その馬鹿たちが、夏コミで放火をし、Cレヴォで大暴走した。
今日は2日目――その馬鹿が来ている可能性は大きい。
何が起きるか、わかったもんじゃない。
「あ、動いた」
列が動き出し、佳織と雅人は15分ぶりに駅の構内に入ることができた。
外の冷たさとは対照的に、中は暖房と人のぬくもりのおかげか、幾分暖かかった。
「ただいま入場制限を行っています! 乗車券をお買いの方は、改札列の後ろにお並びく
ださい!」
駅員が、どんどん増殖する乗客に向かってメガホンで呼びかけた。
有明初期とは違い、頼もしい駅員たち。
だが、今回で彼らの世話になるのも最後。そう思うと、雅人は駅員たちに感謝せずにい
られなかった。
だんだん、自動改札機に近づいていく。
JTBで購入したチケットを財布から取り出し、雅人と佳織は一番端の改札列に並び替
えた。
ちょうど目の前で、列が止まる。
ロープを張っている駅員を見ると、その表情は疲弊しきっていた。
朝からずっとコミケ参加者の世話をしているのだから、無理もない。
「おはようございます」
「お疲れさまです!」
二人は、笑顔で駅員にそう挨拶した。
「おはようございます。がんばってくださいね」
駅員も、笑顔でそう返す。
この挨拶が、今二人ができる最大限の礼だった。