平成18年度旧司法試験第二次試験論文式試験問題と出題趣旨
http://www.moj.go.jp/SHIKEN/18syushi-kohyo.html 【刑 法】
第 1 問
病院長である医師甲は,その病院に入院中の患者Xの主治医Aか
ら,Xに対する治療方法についての相談を受けた。Xに対して恨
みをもっていた甲は,特異体質を持つXに特定のある治療薬を
投与すれば副作用により死に至ることを知っていたことから,
Aをしてその治療薬をXに投与させてX を殺害しようと考えた。
そして,甲は,Aが日ごろから研修医乙に患者の検査等をすべて
任せて乙からの報告を漫然と信用して投薬を行っていること
を知っており,かつ,乙がA の指導方法に不満を募らせているこ
とも知っていたので,AにXの特異体質に気付かせないままその
治療薬を投与させるため,乙を仲間に引き入れることにした。
そこで,甲は,乙に対し,「Xに特異体質があるので,特定のある
治療薬を投与すれば,Xは,死に至ることはないが,聴力を失う。」
旨うそを言い,Aの治療行為を失敗させる ことによってAの信用
を失わせようと持ち掛けた。すると,乙は,これを承諾し,甲に
対し,「AからXの検査を指示されたときは,Aに『Xに特異体質は
ない。』旨うその報告 をする。」と提案し,甲は,これを了承
した。その上で,甲は,Aに対し,その治療薬を投与してXを治療
するよう指示した。そこで,Aは,乙に対し,Xの特異体質の有無
について検査するよう指示したが,乙は,Xに対す る検査をしな
いまま,Aに対し,「Xを検査した結果,特異体質はなかった。」
旨報告した。Aは,本来,自らXの特異体質の有無を確認すべき注
意義務があり,・・・・