地下鉄も、JRなどの地上路線に比べればまともだったが、それでも少しダイヤが遅れ
ていた。
特に南北線は東急目黒線と接続しているせいか、地上方向からの電車は軒並み遅れてい
て、赤羽岩淵発の電車も東急との接続は行わず、目黒での運転終了を行っていた。
飯田橋で有楽町線に乗り換えてから、それはさらに顕著になった。
特に、有楽町線は西武池袋線、そして東武東上線の2路線が乗り入れていて、ダイヤの
8割がその乗り入れに頼っていたため混乱を引き起こし、地上での遅れが大幅に影響して
いた。
しかも、都バスが走行できないためか、JRや都営地下鉄の乗換駅などで大量の人が雪
崩込んでくる。
その人たちのギラついた目が、二人には忘れられなかった。
緊張が、車内に渦巻いている。
いつもの「祭の前の緊張感」ではない。
重く、ピンッと張りつめた……そんな、重い空気。
その空気の前に、二人は口を開くこともできなかった。
『間もなく、新木場、新木場――終点です。りんかい線は、お乗り換えです。現在、JR
京葉線は降雪量過多のため、運転を見合わせております。皆様、どうかご了承ください』
そのアナウンスが流れた途端、あたりの空気が一変した。
ざわめきが走り、先程までの緊張が一気に解ける。