あなたは不思議に思うかもしれません。あなたが自分の失敗や罪、あさましいふるまいを
許せないのに、なぜわたしが許せるのかと。
わたしはあなたを必要としています。
あなたは灰色の凡庸さのかたまりのなかで破壊に向かって進む群集の一人ではありません。
そして、あなたは偉大でまれな存在なのです。
あなたこそ、地球上でもっとも貴重な宝なのです。
自分がこの世にたった一人しかいないことを知っているのですから。
人類の歴史が始まって以来、この惑星の上を歩いたことのある七百億人の人間の中に、
あなたとまったく同一の人物は誰もいないのです。
この世の終わりまで、あなたのような人物は出てこないでしょう。
あなたは自分のかけがえのなさを知りもしなければ、評価もしてきませんでした。
でも、あなたはこの世でもっともまれな存在なのです。
自分の恵みに感謝しなさい。自分のかけがえのなさを主張しなさい。自分の枠を超えなさい。
根気づよく進まなければなりません。感謝の気持ちをもって自分の恵みを数えあげ、
誇りをもって自分のかけがえのなさを主張し、自分の枠を超えて進むのです。
これらのことは、まばたきする間には実現されません。苦労に苦労を重ねて獲得したものこそ、
もっとも長持ちするのです。
あなたはわたしを必要としています。わたしはあなたを必要としています。
われわれには再建すべき世界があります。もしそれに奇跡が必要なら、その奇跡とはなんでしょう?
わたしたちが両方とも奇跡だということです。
かつてのあなたのように助けを必要としている人を探しなさい。
わたしがあなたに与えたものと同じ愛を与えなさい。
かつてあなたはわたしに関して、ある予感がすると言いました。
この手紙を読めば、わたしたちがもう長い間、会えないことがわかるでしょう。
時間や空間に縛られない素敵な友情の平和と温かさのなかで、ともにシェリーをすすりあえる
時間はもうないのです。でも、去っていくわたしには悲しみはありません。
ともに腕を組んで歩きつつ、永遠をかいま見たという満足感と喜びをもって去っていくのです。
これ以上の幸せはありません。ときおりシェリーを飲みながら、わたしを思い出してくれることもあるでしょう。
ずっとあなたを祝福しています。
あなたへの唯一の頼みは、どのような状況におちいろうと、生き続けてほしいということです。
あなたのなかには、まだたくさん言うべきことがあります。
世界はあなたを必要としています。
そしてわたしもあなたを必要としています。
わたしの親友の一人、ソクラテスは息をひきとる間際に言いました。
「わたしの出発の時が来た。われわれはそれぞれの道を行く。
……わたしは死への道、おまえは生きる道。どちらが良いかは、神のみぞ知っている」
わたしはどちらがいいか知っています。
生きる道のほうがいい。
幸福に暮らしなさい……いつまでも平和でありますように。
愛をこめて