会)だった。
この枯葉剤戦友会は朴槿恵(パク・クネ)大統領への絶対的な支持を表明している
有力な政治団体だ。
2011年に開かれた「枯葉剤戦友会14次定期総会」には、与野党の多くの政治家が
自ら出席を打診した。
しかし枯葉剤戦友会から拒否され、唯一、招待された政治家が朴氏だった。