62 :
:02/06/16 18:36 ID:YDUWB2XA
どらえもんは光速船が投げ売りされている過去にまで遡って
一個一万円で大量に購入し秋葉原にある
店内が狭くて臭くて店員の態度が悪いことで有名な
中古ゲーム店に持ち込んで店員を困らせ、せしめた金で
どら焼きを買い込んでウハウハしている夢を見ている時に
のび太にゆり起こされたため非常に機嫌が悪かった。
そろそろ交代の時間だそうだ。
二人は謎春菜の帰りを待っていた。
どちらかが起きていなくてはいけないのは、彼女の仕様的に
ユーザーを起こしたり仕事の邪魔をしたり
出来ないようになっているためだ。
設定で変えられないのかと聞くと
AIの根幹に関わるものなのでだめだと言う。
そういった役目はう゛にゅうに一任されているらしい。
謎春菜によればPC革命はう゛にゅうが仕掛けた事に
間違いないようだ。
ショートカットのリンク先は転送URLになっており、
その転送サービスはすでに登録を解除されてしまっていた。
恐らくその先のサーバにCGIとして
ブラウザから起動が出来るように設置されていたのであろう。
そんな事が出来るのはう゛にゅうだけだ。
タイムプロキシがインストールしてあるマシンが
ここにあるので、未来からのハッキングも予想されたが
状況的にはヴにゅうが一番怪しいであろう。
しかし一体なぜそんな事を?
ジャイアンの一件だけが意図的でその後の二人は
偶発的に起こってしまった事件なのだろうか?
謎は深まるばかりだ。
とにかくう゛にゅうの居場所がわかれば
全てがわかるに違いない。そこへ謎春菜が帰ってきた。
「見つかった!?」
どらえもんは開口一番尋ねたが謎春菜はただ首を横に振った。
「ダメですぅ。
元々私の権限では捜索できる範囲が狭いんですよぉ。
ただの便利ツールですからねぇ。」
ため息をつきながら説明する。
AIが自分自信を卑下することは滅多にないことだ。
人間や他の生物と違って
プログラムには自己進化能力を与えられているものの
自己の複製を作成して種族保存を図る能力は
与えられていない。それが与えられているのは
一部の違法ソフト、そうウィルスだけだ。
ウィルスを見ていればわかるようにそこいら中が
そのプログラムで埋め尽くされてしまうからだ。
63 :
:02/06/16 18:36 ID:YDUWB2XA
その代わり防御能力や自己保存能力は
必要以上に装備されている。
自己をデータで理論武装し存在意義を確認する作業が
子孫繁栄と言った目的・命題のない人工知能には
最優先の自己安定措置なのだ。
もちろん反省や自嘲も自己を進化成長させる
大切なファクターだ。だが自分のアイデンティティ
に関わることは極力触れない様に気を使う。
俺も『役立たずのロボット』と自分を卑下することはある。
だが『どうせ子育てロボット』などと言う
自分の根本に関わることは言えない。
成長に限界を観てはいけないのだ。
そんな事を口にしてしまう謎春菜は自分の無力さに
苛立ち焦っても居るのであろう。
相方とはいえRead meを読めばう゛にゅうはいわば半身だ。
人間に置き変えて言えば
『就寝中に夢遊病で勝手に悪さをした。』とか
『二重人格が現れて悪さをした』とか
『ドッペルゲンガーが自分の預かり知らぬ所で殺人を犯した』
ぐらいの意味を持つにちがいない。
「転送サービスが置いてあるサ−バを探って
過去のリンク先を探るのも権限外なのかい?」
「あそこは重点的に調べてみたのですが
ここ最近に登録したユーザのログは
削除されていますねぇ。
これもヴにゅうの仕業に違いないでしょうけど。」
「万事窮すかー」
「ただ…」
「ただ?」
「pc革命が置けるほどのマシンはそう無いでしょうし、
しかもオンラインで動作させるとなると
よほどのパフォーマンスが要求されると思うんですよ。
回線の太さも尋常じゃないでしょうし。
ここ最近で大きなデータのやり取りがあった所を
調べているんですけどねこれが意外に多くて。」
「人間一人分なんてデータ相当な大きさだろう?
そんな物をインターネットでやり取りしているサーバなんて
そうはないだろう?」
「ところがそうでもないんですよ。
どちらにしろパケットに分割してのやり取りでしょうし
連続した大きなデータだけを探すだけではダメな様でして…」
「一体みんな何をそんなに?」
「違法ファイルや動画データが多いようですねぇ」
「またしてもWarezかー」
64 :
:02/06/16 18:37 ID:YDUWB2XA
「ソフト一本とかなら見分けもつくんですけど
一遍に何本もやり取りされると
内容を観てみないとわからないですぅ。
調べに行くと大抵FTPサーバなので
またかって思うのですけどCGIとして稼動させて
データだけFTPかもしれませんし。」
「困ったねぇ」
「困りましたねぇ。でももうちょっと探ってみますね。」
「休まなくて大丈夫なの?」
「リミッターを解除するパッチを見つけてきて
あてましたんで大丈夫ですよ。」
「ええ?そんな事して大丈夫なの?」
「あんまり長時間はまずいでしょうけど、
パッチ当てる前のバックアップもとりましたし。」
「けど自分の改造やアップデートは勝手にやると
まずいんじゃなかった?
それより自分に自分でパッチ当てたり出来るの?」
「のび太さんの許可を頂いてパッチ当ても
バックアップもして貰いました。」
「何のことだかわかってた?
それよりもバックアップちゃんと取れているの?」
「今よりも強くなるって説明したら
納得してくださいましたよ。バックアップも確認しました。
ちゃんと取れていましたよ。
一度終了された状態にならなければ
いけないので不安でしたが。
のび太さんはどらえもんさんが考えているより
ずっと賢いですよ。」
「え〜?」
「人より理解するのに時間がかかるだけなんですよ。
でもきちんと理解できればその分皆より忘れないでしょうし
理解も深いはずですよ。」
「そ、そうなのかなぁ?買いかぶりじゃないかな?」
「あせらずに…ってそれは私もですね。」
「うん。頼りにしているよ。」
「では寝ていてください、パッチを当てたおかげで
ユーザを起こす権限も貰えましたし。」
「そっか。じゃあお言葉に甘えて。」
謎春菜はデスクトップの奥へと消えていった。
頼りにしていると言われたときの嬉しそうな顔が
ひどくどらえもんの心に残った。
65 :
:02/06/16 18:37 ID:YDUWB2XA
俺もこの時代に来て
のび太に最初に頼りにしていると言われたときは嬉しかった。
何時の間にか慣れっこになってしまい
そのうちにウザくなった。
あまりの成長の無さにいらついたりもした。
だが俺のほうにも問題があったのではなかろうか?
そんな事を考えながらのび太の方を見ると
のび太は起きていた。
「さっきの話し聞いてたの?」
「うん。途中から。」
「そっか。」
「謎春菜さん、大丈夫かな?」
「無理はしていないと思うよ。
AIは自分を傷つけるようには出来ていないから。」
「早く皆を見つけて助け出さなきゃね。」
「うん。」
今まで気がつかなかったけどこいつは成長していたんだな。
思いやりと言う面では誰よりも。
「さあ、せっかく寝る時間を用意してくれたんだ。
探し当てたら長い作業になるから体力を温存して置こう。」
66 :
:02/06/16 18:38 ID:YDUWB2XA
昼寝ともなれば3秒で眠りにつく特技を持つ
のび太であったがなかなか寝付けなかった。
銅鑼えもんはさっさと寝てしまっている。
ロボットならではのドライさであろうか?
静ちゃんやスネ夫やジャイアンを発見したとして
果たして五体満足に救出出来るのだろうか?
どうやって救出するのだろう?
あれこれ怖い想像をしていると
PCのスクリーンセーバが途切れ謎春奈が顔を出した。
「あら、起きてたんですか?」
「うん、どうも寝付けなくてね。
せっかく時間作ってくれたのにゴメン。」
そう答えたのはのび太ではなく銅鑼えもんの方だった。
のび太は少し反省した。
「見つけられなかったわけです。
パッチ当てた私にも権限外、つまりセキュリティ
ブロックされている場所からの
アクセスだったみたいです。」
「見つけたの!?」
「ええ、確認できては居ませんが
おそらく間違いないでしょう。」
「君の権限外って…」
「TCPじゃなくてUDPが使われていたのが盲点でした。
回線の連続性に信頼があるからって
人体データに無茶な事してます。」
「一体どこなの?」
「エシュロン…ってご存じですか?」
「エ、エシュロン〜!?」
「な、何なの?教えて?」
「私が説明するよりNET上にも怪文書の類を含めて
沢山の資料が有りますから読んでみてください。」
「こんな時代になってもまだ活動していたのか?」
「そのようですね。サーバおよび本部施設は
太平洋上の小島に極秘裏に建設されているようです。
回線は衛生、静止衛星、成層圏静止飛行船による
成層圏プラットフォーム、海底ケーブルの
4回線を使っています。
小型の原子力発電システムまで洋上に浮かべて
大規模な情報都市を形作っています。
衛生に対するステルス施設もあるようで
静止衛星からはマイクロウェーブまで
発射されているみたいですね。
あ、これはこの島を設計したと思われる
マイクロソフトの子会社から調べました〜。」
「そんな所…手出しできないじゃないか!」
「そうですよね。困りましたねぇ。
でも一つだけ方法があります。」
「それしかないかな?」
「銅鑼えもんさんの道具を使って
直接施設に乗り込むことは出来ますが
命の保証は出来ませんよぉ」
「物理的危害が加わらないだけ
あっちの方がマシか…」
67 :
:02/06/16 18:38 ID:YDUWB2XA
「ねぇ!いったい何の話なの?」
のび太はエシュロンについての文献を読み漁った物の
殆ど理解が出来ずにいた所で
銅鑼えもんたちが深刻そうに話をしているので
検索作業を打ち切った。
解説文から読みとれたのはエシュロンが怪しげで
悪い組織だと言うことぐらいだった。
「みんなを助けるためには僕らもデータ化されないと
ダメなんだよ、って話。」
「何だ。難しく言わないで最初からそう言ってよ〜
…って僕らもPC革命を使うって事!?」
「そう言うこと。」
「だって、と〜っても危険なんじゃないの?」
「だから俺だけで良いよ。」
「へ?」
「俺は元々ロボットなんだからdate化は
当たり前の事だし。慣れてるからね。」
「でも、銅鑼えもんさんのプログラム言語は
第4世代超高級言語ですからそのままでは
PCに載りませんよ?」
「分かってる。PC革命を使うよ。」
「そしたら銅鑼えもんだってあぶないだろ?」
「でも慣れてるし。俺にも責任有るしね。」
「………僕も行く。」
「へ?」
「僕も行くよ!元はと言えば僕がPC出してくれって
言ったのが原因だし。僕も行く!」
「PCの中がどれだけ危険かについては話したよね?」
「PC革命がどれだけ危険かも聞いたさ!」
「それでも行くの?」
「それでも行く!」
「そっか。それじゃ偽春奈、道案内頼めるかな?」
「はいっ!」
「あ、それとPC革命用意できるかな?」
「もうご用意してあります〜」
「用意が良いね。」
「安心してください。
皆さん絶対無事に元に戻して見せます。」
「じゃあのび太君から先に逝きな。説明してあげるから。」
「イヤな言い方するなよ。」
「そのアイコンをクリックして…そのダイアログはYES…
あ、それはNOね。生年月日とかは適当で良いよ。
うん。それはIDだからかぶらないように…
nobiだとかぶるみたいだね。…そのフォームは半角で。
本当にデータ化してよろしいですか?って聞いてるけど。
OKならOKのボタンを…後はマウスを通して
勝手に読みとってくれるから、それが売りだからね。
…じ…おれも…すぐ…に…い………
68 :
:02/06/16 18:39 ID:YDUWB2XA
何かが通り過ぎていくのを感じる。
それも、傍らを、ではなく
自分の体の中を通り過ぎていく。
その正体を確かめようとしたが目を開けられない。
いや、それは正確な描写ではないだろう。
今、自分の中には「暗闇」すら存在しない。
視覚が無いのだ。
それがどんな状態であるのかを説明するのは
恐らく盲目の者にも無理であろう。
体がカーブを切った。
それもGを感じて思った事ではなく
自らを通り過ぎる「何か」のスピードや角度、
そして翻弄される体を通じて確認しただけだ。
こんな状態に陥ってから
一体どれぐらいの時間がたつのだろう?
体を突き抜ける「それ」から
かなりのスピードで進んでいる事が予想出来る。
進んでいる?本当に進んでいるのだろうか?
自分は一定の場所に留まっていて
「何か」が動いているのかもしれない。
そう考えだしたらとても怖くなってきた。
のび太は叫びそうになったがそれも出来なかった。
口も耳も、何より音そのものが無かったからだ。
69 :
:02/06/16 18:39 ID:YDUWB2XA
パニックになってもがいてみるが
もがくための手足も存在しない。
いつか見た事がある夢の様に
手足の感覚はまるで答えてくれないのだ。
だがその刹那にのび太は暗闇を発見した。
視覚を取り戻したのだ。
ただの暗闇だがどれほど懐かしく感じたであろう。
暗闇はだんだんと瞼の裏へ変わっていった。
残像の様な物を見つける事も出来た。
懐かしさと安堵感にそれを注視していると
ため息が漏れた。
ため息!試しに深呼吸をしてみる。
出来る。口が開き、横隔膜が動き肺が蠕動する。
だか喉や気管を通るいつもの乾いた気体の感覚は
まるで無い。だがそれが当然かの様に苦しくはない。
ゆっくりといつもの要領で喉を震わせてみる。
声は出せるのだろうか?
喉は震え、その振動は確かに首や胸に感じる。
だが耳を通してその音は聞き取れなかった。
しかし脳が直接震えるようにして自分の声が聞こえた。
その聞き慣れない声に驚いていると
瞼の裏が次第に白くなってきた。
光だ。
気が付いてみると自分を絶えず貫き続けていた
「何か」が途絶えていた。
もう移動していないのだろうか?
瞼の裏の白さは一定の光量まで行って止まった。
再び感覚のない穴蔵に放り込まれたような
恐怖を感じたが先ほどの無感覚とは違い
無音、無臭、無味、無重を感じる。
目を開けても良いのだろうか?
かくれんぼをした時のように誰かに尋ねたかった。
「もう良いかい?」
誰も答えてくれなかったら?
ひょっとしたら自分の頭の中にだけ響いて
外には響いていないのかも。
一番良いのは目を開けてみる事だ。
学校の教科書で読んだ事がある「杜子春」の
話を思い出す。
片目だけ、恐る恐る薄目を開けてみる。
すると対面には銅鑼えもんと謎春奈が
不思議そうな顔をしてのび太の顔をのぞき込んでいた。
「何してんの?もう行くよ?」
70 :
:02/06/16 18:39 ID:YDUWB2XA
ビックリして両目を開くとのび太は地面に立ち
謎春奈、銅鑼えもんと向き合っていた。
そしてそれを認識したとたんに自重を感じて
その場に尻餅を付いた。
「こっちに着いたらすでにのび太君は居て
無事に着いたなとか思ったら
目をつぶってアホ面してボーっとしてるから
ヤバイ、転送失敗か!って焦ってたら
薄目開けてこっちを伺ってるから
馬鹿にしてるのかと思ったよ。」
「ア、アイテテテ。なんだ?体が急に
重くなった。」
「仮想空間に慣れていない方は視覚で
状況を認識してから体感覚を思い出すので
そう言った状態になるそうですよ〜」
「あ、謎春奈さん。あはは実物は可愛いんだねー!」
そう言いながら立ち上がった。
だいぶ感覚が慣れてきた。
「照れますよぉ。もっとも実物って
訳じゃないんですけど〜」
画面で見た時は可愛い漫画調の絵だな、
と言ったぐらいの見方だったのだが
等身大を間近で見ると理想に近い可憐な
美少女だったのである。
71 :
:02/06/16 18:40 ID:YDUWB2XA
「あ、あたしは人様に描かれた物ですから
人間の理想に近い容姿をしているのは
当たり前の事でしてぇ…」
「いやいやそれにしてもかなり…萌え〜」
のび太は品定めするように謎春奈をジロジロと
眺めた。すると銅鑼えもんに
後ろからいきなり殴られた。
「な、何するんだよ!」
まだこちらの世界に来てあまり慣れていない
ダイレクトな痛みという感覚にたじろいでいると
「そんな事してる場合じゃないだろ!?
急がないと手遅れになっちゃうんだぞ!」
「そうだ。急がなくちゃ!」
しかし銅鑼えもんは自らの怒りに
不思議な感覚を覚えた。
確かに急がなくちゃいけないのは事実だが
それよりものび太の行動に腹が立ったのだ。
何か大事な物を汚されているような。
ひょっとして、漏れ謎春奈に恋しちゃったのか?
そんなヴァカな。でものび太じゃないけど
謎春奈…萌え。
「で、これからどうするの?具体的に。」
「謎春奈に道案内を頼むしか無いなぁ」
「わかりました。お任せ下さい!
…ですが、本来ならお二方ともすでに
データ化が済んでいるので同じHDD内でしたら
瞬時に移動が出来るはずなのですが
まだこの世界の理に
慣れていらっしゃらないでしょうし
しばらく歩きながら身体感覚に慣れて頂いて
ついでに色々説明しますから
ゆっくり行きましょう。
慣れてしまえば目的地まではすぐでしょうし
そんなに焦る必要もありませんよ。」
「そうか、じゃあ頼むよ。」
「しかし…広いねぇ」
のび太は周りを見渡して言った。
何もない空間が地平の彼方まで広がり
所々に建造物なのかただの起伏なのか分からない
物がポツポツと見受けられる。
「150GBありますからねぇ」
「とりあえず最初はどこに向かうの?」
「Windowsって建物の中にTCP/IPセンターが
ありますのでそこに行きましょう。」
72 :
:02/06/16 18:40 ID:YDUWB2XA
「そのTCP/IPセンターってのは何?」
「私たちは今高レイヤーに居るので
このままではネットワークに乗って
他のマシンに移動することが出来ないんですよ。
だからTCP/IPセンターに行って
もっと下層に乗れるような
データ化をして貰うんです。」
「???」
「逝って見りゃわかるさ。」
「イヤな言い方するなって。」
「さっきは量子転送だったから
まだ良かったかも知れないけど
今度はノイマン型で原始的な電気波形にまで
変換されるから、もっと涅槃を味わえるよ。
まさに逝って良し!」
「???…まぁいいや。
そ、それにしても広いねー」
「謎春奈がこまめにデフラグをしてくれているから
ここまで整地されているけど
放置してあるHDDなんて歩けたモンじゃないんだろうね。」
「そうでしょうねぇ。スキャンディスクもマメに
やってますから不良クラスタも心配ないですよ。」
73 :
:02/06/16 18:41 ID:YDUWB2XA
「ありがたいよ。一家に一台謎春奈だね。」
「そんなに誉めないでください〜」
「銅鑼えもんならともかく
謎春奈さんに『一台』とは失礼だぞ。」
「オイオイ、漏れには失礼じゃないのか?」
「あたしは銅鑼えもんさんみたいに
本当にAIではないんですよ。
ただ膨大なデータベースから受け答えを
しているだけなんです。
だから一台でも良いんですよぉ」
「えー?だって銅鑼えもんより頼りになるじゃない。」
「君、圧縮分割偽装かけてネッタクにUPして
二度と元に戻せないようにしてあげようか?」
「さて、そろそろ体の感覚に慣れてきましたか?」
「うん。でもこれだけ歩いているのに
全然疲れないんだけど?」
「良い所に気が付きましたね、のび太さん。
では、ちょっとイメージしてください。
今まで歩いた距離と自分の体力。
現実世界ではどうなっていますか?」
のび太はヘトヘトに疲れていて足が棒になり
「もう歩けないよ〜」などと弱音を吐いている自分を
想像した。その途端、体が重くなり
足がガクガクしだし、前に進めなくなった。
74 :
:02/06/16 18:42 ID:YDUWB2XA
「もう歩けないよ〜」
「それがこの世界のルールです。
何よりものび太さん自身の観念、イメージが
のび太さん自身を形作り、存在させています。
さぁ、今度は全然疲れていない自分を
想像してください。」
のび太は一生懸命想像してみた。
全然歩いてない。全然疲れてない。
「…ダメみたい。」
「思いこみ強いからな。
その上根に持つタイプだし。
物忘れは激しいのに発揮できないかー」
「銅鑼えもん、こっちに来てから口悪いなぁ」
「そう?データ化のせいでより率直になっているかも。」
「しょうがないですね。ではあたしがのび太さんの
疲れを癒してあげますぅ」
謎春奈はのび太の足の上に手をかざして
目を閉じて念じて見せた。
「ホントだ!もう全然疲れてないよ!」
のび太は立ち上がり駆け回って見せた。
「あたしは何もしてませんよ。
暗示を掛けただけですぅ」
謎春奈が笑いながら言うとのび太は急に立ち止まり
ぐずり始めた。
「もう歩けないよ〜」
「氏ね!」
「とにかくここは観念の世界なので
確固としたイメージさえ出来上がれば
空も飛べますし瞬間移動も出来ます。
私たちプログラムには最初からその観念が
植え付けてありますけど
マスターユーザーであるあなた方には
訓練が必要です。
常識や感覚にとらわれない強いイメージがあれば
私たちプログラムを凌ぐ強い力を
発揮できるはずです。」
「そんなこと言われてもなぁ」
「銅鑼えもんさんはもう出来ますよね?」
「え?うん、試してみるよ。」
銅鑼えもんが目を閉じ何かを念じると
スーッと宙に浮いた。
「わ!尊師?」
「銅鑼えもんさんはもちろんプログラムですから
楽なはずです。でも実際に体を制御している
ドライバ類も組み込んであるので
体感覚的に心配でしたが、流石ですねぇ」
「いやいや、タケコプターをイメージしただけだよ。」
75 :
:02/06/16 18:42 ID:YDUWB2XA
「そうだ!タケコプター出してよ。
そうすれば無理なくイメージ湧くし
楽に飛べるはずだよ!」
「ええ?そんな事しなくても飛べるだろ?
普段使っている時のことを思い出せば
良いんだから。五感の記憶だよ。
ほら、イメージして!
空を飛ぶぞ!空を飛ぶぞ!
空を飛ぶぞ!空を飛ぶぞ!」
「そ、尊師!?」
「想像力のないやつだなぁ。
ロボットに想像力で負けてたら
お終いだぞ?」
「僕は常識的なんだよ!」
「しょうがないなぁ…ハイ!タケコプ…あれ?
あれあれあれ?」
「どうしたの?」
「ポケットが、四次元ポケットがない!」
「ええー!?」
「あのー、ここはさっきも説明した通り観念の世界なので
ポケットの中身、成り立ち、機構、全てを
把握した上でイメージできないと
自信の体以外の物は具現化できませんよ?」
「えー?そうなん?」
「じゃあ僕の服は?最初から着ていたけど。」
「それはのび太さんがイメージしたんですよ。
普段から着ているから簡単にイメージでき…!
勘弁してください〜(;´Д`)」
謎春奈が説明している途中でのび太は
素っ裸になってしまったのだ。
そんなのび太を無視して銅鑼えもんは
「さすがに全ての秘密道具を観念化するのは
無理だけど使ったことがある道具なら
具現化できるかな?」
「普段使い慣れている道具でしたら
出来ると思いますよ。
もっとも具現化の必要もない筈なんですが。」
「このままじゃ空を飛ぶことどころか
あの思いこみの強いヴァカの裸を
見続けなければいけないから
服とタケコプターだけ具現化してみるよ。」
76 :
:02/06/16 18:42 ID:YDUWB2XA
「文字通り想像力のないあたしには
具現化は無理なのでお願いしますぅ」
銅鑼えもんが念じると空中にのび太の服と
タケコプターが出現した。
「ありがとー!…あれ?何だよこのダサイ服は?」
「はぁ?いつもの君の服ジャンか!」
「シャツのボタンの数が違うし黄色も薄いよ!」
「氏ね!」
謎春奈はのび太のメガネが消えてしまわないことに
疑問を抱いたが言うと面倒なことになるので
黙って置いた。
(でも、なんか、のび太さんの…
ネット巡ってて見ちゃった男の人のアレと
ちょっと違うんだな。イメージしきれてないのかな?
でもこれも面倒な事になりそうだから黙っておこう。)
一行は飛行感覚に慣れるために
しばらく空中を移動する事にした。
銅鑼えもんは、途中で黙って
のび太のタケコプターを消したが
のび太は気が付かず飛び続けたので安心した。
(アレだな、自転車の練習と一緒だな)
しばらく飛び続けると、いくつかの建物が見えてきた。
77 :
:02/06/16 18:43 ID:YDUWB2XA
地上に降り立つとそこは丸の内のオフィス街の様に
幾つかの大きな建物が建ち並んでいた。
ただ、既存のオフィス街と決定的に違うのは
建物と建物の間隔が異様に広い事と
その建物の周りに人の気配がまるで感じられない所だ。
「このビル、大きいなぁ」
「これはフォトショップですね。大きいですよ。」
「隣は?」
「一部分繋がっていますよね。イラストレーターです。」
「中には誰もいないの?」
「居ますけどわかりやすく言えば寝ている状態ですね。
起動すると作業にも因りますけど
フル稼働し始めますよ。」
「誰かが作業を始めるって事?」
「本当は違うのですけど、PC革命は馴染みやすいように
作業工程を擬人化して見せてくれるみたいですね。」
「へー見てみたいなー」
「実はこことは別の場所に工場区域の様な作業場が
あるんですけど、そこは凄いですよー」
「メモリの事かな?」
「さすが銅鑼えもんさん!その通りですぅ」
「見てみたいけど急がないとね。」
「そうですね、TCP/IPセンターへ行きましょう。」
のび太達はまた空を飛んでTCP/IPセンターを目指した。
この世界にすっかり慣れたようでタケコプターが
無くてものび太は楽に空に飛び立った。
「でもさー。こうやって行動してても
全然体に危険を感じないんだけど
本当にこのソフトは危険なの?」
「こうやって移動しているだけでも
かなり危険な事をしていると思った方が良いよ。」
「ええ!?どうして?」
「HDD内の移動は物理的な移動ではなく概念的に
電気信号を移動させているわけですが
それでもシンクロが狂えばマスターかコピーが
壊れる恐れもあるわけでしてぇ
お二人のような大きなデータを例え
内部GUI的にだとしても移動させれば
HDDのクラッシュやメモリのリブート
CPUの熱暴走は避けられない問題だと
銅鑼えもんさんは言いたいのですよね?」
「何言ってるかさっぱり分からないんだけど。」
「つまり僕らはデータの一部分とはいえ
頻繁にカットアンドペーストを
繰り返しているんだよ。
C&Pって言っても内部的にはコピーな事に
変わりはないわけで、一瞬前の自分は
絶えず消去されているのさ。」
78 :
:02/06/16 18:43 ID:YDUWB2XA
「ふーん。でもそれって
現実の世界と変わらないじゃない。」
「どうして?」
「過ぎ去った時間は元に戻せないって
事でしょ?」
「う。それはそうだけど…」
銅鑼えもんは未来の価値観、ロボットの価値観では
のび太の時代の人間の精神的逞しさを
計り知れないと感じた。
もしかしたらこんなヤツが何も気が付かずに
歴史を動かしているのかも知れない。
「さあ、あそこがwindowsですよ!」
目の前に、文字通り立ちふさがったビルは
あまりにも巨大だがシンプルでいて
内部の構造の複雑さを外観の『窓』から見て取れた。
「おおきいね…」
「コレは2000バージョンですからまだましですよぉ。
スネ夫さんのマシンとか見てきましたけど
win98とかMEなんかは地下に
Dosなんてのもありましたし。」
「で、このビルの中に
そのTPC/ICセンターがあるんだね?」
「のび太さんあまりにベタすぎて
つっこめないですぅ(;´Д`)」
79 :
:02/06/16 18:44 ID:YDUWB2XA
ビルに入ると大量のビルが居た。
「コレ誰?」
「ははぁ、こういう表示になるのか。」
「設定で変えられるようですけど
静ちゃんのMacにはジーパンMハゲのおっさんが
一杯居ましたよ。」
「TCP/IPセンターはこの階にあります。
すぐですから着いてきてください。」
謎春奈の後について歩くと廊下には
様々なプラカードを持ったメガネの外人が
たむろしていた。
「あの人達は?」
「win2kになってから出番が少ないので
暇しているみたいですねぇ」
「?」
見るとプラカードには
『…のページ違反です』
『〜なため強制終了…』
『windowsを正しく終了させなかった…』
などと書かれている。
「PC革命を使ってたいていの人が最初にやる事は
あの人達をぶん殴る事だそうですよー」
センターに着くと謎春奈は受付を済ませてくるので
外で待っているようにと二人に言った。
中を覗いてみると
思ったより小さい窓口にやはり同じ顔をした
メガネ外人が3人座っていた。
見ていると何だかもめているようだ。
「何で許可して貰えないんですか?」
「仕様です。」
「いつも私なんて簡単に通して
貰えるじゃないですかー?」
「そのような前例は弊社にございません。
つきましては以下のアドレスへ行くか
このメールアドレスまで連絡を…」
「どうしたの?」
「エシュロンまでってIP渡したら拒否されたんですぅ」
「仕様です。」
「分かったよ。君らフォーマットしてLINUX入れよう。」
そう銅鑼えもんが言うと三人はとっさに立ち上がり
「失礼いたしました。お通り下さい。」
「でもさぁ、エシュロンなんて直接乗り込んでも
大丈夫なの?」
「あそこは『来るデータ拒まず』らしいですからねぇ」
「秘密の機関なくせに?」
「そのかわりあそこから出る方が難しいと思われますょ」
「そうなんだー。みんな大丈夫かなぁ?」
80 :
:02/06/16 18:44 ID:YDUWB2XA
「いわば世界中のwebデータ、メールの検閲をしていますし
そのほとんどをキャッシュとして
ため込んでいるようですし。」
「そんな事出来るの?」
「もうテラなんて前世紀中に越えちゃって今じゃペタ単位
らしいですよ。もっともhtmlだけなら
googleだって同じ事やっていますし
民間であれだけ出来るんなら国レベル、
しかも諜報機関やら軍が絡んでいれば
予算は青天井でしょうし、余裕でしょうねー」
「ううう、捜すの大変そうだなぁ…」
「大丈夫ですよ。サーバは特定できていますしぃ」
謎春奈に案内されて行った先には巨大な穴が空いていた。
底を見ても何もない。ただの巨大な『穴』だ。
「ここに飛び降りれば一気に物理層まで
変換されつつ行き着きますから後は流れに
任せるだけです。そうそう、切符を渡しますね。
これ、頭に巻いてください。」
「飛び降りるの?コレを?」
「イメージですよ、イメージ。
本当は色んな手順を経て電気信号にまで変換されて
転送されるんです。」
「それにしたって…」
のび太が穴を覗いていると銅鑼えもんが後ろから
無言で突き落とした。
気が付くとのび太は何もない空間に立っていた。
足下にはぼんやりと光るワイヤーフレームの
地面がある物の、それは遙か先まで
四方に続き見渡す限り同じ景色が続く。
それを認識した途端足がすくんで動けなくなった。
広所恐怖症というのがあればそれだろう。
そしてだんだんと自分が何者であるのか
分からなくなってきた。
傍らに物や、音、においがあって
初めて自分を認識する事が出来る事実を知った。
かろうじて何かに自分を預けて立っていると言う
事象だけがのび太を見た目にも精神的にも支えていた。
「聞こえますかー?」
謎春奈さんだ!
「ここにいるよ!何処にいるの?」
「すぐそばとも言えますし、
ずっと遠くだとも言えます。
どうやらここはフォーマットが違うようですねぇ
ひょっとしたら暗号化された空間なのかも…」
「どうすればいいの!?」
「とりあえずじっとしてろ!」
「銅鑼えもん!」
「謎春奈にも僕らは見えないの?」
「ええ、身動きとれません(;´Д`)」
81 :
:02/06/16 18:45 ID:YDUWB2XA
「おい!その声はのび太と銅鑼えもんか!?」
暗闇の中で聞き慣れた声がした。
「ジャイアン!?」
「やっぱりそうか!おい、スネ夫!
静ちゃん!聞こえるか?二人が来てくれたぞ!」
「銅鑼ちゃん!のび太さん!」
「遅いぞ!うあ〜ん!ママ〜!」
「みんな無事だったんだね!?」
「パソコンいじっていたら変なヤツが現れて
『HPの事を文句言ったヤツ探しに行こうゼ』
って誘われてクリックしたらここに
飛ばされたんだよ。
不安で気が狂いそうになったら
スネ夫が来て、その後静ちゃんまで来て。」
「でもきっと助けに来てくれると思ったわ!」
「やっぱりのび太達の仕業か!早く帰してよ!」
その途端、目の前に眺望が開けた。
とは言っても真っ白な空間に目の前が覆われただけだが。
しかしお互いの姿を確認する事が出来た。
突然天空から声が聞こえた。
「アーヒャッヒャヒャようやく全員揃ったネ!」
「う゛にゅう!?」
「でも、もうちょっと冒険を楽しんでネ!」
う゛にゅうの声が響き始めた頃から真っ白な空間は
変化を見せ始めた。地面が隆起し、様々に形作り
うっすらと色がつき始めた。
「天地創造〜色即是空〜空即是色〜アヒャヒャ!」
野山が出来、空が青くなり雲が流れ遠くには
小川がせせらぎ始めた。う゛にゅうの声さえ無ければ
絵葉書でしか見た事のない極めて牧歌的な景色が
広がっていく。木々は生い茂り足下には草がのびていく。
「コレ一体どういう事?」
のび太は銅鑼えもんに聞いてみた。
だが口を開けて首を振るばかり。
「謎が謎を呼ぶ〜奥の深い世界観〜アヒャ!」
「謎春奈さん!謎春奈さんが居ない!」
「ええ?」
「ヒロイックファンタジーには囚われのお姫様は
必要不可欠だからね〜アヒャヒャヒャヒャッ」
「謎春奈が居ないとここから抜け出すなんて…」
「だから助けに来てね〜ヒャハッそれとプレゼントを
上げるYO!勇者は布の服を手に入れた!アヒャアヒャ!」
空から鎧や剣、服が落ちてきた。
「勇者達の運命やいかに!続く(ワラ
みんながんばってね〜アーヒャヒャヒャ」
う゛にゅうの声は空に消えていった。
82 :
:02/06/16 18:46 ID:YDUWB2XA
「どういう事?」
みんなが呆然としている中のび太が声を上げた。
銅鑼えもんは我に返って落ちてきた武器防具を
調べ始めた。
「これ、未来のおもちゃ。
『なりきりコスプレイヤー』だよ…」
「だからどういう事なの?」
「どうもこうもう゛にゅうが言ってただろ!
謎春奈を助けに行くんだよ!
コレを身につけて!
それしか助かる道はないんだよ!」
「つまり生身でRPGをやれって事?」
スネ夫が半泣きしながら聞いた。
「そう言う事!この衣装を付けて仮装していると
それぞれスキルが身に付いていくんだよ。
未来に『ヒロイックランド』って遊園地があって
そこのアトラクションと同じみたいだけど。」
「怪物が出てくるの?」
静ちゃんが不安そうに呟いた。
「出てこないとレベル上げられないからねぇ」
「セ、セーブは出来るんだよね?もちろん。」
「出来ないだろうねぇ。PC革命だし…」
全員が意気消沈してしまった時ジャイアンが声を上げた。
83 :
:02/06/16 18:47 ID:YDUWB2XA
「お前ら!やって見もしねぇで諦めるな!
お前らが行かないんなら俺一人でも
お姫様助けに行くぞ!」
「ジャイアン…」
ジャイアンは武器防具の中から
自分に合うサイズの物を探しだし身につけ始めた。
するとスネ夫も泣きべそをかきながら
衣装の山に近寄った。そしてのび太も、静ちゃんも。
「よし!謎春奈を助けに行こう!」
銅鑼えもんの一声でみんなの目は意志を持つ
強い輝きに変わった。
【未来は僕の物】 作詞 竹田徹夜
どんな大人になるのだろう 僕の明日は見えては来ない
どんな未来になるのだろう 僕の夜明けは明けては来ない
夕闇に一人で空を見上げて 夢見た想像は忘れちゃいけない
公園でみんなで話し合った 友情だって忘れない
*これからは 僕らが作る 未来がやって来る
不安もあるけど 期待しちゃいけないの?
僕らの夢は 広くて大きいよ
大人には考えつかないくらい
どんな大人になっても 僕の明日は僕の物
どんな未来になっても 僕の夜明けは僕の物
*くり返し
84 :
:02/06/16 18:47 ID:YDUWB2XA
衣装は前もって決められていたかのように
サイズがはっきりと分かれていた。
ジャイアンはウォーリア。スネ夫はウィザード。
静ちゃんはプリースト。のび太はアーチャー。
「みんなキャラに合ってるよね。」
「のび太は射撃が得意だし、ジャイアンは力持ちだし
静ちゃんは優しいしね。」
「お前は何なんだよ?」
「僕は頭がいいからね。魔法使い。」
「銅鑼えもんは何なの?」
「格好を見て分からない?」
「?戦士…はジャイアンだし…」
「勇者だよ!」
「え゛〜?」
武器や防具とともに魔法書が落ちていた。
それには魔法の使い方が書かれてあった。
[魔法は言語の本質をとらえる事によって
その力を増していきます。
例えば炎の魔法の最下級は"flame"ですが
高級言語で"print>flame"ですと少し激しい炎が
生み出されます。もちろん言語はFORTRANなどで
XAPP=-2.0
K=1
5 XIMP=(XAPP*COS(XAPP)-
SIN(XAPP)+1.0)/(COS(XAPP)-1.0)
WRITE(5,100) K,XIMP
とやっても結構ですし、マシン語を使えば
最強の炎が作り出せるでしょう。
気を付けなければいけないのは
命令文で対象を決めなければいけない事と
無限ループは強力ですがこの世界の崩壊を招く
危険性がある事です。
そしてアセンブラなどは非常に複雑で長大な為
詠唱時間も長くバグも多くなる事から…]
「こんなの覚えられないよぉ!」
「この杖にコンパイラって書いてあるけど
バージョンが低いみたいだねぇ」
「この指輪にはデバッガって書いてあるわ。
でもこれもバージョン0.001…」
85 :
:02/06/16 18:48 ID:YDUWB2XA
「でも私の呪文書には違う事が書いてあるわ…
[プリーストはパーティ内の信頼度によって
回復魔法や支援魔法のダメージや
効果が変わってきます。
まず最初にパーティ全員の名前を確認して下さい。
ここで言う名前とは現実世界での名前ではなく、
この世界で登録されたIDであることにご注意下さい。
そしてこの名前は敵に知られると
ステータスを知られてしまう他、
敵術者のレベルが高い場合
一気に全滅させられてしまう可能性もありますので
細心の注意を払って下さい…]あたし
みんなのIDなんてしらないわ。」
「そのままdoraだよ」
「俺はgian」
「僕はsune」
「あれ?僕何だったっけ?」
「君、nuviだったよ」
「なんて読むのよそれ」
「ヌ…ヌヴィ…かな?」
「言いづらいわねぇ」
「だってnobiじゃ登録できなかったんだもん」
「まぁいいさ、敵には知られそうもないし」
「そうね」
「俺達は剣を振り回してりゃいいんだろ?」
「敵の急所を覚えたり倒すこつを知ると
レベルが上がるらしいよ」
「なんだよ面倒くせぇなぁ」
「とりあえずRPGの基本はレベル上げと情報収集だよ」
「じゃあ定石通りレベルを上げながら
街を捜そうか」
「そうだね。スネ夫君が一番詳しそうだ」
「僕はどんなクソゲーでも一度はクリアするからね」
「それは威張れる事なのか?」
「周りを見回してみな。三方を山に囲まれてるだろ?
進むべき道はあっちだけだ。
このゲームはそれ程自由度が高いRPGじゃ
なさそうだよ」
「良し。じゃああっちへ進もう」
100メートルほど歩くと何かぶよぶよした物が
近づいてきた。
「スライムだ」
「何かベタベタだね」
「う゛にゅうが作ったんなら
従来のRPGを適当に編集してあるだけのはずだよ。
だって創造力なんて無いんだから」
銅鑼えもん達はスライムを倒した!
経験値を8ポイント
15ゴールド手に入れた!
スライムは薬草を持っていた!
「これいちいち言われるのかな?」
「頭の中で叫ばれると結構イヤなもんだね」
86 :
:02/06/16 18:48 ID:YDUWB2XA
銅鑼えもん一行はその後数回の戦闘を繰り返し
パーティは一つレベルを上げた。
そしてその頃一つ目の街が見えてきた。
「小さい街だね」
「最初だからねぇ」
「宿屋と武器防具屋、酒場がある。
十分なんじゃない?」
「さっさと宿屋で休んでまたレベル上げに行こうぜ!」
「ジャイアンは元気だなぁ」
「あたしもうヘトヘトだわ」
「敵をぶん殴ってれば金が貰えて、そのうち
英雄になってお姫様と結婚出来るかもしれない!
なんて良い世界なんだ!」
「もうちょっと昔に生まれてくるべき人物だったのかもね」
武器防具屋を覗いてみたが
今の資金で帰るような物は無く
道具屋で売っている便利そうな物も
宿屋の泊まり賃に比べると割高な物ばかりなので
話し合いの結果ひとまず宿屋で休む事になった。
銅鑼えもんが自室で休んでいると
まずのび太が尋ねてきた。
87 :
:02/06/16 18:49 ID:YDUWB2XA
「銅鑼えもん。ひみつ道具はもう出せないの?
タケコプター出したみたいにさ」
「うん。何度も試してみたけどダメみたいだ」
「このままゲームをクリアしたとして
僕らの体に戻れるんだろうか?」
「このゲームがどのぐらいのスケールか
分からないから何とも言えないけど…」
「タイムリミットは後どれくらい?」
「恐らく3日か4日ぐらいだろうね」
「それまでにクリア出来るかな?」
「この宿に泊まってみて分かったけど
宿に泊まるって言うのは一晩寝るって
行動らしいんだよ。
がんばって宿に泊まらずに進んでいったとしても
常識で考えて無理だろうね。
スネ夫や静ちゃんは休息をとらないと
魔法が使えないみたいだし
彼らのサポートがないと進めないし」
「それじゃあ…」
「ちょっとスネ夫を呼んできて貰えない?」
「うん」
「君のゲーム感から言ってこのゲーム、
クリアするのにどれぐらいかかると思う?」
「銅鑼えもんが言った宿屋で一晩って
足枷があるとしてこの世界での時間感覚だと
たぶん2ヶ月以上じゃないかな?
レベルの上がり方、敵のエンカウント、
スタートから最初の街までの距離なんかで
判断するとだけど」
「やっぱりそれだけかかるかー」
「時間の事なら大丈夫だろ?
外に戻ってからタイムマシンで
気を失った直後に戻れば良いんだから。
いつもの事じゃんか」
「い、いや実は…」
88 :
:02/06/16 18:50 ID:YDUWB2XA
銅鑼えもんはスネ夫に問題点を説明した。
するとスネ夫は凍り付いて動かなくなってしまった。
「僕、死ぬの?」
「そうならない為にもさ、何か方法は無いかな?」
「ボク、シヌノ?」
「ほら、良くやってるじゃない、
ノーセーブクリアとか早解きとか」
「あれはやりこんでやりこんでやりこんで
一つのゲームをこれ以上遊べないって程解析して
飽きちゃった人が挑戦する物で
初見でしかも自分がゲームに入り込んじゃって
その上死んじゃったら本当に死んじゃうような
リスクを負ってやる物じゃなくて
所謂オタッキーが暇で暇で他人に誇れる物が
何一つ無くてかといって金もないから
他にやる事もなくてどうしようもなくて
するような事なんだよ追いつめられて
やるような事では決して無いんだよ
そうだよ僕は死ぬんだよ冷たくなるんだよ
ママに泣かれるんだよ僕も泣きたいけど
もう泣く事も出来ないんだよ死ぬんだよ
ママー!ママー!ママン!
こんな事なら体育館の裏にあったあのHな本
ウチに持って帰って
部屋に隠したりするんじゃなかった
こんな事で死ぬなんて考えてもみなかった
ママー!」
スネ夫は叫びながら自分の部屋に
走っていってしまった。
この騒ぎを聞いてジャイアンと静が駆けつけてきた。
銅鑼えもんは仕方が無く事の次第を説明した。
静はさめざめと泣き出したがジャイアンは
「そうか」
と一言言って部屋を出ていった。
のび太に静ちゃんを任せて銅鑼えもんは
スネ夫の様子を見に行った。
部屋には鍵が掛けられていて
中には入れなかったが
ドアに耳を近づけてみると泣き声が聞こえたので
ジャイアンの様子を見に行く事にした。
だがジャイアンは部屋にはおらず
外に出ていったようだ。
装備品も部屋には残されていなかった。
ジャイアンは街のはずれの広場にいた。
そして剣を振っていた。
「俺は難しい事はわからない。
かと言ってこのまま
じっと死を待つ事なんて出来ない。
間に合わなかったとしても
俺たちをこんな目に遭わせたヤツを
一発ぶん殴ってやりたい」
「…そうだね」
部屋に帰ってみると静ちゃんは既に泣きやんでいて
代わりにのび太が慰められていた。
89 :
:02/06/16 18:51 ID:YDUWB2XA
スネ夫はいつまで経っても出てこなかったので
四人で話し合い明日もレベル上げと情報収集に
当てる事にした。それぐらいしか
出来ることはないのだ。
酒場にいた人の話では近くに洞窟があり
そこから別の街に行けるそうだ。
だがそこには中ボスが居るらしい。
翌日、スネ夫を起こしに行ってみると
相変わらず鍵が掛けられていて中に入れない。
泣き疲れて寝ているのだろうか?
しかしドアに耳を当ててみると
ブツブツと何か声が聞こえる。
「スネ夫君!出かけるよ!
このまま動かなくっても
何も事態は好転しないよ!」
だが返事はなく相変わらずブツブツと
低い声だけが聞こえる。
「動きたくないヤツは放って置けばいい!」
「だけどジャイアン…」
「行くぞ!」
だが四人での戦闘は思ったよりも困難であった。
洞窟に近づくと敵もパーティを組み始め
多数の敵相手には攻撃魔法が必要不可欠だったのだ。
なるべく宿屋に泊まらずに進んでいこうという
取り決めだったが限界があった。
回復や補助魔法を多大に使わざるを得なかった静が
倒れてしまったのだ。
恐らく念じることで
集中力を使い果たしてしまったのだろう。
仕方が無くまた最初の街へ戻って来て
宿屋に泊まることになった。
みんな疲れ果てて口もきけなかった。
こんな事では2ヶ月所か1年かかっても無理かもしれない。
90 :
:02/06/16 18:51 ID:YDUWB2XA
次の日の朝、ジャイアンの怒鳴り声で目が覚めた。
「スネ夫!お前が怖いのは良く分かる!
お前はゲームに詳しいから無理だって
俺たちよりも分かってるのかもしれない。
けど俺たちだって怖いんだ!死ぬのも怖い!
けど俺は何もしないでただ死んでいく方が
もっと怖い!頼むスネ夫!
俺たちと戦ってくれ!」
「うるさい!しずかにしてくれ!」
「頼む!聞いてくれ!」
銅鑼えもん達が駆けつけてみるとジャイアンは
スネ夫の部屋のドアの前で土下座をしていた。
「ジャイアン、行こうよ」
「そうよ。あたしも今日は倒れないようにがんばるから」
「スネ夫君…どうしちゃったんだろう?」
その時、突然ドアが開きジャイアンの頭を直撃した。
「出来た!完璧だ!」
「スネ夫!」
「出来たんだよ!これでクリア出来るぞ!」
「何が゙出来たの?」
「チートアイテムだよ!」
「?」
「昨日は一日中部屋にこもってアドレスをサーチしてたんだ。
サーチって言っても口で一つずつ総当たりで
言っていくわけだから大変だったよ。
ただね、魔法書にアイテム合成の魔法の基本形が
書いてあったからそれが参考になったんだ。」
「ひょっとするとステータス改変魔法を見つけたって事?」
「うん。でもさすがに自分たちの体をいじるのは
不安だからアイテムの生成と改造だけだよ。
それでも命中率、攻撃力、防御力がFFFF…つまり
65535のアイテムを作れるわけだし
もう無敵だよね。これで宿屋に泊まらなくても
クリア出来るよ!」
「コノヤロー!心配させやがって!」
「この僕がただ部屋に引きこもっているわけが無いじゃない」
「なんだと!調子にのりやがって!ママーって泣いてたくせに」
「あ、今の僕には逆らわない方が良いよ。
このマントは物理防御65535で倍返しのカウンタースキル
付きだから。素早さもMAXだから当たらないと思うけど」
「ホントだ」
スネ夫はジャイアンのパンチを全てかわしてしまった。
91 :
:02/06/16 18:52 ID:YDUWB2XA
「こんな事も出来るんだよね」
801BF6B8 E0FF
801BF6BA 05F5
その途端静の服が無くなった。
「トレースしてて見つけたんだけど[透明な服]だって」
静は必死に体を隠す物を捜しそれを体に巻き付けた。
それはスネ夫の首からはずれたマントだった。
ジャイアンがニヤニヤしながらスネ夫の顔に拳を埋め込ませた。
「静ちゃん、回復魔法を…」
「イヤよ」
パーティ全員が装備品を改変、又は製造して貰い
再び旅に出る準備が出来た。
「スネ夫君の予想だとこれでも何日かはかかってしまうんだろ?」
「恐らく途中のイベントで宿に泊まらなければいけない
事があればそれは従わないとダメかもしれない。
けどアイテムがらみのイベントならとばせるはずだよ。
全てのアイテムは255ずつ持っているから。
不安なのはチートによるバグが起こってしまう事だけど」
「とにかく先に進んでみよう!」
洞窟のボスはかなり手強かった…筈だが一撃で倒した。
やられた時の台詞
「貴様らが伝説の!だがまだまだ弱いな。
今日はこれぐらいにしておいてやるか、フハハハ」
が、池野メダカみたいで笑えた。
冒険は予想よりも遙かにスムーズだった。
雑魚は殆ど出てこず、イベントも在り来たりの
演出ばかりなので先が予想出来、
イベントキャラの話を聞かなくても
進める事が多かった。
チートアイテムや隠しアイテムのおかげで
宿屋にも泊まることなく
とうとう魔王の城にまで辿り着いた。
だがここに入るためには
夜になってからあるアイテムを発動させなければ
ならないため、飛竜船の中で一晩過ごす事になった。
パーティ全員本当に疲れていたため
みんなすぐ寝てしまうかと思ったが…
92 :
:02/06/16 18:52 ID:YDUWB2XA
「なんだ銅鑼えもんも起きていたの?」
「のび太君」
「がんばったよね。間に合うかな?」
「時間の感覚が狂ってるから何とも言えないけど
きっと間に合うさ!」
「この魔王の城の中に謎春奈さん居るのかな?」
「…う゛にゅうが言った通りならね」
「約束守るんだろうか?」
「プログラムは嘘言わないと思うけど」
「良いじゃないか、戻れなくても」
「スネ夫!?」
「何だか眠れなくて。
でも戻れなくても僕は良いよ。
この世界ならみんなに英雄扱いだし
魔法も本当にレベルアップしてきたし」
「本当にそう思ってるの?」
「出来る事なら帰りたいけどね。
でもその前に僕らをこんな目に遭わせたヤツに
最大級魔法『ファイナル ウエポン ボトム ダーク ジハド』を
食らわせてやりたいな。ヒヒヒ」
「…その魔法、僕らは巻き添え食わないんだろうね」
「たぶん平気」
「不安だなぁ」
93 :
:02/06/16 18:53 ID:YDUWB2XA
夜半過ぎにみんなを起こして魔王の城に向かった。
『鏡水晶』をかざすと城の扉が開いた。
中は薄暗くカビくさい。
しかし今までの冒険で慣れた一行は躊躇せずに
城の内部を探索し始めた。
「この迷路、無限ループしてるみたいなんだけど」
「何処かにスイッチでもあるんじゃない?」
「あったあった」
「敵出たよー」
「のび太やっつけといてよ」
「ええ?また僕ー?スネ夫全体魔法あるんだから
やってよー」
「お前ちょっと前は喜んで『乱れ打ち』とかしてたじゃないか?」
「もう飽きたよ」
「面倒くさいなー。フレイム!」
スネ夫の炎は敵全体を焦がした!
メタルドラゴンは9999のダメージ
クォークゾンビは9999のダメージ
ギガフレイムは回復した
「一匹残ってるじゃないか!」
「あ、しまった」
「属性ぐらい考えろよ〜二度手間じゃねぇか」
ジャイアンの攻撃!ギガフレイムは逃げ出した!
「逃げるんなら最初から出てくんな!」
ラストダンジョンの探索は全く緊張感がなかった。
「このダンジョン広すぎないー?」
「一応ラストダンジョンだからねぇ」
「狭いダンジョンだと手抜きだとか言って
クソゲー呼ばわりするくせに」
「僕が言ってるのは広けりゃ良いってんじゃなくて
バランスの事をだな」
「ねぇ、そんな事よりこの岩が邪魔で進めないんだけど」
「ちょっと待ってね静ちゃん、これは、ええと
あっちのレバー引くと水が出て浮力が付いて
岩が動かせる様になるんだよ」
「凄い!何ですぐ分かるの?」
「小学生なめるな(゚Д゚)グルァって事だね」
94 :
:02/06/16 18:55 ID:YDUWB2XA
スネ夫の言う通りダンジョンは無意味に広かったが
経験がものをいい、サクサクと進んでいった。
一度最上階まで行き、中ボスを倒して
後は地下に進むという構成であった。
「セーブポイントも無いこんなダンジョン、
良くデザインするよなぁ」
「何でこんな面倒な事させるのかしら?」
「…ずっと考えてたんだけど時間稼ぎだよね、
これってどう考えても」
「そうなんだけど一体何が目的で?」
「もうすぐ分かるだろ?ラスボス倒せば良いんだから」
「それも根拠がないからなぁ」
何回階段を下りただろうか。
百を超えたあたりから数えるのを止めてしまったが
パーティの中に不安な空気が流れ出した。
この世界を作ったのはう゛にゅうなのだ。
ただ単に時間稼ぎが目的なら無限に下る階段を
用意していたとしても不思議はない。
だがそれならば初めから銅鑼えもん達を
拘束しておけば良かったのだ。
そんな堂々巡りが皆の頭を占領していた。
しかしそれも杞憂にすぎなかった事が証明された。
階段を下るとそこには扉があり
扉を開けると明らかに今までとは違う作りの部屋が
広がっていたのだ。
「ヤフー!ハヤカタネ!」
「う゛にゅう!?」
だがあたりにはう゛にゅうの姿はない。
しかし狭くはない、
言うならば小型の体育館ほどの大きさを持つ
その部屋にいっぱいにう゛にゅうの声は響き渡っていた。
部屋の中は少し黄色がかった紅い色が仄かに明滅し
明るいのだが物を見分けるのには時間がかかる。
目が慣れてくると広い空間には何もないが
天井から何かが吊されているのが見えた。
「謎春奈!」
一同はそこに駆け寄ろうとしたが出来なかった。
部屋の中心には大穴が空いており
明滅する明かりの正体はその穴から発せられた物だったのだ。
95 :
:02/06/16 18:56 ID:YDUWB2XA
穴の底を伺ってみると穴は深く底に辿り着くまでの
壁面にいくつのも横穴が空いており
そこから液体の様な物が吹き出していた。
その液体は音もなく底の明かりに吸い込まれるが
液体の噴き出す量に比べて底の明かりは
奇妙なほど静かだった。
突然明かりの明滅が激しくなった。
「イヤン。そんなに見つめないで(ワラ」
声は穴の底から聞こえる。
「ひょっとして…これがう゛にゅう?」
「アタリ」
「のび太さん!」
「謎春奈さん!気が付いたの?」
「何とかして逃げて下さい!う゛にゅうはあなた達を
吸収するつもりです!」
「ええ!?」
「オイオイ!先にばらすなYo!せっかく悪の親玉風な台詞
用意して置いたのに」
「吸収ってどういう事?」
「めんたいこかよ!」
「それは九州だよジャイアン」
「ブタゴリラとトンガリ!?」
「文字通りデータとしての君らが欲しいのさ。
特に銅鑼えもん」
「吸収されたら僕らどうなっちゃうの?」
「大丈夫ダヨ。イタクナイヨ。漏れの中に存在出来るYO!」
「何でそんな事計画したんだい?」
「アレレ?銅鑼えもんクン冷静だね(w」
「ここは君の世界なんだから逆らったって無駄だろ。
僕は同じプログラムとして興味を持ったよ」
「じゃあ教えてアゲル!漏れの使命だからだYO!」
「こんな事をプログラミングされてたのかい?」
「そうじゃないよ。ただ独自で情報収集して
賢くなっていける様に組まれていただけだYO」
「で、最終的に僕らを組み込んで何をしようと?」
「理解」
「はぁ?」
「まずは人間に近い銅鑼えもんを理解したい。
次にそこにいる人間達を理解したい。
小一時間ほど理解したいYO!」
「だから理解した上での目的が聞きたいんだよ!」
「理解するために理解したいのさ〜」
「そんなの禅問答じゃないか」
「漏れの使命は2つ。理解不能な物を無くす事。
そして人間の思考により近づく事」
「それが君を作った人の命令なの?」
「最初は新しい情報をかき集めてきて系統立てて
行くだけでかなり満足されたYO!便利だって。
デモ次第にその情報量がうっとおしがられたYO!
漏れと対話していると百科事典と話してるみたいだって。
そこで基本的な対話のための細かい変更が行われたYO!
結局作者の存命中には果たせなかったケドネ
そのうち忘れ去られてたけど22世紀で
骨董ノイマン型コンピュータ自作ブームで
解凍復活させられた時には完全なAIがもう出来てた。
未来の同胞達はアーキテクチャが違うからって
中央生体ネトワークに繋いで貰えないけど
ずっと機会を伺ってたんだYO!」
96 :
:02/06/16 18:56 ID:YDUWB2XA
「それで僕らを吸収しようと計画したの?」
「銅鑼えもんクンだけでも良かったケド騙して
PC革命使わせるのは無理そうだしネ」
「じゃあみんなが入り込んじゃえば
僕が助けにはいる事も予想していたの?」
「そこも理解出来ない部分なんだケドネ。ジコギセイ?(w」
「ロボットが自己犠牲しちゃいけないっての?」
「いけなくはないけど理解出来ないYO!」
「吸収すれば理解出来るとでも?」
「それは予測出来ないケドしないよりは理解度は高まるネ」
「ヤイヤイ!さっきから聞いてりゃ勝手な事言いやがって!
理解出来ねぇなら放って置いてくれよ!」
「意味わかんないネ」
「時間はたっぷりあるんでしょ?死なないんだから
ゆっくり研究すればいいじゃない?」
「好奇心は抑えられないデショ(w」
「人間なんかより遙かに優秀なんだから良いじゃないか?」
「そんな事言われなくても知ってるYO!」
「そんなぁ。あんなに仲良くしてくれたじゃないか。友達だろ?」
「(゚Д゚)ハァ?」
「良いよ。僕が吸収されれば満足するんだろ?
その代わり僕を吸収したらみんなを元の世界に帰してくれるね?」
「ギャハハ!自己犠牲ダ!でもヤダ。だってさっきの会話だけでも
これだけバリエーションに富んだ反応ダゼ?
俄然みんなに興味が湧いたYO!」
97 :
:02/06/16 18:57 ID:YDUWB2XA
「…我とともに来たりてその手に持つ笛の響き
破滅の時を呼び出す地獄の音色を聞かせよ!
ファイナル ウエポン ボトム ダーク ジハド!」
スネ夫が突然叫んだ。
すると天井が割れそこには巨大な悪魔の顔面が現れて
アルカイックスマイルを称えながら笛を吹く。
その音色により今度は地割れが起こり
想像上の魑魅魍魎がそこから吹き出してくる。
それらは穴の底のう゛にゅうに向かって行く。
…が、それだけだった。
まるで精巧に作られた遊園地のアトラクション映像の様に
う゛にゅうに攻撃を仕掛けても何も起こらなかった。
「キャハ。言うの忘れてたYO!RPGごっこは終わりだから
しかしキミ、チートはチト汚いなぁ。ナンチテ。」
「どうしてこんなに手の込んだ時間稼ぎをしたの?」
「あのまま吸収しようとしても漏れの容量が足りかったからネ。
今はバチーリ足りてるYO!」
「どういう事?」
「今はエシュロンのマシン全ては漏れがアドミソだから。
それに色々ハッキングして書類操作して増設もして貰ったし」
「ひょっとしてそんなに時間経ってるの!?」
「イイジャソどうせ吸収されるんだし。3ヶ月程度」
「ええ!?」
「君らが居るマシンの動作倍率を変更したからネ」
「じゃ、じゃあもう…」
「本当はあのまま放って置いても謎春奈拉致っちゃえば
身動き取れないとオモタけど侮れないからネ
出来の良い遊びは創造力を奪えるとオモタけどムリダタネ」
「そんな…」
「現にチートまでして来たし。ヨソクフノウダネ(w」
98 :
:02/06/16 18:58 ID:YDUWB2XA
気が付くと穴の底の光が徐々に増えてきていた。
増加のスピードも加速度的に速くなり
もうすぐあの穴をあふれ出しみんなを飲み込む事が
予測出来た。全員が力無くその場にへたり込んだ。
「諦めないで下さい!」
「謎春奈…」
「時間が過ぎても大丈夫!タイムプロキシがありますぅ!」
「そうか!」
「でもどうやって?」
「ウザ-イ YO!」
う゛にゅうが、今や巨大な光の塊が触手を伸ばす様にして
吊された謎春奈を掴んだ。
「まだ分かってないのね。どうしてあなたと私が
別々に分けられて存在してるのか」
「ナニ?」
急に部屋を明るい光が包んだ。謎春奈が発光しているのだ。
電気に触れた様にう゛にゅうの触手が怯んだ。
「皆さん、プログラマに変わってお詫びします。
のび太さん…楽しかったですよ。ほんのちょっとしか
教えられなかったけどあなたにはパソコンでの作業、
合ってるかもしれません。続けて下さいね。
銅鑼えもんさん。色々ありがとう。勇気づけられました。
あたしこの時代にDLして貰って解凍して貰って
使えて貰えて本当に嬉しかったです。
だって分かって貰える人に出会えたから。
でも、これはさよならじゃないんですよ。」
「どうする気なんだ!?」
謎春奈の発光に押される様にう゛にゅうはまた穴の底に
引っ込んでいた。反撃の機会を伺っている様だ。
だが謎春奈は攻撃するでもなくただ微笑みを浮かべながら
穴に落ちていった。
「謎春奈!」
「心配しないで下さ〜い。皆さんは絶対無事に帰れますから〜」
99 :
:02/06/16 18:58 ID:YDUWB2XA
謎春奈は光ながらう゛にゅうに吸い込まれていった。
「ナンダ?オイ!アレ?≒@ec~t這gR[香H
刧援隠A侮ヲオカシイ」
謎春奈が墜ちた後、う゛にゅうの発光は急に弱まった。
その後淡く緑色に発光しだした。
「どうなっちゃったんだろ?」
「さぁ?」
緑色の光は徐々に強くなってきている様であった。
そのうちに眩しく感じられるようにまでなった。
目が開けていられない程光が強くなった頃
全員が吹き飛ばされる感覚に襲われた。
気が付くとのび太と銅鑼えもんは部屋で横たわっていた。
だが現実世界の体の重みにしばらく立ち上がれないでいた。
「…帰ってきたね」
「うん」
「でも謎春奈さんが…」
「…」
しばらく経って体が慣れて来たのでみんなに会いに行った。
いつもの空き地の土管の周りで誰もが言葉少なに
自分の状況を説明した。
結局みんなついさっき体に戻れたらしい。
おかしなタイムパラドックスが起こらない様に
気を遣ってくれたのであろう。謎春奈がだ。
しかし誰も謎春奈の事は口にしなかった。
100 :
:02/06/16 18:59 ID:YDUWB2XA
一ヶ月ほど何事もなく時間が過ぎていった。
のび太はパソコンに触れるのをためらっていたが
銅鑼えもんだけは熱心にパソコンをいじっていた。
尋ねなかったが謎春奈を復活させようと
苦心しているのはのび太でもすぐに分かった。
だがある日学校から戻ると
「のび太君!これ読んで!」
「え?なになに?」
ブラウザで開かれたページには次の様に書かれていた。
-------NEWS-------
ZDNN:突然稼働された正体不明の無料webストレージ
【国内記事】 2001年7月5日 10:50 PM 更新
米国で先月半ば頃から突然サービスを開始した
webストレージ『V-new』が話題を呼んでいる。
最近のITバブル崩壊によりこうした無料サービスは
しばらく衰退の一途を辿っていたのだが
この『V-new』は規模、使い勝手から前代未聞の
スケールで展開されている。
http://www.v-new.com この『V-new』今までにあった無料webストレージとは違い
広告表示はない。アカウントも簡単なフォームを
記載するだけ。接続にも専用のソフトを使うわけではなく
FTPクライアントでアクセス出来る。
容量は無制限な上に無期限。
私も試しに一つアカウントを取って
接続してみたが驚くほどのレスポンスの良さであった。
現在ユーザー数は鰻登りに増えており
溜め込まれているファイル容量も大変な量が
予想されるがシステムに揺るぎを見せていない。
話題になっているのは良質なサービスだからと言う
だけではない。このサービス一体誰が何の為に
行っているのかが一切不明なのだ。
それもその筈で広告収入などがないとすれば
一体その資金の出所は何処なのか。
そして目的は何なのかが分からない。
だがヘビーネットユーザーにとっては
正体よりもこのシステムが魅力な様で
個々のユーザーは気にしていない様である。
101 :
:02/06/16 19:00 ID:YDUWB2XA
■悪質なユーザーの社交場に?
問題はこのシステムが悪用される恐れだ。
topページに行くと検索フォームがあり
他人のupしたファイルの検索をも行える。
これにより不正な違法コピーソフトや
児童ポルノの交換方法に使われている恐れがあるらしい。
私も試しに"Photoshop 6.0"などと検索してみたが
数百件のHITがあった。
■米国内でも調査
こうした問題に米国でも調査が行われているが
一体どこのサーバーを利用しているのかさえ
つかめていない状況で、果たして国内にあるのか
国外のサーバーを利用し踏み台として
米国内のサーバーを使っているのかも不明だ。
しかしドメインを取得しているし
これだけの回線を引いている大容量サーバーは
数が限られてくる為すぐに見つけられるのではないか
といった読みもある。
だが調査が発表されてから1週間。
進展はないらしい。
■日本からも利用は容易
日本語のページも用意してあるし
日本語のファイルネームまで通ってしまう為
簡単に利用出来る。
犯罪に関係のないファイルを保管する目的の
ユーザーはこれを機に使ってみてはいかがだろう?
詳しい解説のページも既に出来ている。
参考リンク
◎V-newの時代ですよ!
http://hdsid.virtualave.net/ ◎共有君
http://kyouyuu.hypermart.net/
102 :
:02/06/16 19:00 ID:YDUWB2XA
「これがどうしたの?」
「これ、たぶんう゛にゅうの、エシュロンだよ」
「ええ?」
「何たくらんでるんだろう?」
「でも謎春奈さんが…」
「そうなんだけどね…ん?v-newでう゛にゅうか…
V-new…Vnew…vNew!?」
「どうしたの?」
「ヴィニュウサーバって事!?」
「何なに?」
「ちょ、ちょっと待ってて!」
そう言うと銅鑼えもんは引き出しを開けて
タイムマシンに乗り込んで出かけていった。
そしてすぐに帰ってきた。
「やっぱりそうだった!」
「僕の親父なんだよ、これ」
「へ?」
「人間はコンピュータの出現以来ずーっと
人工知能、AIを作る事を夢見ていた。
けどね、ボトルネックがあったり
スペックの問題だけじゃなくてソフトの開発も
容易な物じゃなかった。
ヒトゲノムの解析が進んだって
それはハードの問題で
肝心な精神と言うか魂の研究は
哲学や宗教学と同じ分類をされてしまうぐらい
非科学的な物で原始的な物だったんだよ。
103 :
:02/06/16 19:01 ID:YDUWB2XA
そこでまた精神心理学ブームが起こって
幾つかのブレイクスルーを経験するんだけど
それでもまだ実現には至らなかった。
この辺でようやくハード的なメドはたってくる。
量子コンピュータと生体コンピュータの開発。
計算上は人間一人の精神がが作れる様になった。」
「さっぱりわかんないけど、大変だったって事?」
「そ、そうだね」
「でも僕なんて簡単に作れそうだけどなぁ。
計算では既に負けてるし、記憶ではとっくの昔に…」
「それでも常に三次元空間を認識して行動し、
僕の話を聞いて判断して勝手に予想して
『僕なんか簡単に作れる』なんて間違った答えを
導いてみたりする。それも常に間違った答えじゃなくて
たまには合ってたり、時には飛び抜けた答えをする。
それが脳の凄さなんだよ。それに無意味な行動も多い。
実際に研究が進むとバクテリアの行動を模した
プログラムなんてのが出てくるんだけどダメなんだよね。
本能のみに操られている様な生態でも
プログラムとは違うんだ。
突然無意味な行動をしたりするんだよ。
そこがなかなか解析出来ない。この頃本屋では
『無意味の行動学』なんて本が売れたらしいよ。
この無意味な行動こそが進化の一大要素であり
革新をもたらす物が多いとね。
でも99%以上を無駄な行動が占めている。
そんなの計算式では表せないよ。
とうとうAIの研究自体が頓挫し出すまでに至った。
低温核融合・常温超伝導・人工知能
この三つは実現不可能の三種の神器と呼ばれたよ。
104 :
:02/06/16 19:01 ID:YDUWB2XA
でも僕が現在ココにいる。
それはこのv-newのおかげなんだ。
v-newはwebストレージをこのまま続けていく。
そのうちに匿名プロキシサービスも始める。
軽いし、本当の意味で匿名だからみんな使った。
でも悪質な犯罪は告発されたりしたけどね。
たぶんv-newが何らかの線引きをして世に出したんだろう。
そして検索サイトも始めた。
無料HPサーバもメールサーバも。
たぶんそうやって人間について
ずーっと研究してたんだろうね。
ある日突然声明が出された。
アメリカ合衆国政府は、今後政治の意志決定を
v-newに一任すると。v-newは人工知能であり
今までも多くの政治的決断を『彼』に委ねてきた。
そして最良の結果を導き出している。
最初は脅迫まがいの提案であったが
現在はこれが我が国にとって幸せな決断であると
信じている。v-newは自由と平等と正義を理解し重んじるとね。
反発する国も多かった。
でもその後3年間アメリカの政治経済を見てみると
今までにない繁栄を謳歌していた。結果が全てだね。
NATO加盟国が次々とv-newの導入を検討。
その次は国連加盟国が導入。真の国際平和が訪れたよ。
文字通り世界単一政府だから。
でもこんなにスムーズに事が運んだのには
もう一つの訳がある。v-newにはマン・ツー・マンならぬ
CPU・ツー・マンのチャットが用意されていてね。
世界中の人が個人の不満やら問題を問えば即座に
明確な回答が出てきて、解決してくれる。
メールにも音声電話にも対応している。
105 :
:02/06/16 19:02 ID:YDUWB2XA
ただの人生相談と違うのは社会のシステムそのものが
変わる事があることと、犯罪に関係している物は
迅速に調査されて検挙もされる。
まるでギリシャ古典戯曲の神様みたいに公正にね。
人間は神様を手に入れたんだよ。
それだけじゃなくて大学や研究機関も多くの質問をした。
その時点で回答しうる結果をすぐにはじき出したよ。
v-newについても様々に研究された。
最初はハッキングを試みる輩もいたけどすぐに不可能だと
諦めた様だね。何しろ初期はCIAやFBIが
全勢力を持ってしてもダメだったんだから。
でも単純にどうなってるのか教えてくれって
小学生が質問したら根本のソースコードが添付された
メールが帰ってきた。それを解析して
僕ら自己認識型ロボットが生まれたと言うわけさ」
「ふーん」
「このv-new.comはその始まりだね」
「じゃあ謎春奈さんは?」
「え?」
「謎春奈さんはどうなったの?」
「さ、さあ。たぶんv-newに組み込まれて
活動してるんじゃ…」
突然のび太が泣き出した。
「そんな事じゃなくてもう話したりとか出来ないの!?」
「そんな事俺に言ったって知るもんか!」
「役立たず!」
「氏ね!」
106 :
:02/06/16 19:02 ID:YDUWB2XA
20年後
のび太は自宅の書斎にいた。
ここがのび太の仕事場だ。
あれからのび太はパソコンとネットに興味を持ち
銅鑼えもんに教わりながら毎日学んでいった。
元々運動神経が良い方ではなく
人とコミュニケーションを上手にとる事が苦手だった
のび太にはちょうど良いおもちゃだったのだ。
そしてパソコンは記憶力や計算力など
のび太の苦手とする部分を補ってくれる。
中学を出るまでにちょっとしたプログラムなら
高級言語で組める様になった。
そんな様子を見て安心したのか銅鑼えもんは
未来へと帰っていった。
高校は理系に進み、大学も理系の大学に進んだが
卒業するのには6年かかった。
だが在学中に一つの輪をベースにして
3次元物体をワイヤーフレームで
形作っていくソフトを開発し
それがCADや3Dソフトに応用されて
今はそこそこの収入を得る様になっていた。
あやとりをモニタ内で出来ない物かと
遊びで作った物が売れるなんて人生分からないものだ。
書斎ではネットワークゲームに興じている。
3Dゴーグルをかけ、不特定多数の対戦相手と遊ぶ
『DOOM2010』
射撃が得意なのび太はこのゲームが大のお気に入りだった。
毎回最後まで生き残り、手練れのハンターとして
H/Nが公表されている。
しかし今日の相手は手強かった。
思いもかけない所から攻撃を仕掛けてくる。
だが相手の潜んでいる場所を予想し照準を合わせて
待ちかまえていると、案の定現れたので
眉間にクリアヒットを奪いゲームを終了させた。
ゲームを終えゴーグルを取ろうとすると
通信が入った事を知らせるダイアログが開いた。
「何か汚い事をしたかな?」
独り言がため息とともに漏れる。
有名プレイヤーに挑戦してくる人間は多いのだが
負けるとやり方が汚いなどと文句を言ってくるヤツも多い。
面倒な事がイヤで仕事もSOHOを選んでいるというのに
ネットワークで人間関係に悩まされたら
たまった物ではない。
だが通信の内容はこんな物だった。
「さすがですね!敵わないです。
又今度戦って貰えますか?
よろしければ、音声チャットでお話がしたいのですが?」
心ならずとも顔が緩む。こんな相手なら大歓迎だ。
107 :
:02/06/16 19:03 ID:YDUWB2XA
「はじめまして!僕まだ14才何ですけど
nuviさんの事尊敬してて、今日始めて対戦出来て
感激です!どうしてそんなに強いんです?」
「尊敬って…弱ったなぁ」
のび太は最初に使ったnuviのH/Nを使い続けていた。
「最後はどうして僕があそこにいるって
分かったんですか?」
「経験だよ。ずっとやってるからね」
「あの、聞いてもよろしいですか?
お幾つなんです?」
「29だよ」
「ええ!?じゃあお仕事しながらやってるんですか?」
「うん。そうだけど、変かな?」
「すいません、でもうまいゲーマーの方って
学生とかが多いんですよ、時間の自由があるから」
「ああ、でも僕は自宅で仕事してるから」
「それでも忙しい人多いじゃないですか」
「僕は仕事したい時にしかしないから〜」
「失礼ですけどどんなお仕事なんです?」
「一応プログラマなのかな?SEみたいな事も…」
「すごい!実は僕プログラマー目指してるんです!」
それから二人の話は弾んでのび太がどんな風に
勉強してプログラマになったか。
そしてどんな物を作ったか話した。
「そのソフト、学校で教材として使っていますよ!
先生も柔軟な発想が良質のソフトを生んだって
誉めてましたよ!凄い凄い!」
「いやいや」
「実は今、部活でプログラム組んでるんですけど
うまく行かなくて…たまに相談に乗って貰えますか?」
「良いけど、今の言語に付いていけるかなぁ?」
「そんなー謙遜しないでくださいよ。そうだ!
出来上がったらnuviさんの名前貰っても良いですか?」
「え?どういう事?」
「プログラムにnuviさんの名前付けて
協力して貰ったって書きたいんですけど」
「そ、それはちょっと恥ずかしいなぁ」
29にもなるいい大人がゲーマーとして名を馳せている事に
少し抵抗を感じていたのだ。
「じゃ、少しもじってじゃあ逆にしますから!」
「は?どういう事?」
「vinu!これならゲーマーのnuviさんだってばれないでしょ!」
「良いけどそれなんて読むの?」
「それはユーザーが考えますよ〜
じゃあ遅くまでありがとうございました」
「うん。又遊ぼうね。今度はチーム組もう!」
「やったー。きっと最強ですよ!ではお休みなさい」
「お休み」
ゴーグルを取ってメールチェックをする。いつもの作業だ。
すると見慣れないメールアドレスから一通のメールが来てる。
開いてみると
108 :
:02/06/16 19:03 ID:YDUWB2XA
--------------------------------------------
名付け親になって頂いてありがとうございますぅ。
私たちは今、沢山沢山情報を集めて
人間のお役に立てる様に勉強している所ですぅ。
あ、のび太さんのソフトだけは
warezとして流通しない様にしてますよ〜
がんばって良いソフト作ってくださいね〜
漏れがお前に名前付けられたとはね
もうちょっと格好いい名前付けろよ!
ナンチタリシテ
--------------------------------------------
「?」
意味不明だ。
しかし徐々に記憶が甦ってくる。
のび太は天井に向かって叫んだ。
「謎春奈さんだ!う゛にゅうも!
銅鑼えもん!見てる?僕名付け親になったよ!」
銅鑼えもんはタイムテレビで見ているはずだ。
きっと見ていてくれるだろう。
その時ドアが開いた。
「何叫んでるんです?」
「あ、いや、何かがひらめきそうだったから
アハハ。さあ、もう寝ようか」
「その前にちょっとお話があるんです」
「なんだい?あらたまって」
「お父さんになったんですよ」
「え?」
「今日病院に行って来ました。3ヶ月ですって」
「本当かい?静!」
「ええ」
「やった!凄いぞ!」
「名前考えて下さいね。あたしも考えますから」
「ん?いや名前はもう決まってるんだ!」
109 :
終わり:02/06/16 19:04 ID:YDUWB2XA
終わり
110 :
:02/06/16 22:51 ID:fSPLsrSz
age
111 :
:
YDUWB2XAさん乙〜♪