【たった一人の】牧原幸二、かく語りき【研修医】

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21makihara ◆9XNtFZj5.Y
新しい科になってから、徹底した放置プレイに苛まれてる。
当直しても、コールが一回もかかってこない。
忙しいときはこんな状態を望んだりしても、
実際にそんな状況に置かれると、孤独ばかりが募って、
沈んだ気持ちになってしまう。

俺はきっとうつ病なんだろう。
朝が一番やる気が出ない。
病棟にいても、眠くて仕事にならない。
医局にしけこんで昼寝ばかりしてる。

思えば、少年の頃の俺は、研究者になるのが夢だった。
今のこの状況は、当時描いていた未来とは、あまりに離れている。
金が入るのは助かるが、一方で何かをひとつずつ失ってるような感覚が絶えない。
俺はどこへ向かっているのだろう?
もう一人の俺は、今頃何をしているのだろう?
闇の広がる窓からは、国道を走る車の音が絶え間なく聞こえてくる。
俺はタバコを吸いながら、遠くの一点ばかりを見つめている。